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ナカゴー特別劇場「地元のノリ」 [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。

今日はこちら。
ナカゴーの河童.jpg
唯一無二の世界を繰り広げるナカゴーが、
特別劇場として「地元のノリ」という作品を、
南阿佐ヶ谷にある小さな劇場で上演しています。

相変わらずハイペースで上演を続けるナカゴーで、
以前は視聴覚室や会議室みたいなスペースでの上演が多かったのですが、
最近は比較的設備のある小劇場での公演が多いのは、
ファンとしては嬉しいところです。

前回は本公演として浅草九劇で「ていで」という公演が、
7月の下旬にあったばかりなのですが、
1か月後にはもう次の上演が行われています。

前回の「ていで」にも、
勿論足を運んでいるのですが、
ブログで記事にしていないのは、
正直あまり感心しなかったからです。
ちょっと文学に傾斜した感じで、
そうしたものもあって悪くないのですが、
本領発揮とは言えないかな、
というように感じてしまいました。

今回は、チラシにあるように、
ENBUゼミナールの発表会として作った作品を膨らませたもので、
河童などがジャンジャン登場する得意の「妖怪もの」の、
とてもとても楽しい作品でした。
アイデンティティや自分の本性を隠すという、
現代的なテーマを深いところで追及しているのですが、
それが知性の嫌味や底の浅い政治色などを、
全く持たないところで成立しているのが素晴らしく、
エチュードを組み合わせたような作り方を、
おそらくはしているせいもあるのでしょうが、
何処に転がるやら、
先が全く読めない展開は、
怪人鎌田順也さんの面目躍如の感のある快作でした。

毎日こうしたものが観られれば、
正直他の娯楽など何も要らないですね。

以下ネタバレを含む感想です。

公演は本日までですが、
観劇予定の方は必ず観劇後にお読み下さい。

物語は河童の三平(懐かしいですね)が、
幼馴染の女性の河童のお父さんが重病のために、
行方知れずの彼女を探して、
牛久の沼から東京に出て来たところから始まります。

出逢った女性は阿佐ヶ谷の闇医者の手術で、
人間の皮を移植されて見た目は人間になっています。
彼女は乱暴者の河童と不幸な結婚をして、
娘を1人設けていたのですが、
彼女はまだ自分を人間だと思っていて、
その場での母親のカミングアウトに衝撃を受けます。
更には娘の友達の不良少女が、
その場を目撃して家に戻り、
友達が河童であったことを、
ろくでなしの両親に告げるのですが、
それがまた実は…
という感じで次々とお話は連鎖して、
人間の皮を被って生活を続ける、
河童の実体が明らかになってゆきます。

物語はその河童の三平を中心とした前半と、
パスタの店の店長と店員を巡る人間関係から始まり、
驚天動地の誰にも予想出来ないクライマックスを迎える、
ナカゴーお馴染みの設定の後半とに二分されています。
ただ、前半と後半の筋も、
共通に関わるキャラが複数用意されていて、
両方は連鎖する構造になっています。

オープニングに男優さんが1人前説に登場して、
「今回の作品に登場する人間は自分だけです」
とネタバレをします。

前回公演の「ていで」でも、
あらすじを最初に説明してしまい、
台詞の練習風景も見せてしまうという、
同じような趣向が使われていました。

確かに分かっていても面白いのが、
ナカゴーのお芝居ではあるのですが、
分からないに越したことはありませんし、
今回の場合には「全員が実は妖怪」というのは、
ちょっと見れば推測のつくことではあっても、
わざわざ最初に言う意味が、
何処にあったのかな、というのは疑問に感じました。
この辺は鎌田さんは常人ではないので、
おそらく鎌田さんなりの理屈があるのだとは思います。

ただ、物語が始まってしまうと、
一気呵成に観客の思考を先取りするようにして、
軽快に進むのがいつもながら心地良く、
オープニングの10秒で、
もう物語の骨格が説明されて、
一気のその世界に入り込める、
という無駄のなさがさすがと思います。

小劇場の重鎮の方で、
本筋が始まる前に、
ダラダラとダンスもどきの退屈な場面を、
連ねたりするような人がいますが、
鎌田さんの爪の垢でも飲ませたいと、
本気で思います。

今回はナカゴー勢は、
スターの暴れん坊篠原正明さんと、
最近加入した土田有未さんの2人だけで、
後は素人に近いような方も多いのですが、
あまり「やらされ感」がなく、
上手く演出されているのにも感心します。

篠原さんは、さすがのクオリティで、
大暴れも歌もしっかりあり、
最後は凛々しい河童姿も見せてくれます。

上演時間は1時間20分ですが、
充実度があります。

とても楽しい時間を過ごさせてもらいましたし、
これからも本当に楽しみです。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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