「追想」 [映画]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
1975年のフランス映画でカルト的な人気のある「追想」が、
今新宿のシネマカリテでリバイバル公開されています。
スクリーンで観る機会は滅多にないと、
結構無理をして足を運びました。
監督のロベール・アンリコは、
アラン・ドロンとリノ・バンチェラの「冒険者たち」が、
日本では非常に有名で、
僕も確か高校生の時に名画座で観て、
とても感銘を受けました。
サスペンスなのですが切ない青春映画の趣きがあり、
ラストには胸の詰まるような情感と、
説明不能の感動がありました。
青い空と青い海の鮮やかな色彩も心に残ります。
テレビシリーズの「ルパン三世」の幾つかの作品には、
この「冒険者たち」の影響が色濃く投影されています。
この「冒険者たち」に次いで、
アンリコ作品で日本で人気の高いのがこの「追想」です。
時は1944年の南フランスで、
ノルマンディ上陸作戦が敢行され、
一気にフランスの戦局はドイツにとっては不利となったのですが、
まだ敗走するドイツ軍による残虐行為や、
ドイツ軍に協力する民兵の暗躍などもあって、
まだ情勢は混沌としています。
フィリップ・ノワレ演じる主人公は裕福な外科医で、
前妻との間に娘が1人いて、
うら若いロミー・シュナイダー演じる美女と再婚しているのですが、
レジスタンスに協力していたため、
ナチスや民兵には目を付けられています。
危険を察知して妻と娘を、
自分が持っている田舎の古城に逃すのですが、
その古城に敗走中のドイツ軍の部隊が侵入し、
村人共々妻と娘は無残に殺されてしまいます。
それを知った主人公は、
隠してあったショットガンを手に取り、
城で敗走の時をうかがうドイツ軍の部隊に、
たった1人で復讐を試みるのです。
「冒険者たち」ほどではありませんが、
この作品も不思議な抒情と陶酔に満ちていて、
とても魅力的な作品です。
舞台はフランスの古城で、
隠し部屋や隠し通路、地下室や深い井戸などがあり、
主人公はそこに身を潜めながら、
1人ずつナチの兵士に復讐を果たしてゆきます。
1960年代に盛んに作られた、
これはゴシックホラー映画のパターンで、
古城に身を潜める怪物の役回りを、
主人公が演じていて、
怪物に襲われる人々の役回りを、
ナチの兵士が演じるという、
不可思議な入れ替わりが設定されているのです。
ホラー映画の道具立てで戦争の復讐劇を演じるという、
なかなかユニークな趣向です。
抜けるような青空と田園の風景、
日差しを浴びるの古城の土壁のシルエット、
そしてこの映画の象徴とも言うべき、
火炎放射器から吹き上げられる紅蓮の炎。
「冒険者たち」と同じようにこの映画も色彩が美しく、
それ自体が感情を揺さぶるように心に残ります。
特にロミー・シュナイダーが無残に炎に焼かれる場面と、
ナチの将校の目の前の鏡が見る間に歪み、
それを突き破って炎が噴出し復讐が貫徹される瞬間は、
極めつけの名シーンです。
この映画のロミー・シュナイダーは、
殆ど回想で登場するだけなのですが、
その年増の艶っぽい姿は極めて魅惑的で美しく、
改めて昔の銀幕の女優さんの素晴らしさを感じました。
また、CGなどない時代で、
スクリーンプロセスや合成なども、
殆ど使っていないと思うのですが、
ロミー・シュナイダーが丸焼けになる場面や、
城が炎に包まれる場面などは、
極めてリアルで、
どうやって撮ったのか不思議に感じるほどです。
これはまあ昔観たらとても感銘を受けて、
トラウマ的に心に残った映画だと思いました。
ただ、どうも徹底的に年を取ってしまったので、
作品のアラの方が何となく目について、
作品世界に没入する、
という感じの鑑賞にはなりませんでした。
年を取るのは嫌だなあ、とちょっと切なく思いました。
この時代の映画は、
編集はかなり荒いですよね。
編集権が監督にはなかったせいもあるのだと思いますが、
場面の繋がりがあまり上手くはなく、
現実の復讐劇とかつての妻との愛の日々の回想が、
頻繁に交錯して現れるのですが、
回想のエピソードにはあまり魅力がなく、
つぎはぎの感じであまり復讐劇のサスペンスが盛り上がりません。
またデジタルで修復された映像は、
ぶれ方がフィルムのそれとは明らかに異なっているので、
フィルムの映画に親しんできた世代としては、
家でブルーレイを観ているようで何か違和感がありました。
同時期にペキンパーの「戦争のはらわた」も観たのですが、
矢張りデジタル修復された映像の質感とぶれ方には違和感があり、
あの映画も編集は無茶苦茶で粗雑なので、
昔の映画は確かにこんなものだったなあ、
とは一方では思いながらも、
落胆する気持ちが大きくなってしまいました。
デジタル映像というのは、
今の映画を観るには良いのですが、
過去のフィルムの映画を再生するには矢張り根本的な問題があって、
過去の映画はもう、
映画館では観ない方が良いのかも知れない、
と今回はとても強く感じることになったのです。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
