スーパー高齢者の脳は何が違うのか? [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
今月のJAMA誌のレターですが、
スーパー高齢者と呼ばれる、
認知機能や記憶が若いままに保たれている高齢者の脳の特徴を、
MRIの経過観察で検証した研究です。
スーパー高齢者(SuperAgers)というのは、
年齢で80歳以上にも関わらず、
エピソード記憶(出来事の記憶)を呼び覚ます働きが、
50から60歳代はそれより若いレベルを保ち、
それ以外の認知機能も同年代の高齢者より低下はしていない、
という特徴を持つ高齢者のことです。
そうした高齢者の脳を頭部MRI検査で撮影すると、
脳の皮質と呼ばれる脳細胞が集まった部分の大きさが、
同年齢の平均よりも大きい(厚い)ことが特徴とされています。
それでは、このスーパー高齢者の脳皮質の大きさは、
そもそも脳が大きいということなのでしょうか?
それとも加齢に伴って起こる脳の萎縮が、
より少ないことによっているのでしょうか?
その疑問を解決する目的で、
アメリカの単独施設において、
24名のスーパー高齢者と、
12名の認知症のない同年齢の通常の高齢者を登録し、
MRI検査によって皮質の体積を計測すると、
その18か月後に再検査を行い、
その間に進行した体積の低下の程度を、
比較検証しています。
その結果、
登録時の大脳皮質の体積は、
ややスーパー高齢者が大きい傾向はあったものの、
有意な差はありませんでした。
しかし、18カ月後の変化を見ると、
スーパー高齢者の減少率が1.06%(95%CI;0.50から1.63)であったのに対して、
通常の高齢者の減少率は2.24%(95%CI;1.06から3.42)で、
明らかに有意差をもって、
スーパー高齢者では脳の萎縮が軽度にとどまっていました。
つまり、
勿論大脳皮質のもともとの大きさが大きい、
ということもあるのだとは思いますが、
80歳を超えて時点での状態としては、
その大きさよりもむしろ萎縮の進行が遅い、
ということが、
認知機能の維持に大きな役割を果たしている可能性が高い、
という結果になっていたのです。
日本でもこうしたスーパー高齢者の特徴の解析は、
行なわれていますが、
当然ながら例数は少なく、
経過観察も困難であることが多いので、
なかなかクリアな結果には結び付かないようです。
健康に長寿でありたいというのは、
誰しもが望む年の取り方ですが、
その実態がこうした研究の積み重ねによって、
明らかになることを期待したいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
下記