1975年のフランス映画でカルト的な人気のある「追想」が、
今新宿のシネマカリテでリバイバル公開されています。
スクリーンで観る機会は滅多にないと、
結構無理をして足を運びました。
監督のロベール・アンリコは、
アラン・ドロンとリノ・バンチェラの「冒険者たち」が、
日本では非常に有名で、
僕も確か高校生の時に名画座で観て、
とても感銘を受けました。
サスペンスなのですが切ない青春映画の趣きがあり、
ラストには胸の詰まるような情感と、
説明不能の感動がありました。
青い空と青い海の鮮やかな色彩も心に残ります。
テレビシリーズの「ルパン三世」の幾つかの作品には、
この「冒険者たち」の影響が色濃く投影されています。
この「冒険者たち」に次いで、
アンリコ作品で日本で人気の高いのがこの「追想」です。
時は1944年の南フランスで、
ノルマンディ上陸作戦が敢行され、
一気にフランスの戦局はドイツにとっては不利となったのですが、
まだ敗走するドイツ軍による残虐行為や、
ドイツ軍に協力する民兵の暗躍などもあって、
まだ情勢は混沌としています。
フィリップ・ノワレ演じる主人公は裕福な外科医で、
前妻との間に娘が1人いて、
うら若いロミー・シュナイダー演じる美女と再婚しているのですが、
レジスタンスに協力していたため、
ナチスや民兵には目を付けられています。
危険を察知して妻と娘を、
自分が持っている田舎の古城に逃すのですが、
その古城に敗走中のドイツ軍の部隊が侵入し、
村人共々妻と娘は無残に殺されてしまいます。
それを知った主人公は、
隠してあったショットガンを手に取り、
城で敗走の時をうかがうドイツ軍の部隊に、
たった1人で復讐を試みるのです。
「冒険者たち」ほどではありませんが、
この作品も不思議な抒情と陶酔に満ちていて、
とても魅力的な作品です。
舞台はフランスの古城で、
隠し部屋や隠し通路、地下室や深い井戸などがあり、
主人公はそこに身を潜めながら、
1人ずつナチの兵士に復讐を果たしてゆきます。
1960年代に盛んに作られた、
これはゴシックホラー映画のパターンで、
古城に身を潜める怪物の役回りを、
主人公が演じていて、
怪物に襲われる人々の役回りを、
ナチの兵士が演じるという、
不可思議な入れ替わりが設定されているのです。
ホラー映画の道具立てで戦争の復讐劇を演じるという、
なかなかユニークな趣向です。
抜けるような青空と田園の風景、
日差しを浴びるの古城の土壁のシルエット、
そしてこの映画の象徴とも言うべき、
火炎放射器から吹き上げられる紅蓮の炎。
「冒険者たち」と同じようにこの映画も色彩が美しく、
それ自体が感情を揺さぶるように心に残ります。
特にロミー・シュナイダーが無残に炎に焼かれる場面と、
ナチの将校の目の前の鏡が見る間に歪み、
それを突き破って炎が噴出し復讐が貫徹される瞬間は、
極めつけの名シーンです。
この映画のロミー・シュナイダーは、
殆ど回想で登場するだけなのですが、
その年増の艶っぽい姿は極めて魅惑的で美しく、
改めて昔の銀幕の女優さんの素晴らしさを感じました。
また、CGなどない時代で、
スクリーンプロセスや合成なども、
殆ど使っていないと思うのですが、
ロミー・シュナイダーが丸焼けになる場面や、
城が炎に包まれる場面などは、
極めてリアルで、
どうやって撮ったのか不思議に感じるほどです。
これはまあ昔観たらとても感銘を受けて、
トラウマ的に心に残った映画だと思いました。
ただ、どうも徹底的に年を取ってしまったので、
作品のアラの方が何となく目について、
作品世界に没入する、
という感じの鑑賞にはなりませんでした。
年を取るのは嫌だなあ、とちょっと切なく思いました。
この時代の映画は、
編集はかなり荒いですよね。
編集権が監督にはなかったせいもあるのだと思いますが、
場面の繋がりがあまり上手くはなく、
現実の復讐劇とかつての妻との愛の日々の回想が、
頻繁に交錯して現れるのですが、
回想のエピソードにはあまり魅力がなく、
つぎはぎの感じであまり復讐劇のサスペンスが盛り上がりません。
またデジタルで修復された映像は、
ぶれ方がフィルムのそれとは明らかに異なっているので、
フィルムの映画に親しんできた世代としては、
家でブルーレイを観ているようで何か違和感がありました。
同時期にペキンパーの「戦争のはらわた」も観たのですが、
矢張りデジタル修復された映像の質感とぶれ方には違和感があり、
あの映画も編集は無茶苦茶で粗雑なので、
昔の映画は確かにこんなものだったなあ、
とは一方では思いながらも、
落胆する気持ちが大きくなってしまいました。
デジタル映像というのは、
今の映画を観るには良いのですが、
過去のフィルムの映画を再生するには矢張り根本的な問題があって、
過去の映画はもう、
映画館では観ない方が良いのかも知れない、
と今回はとても強く感じることになったのです。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。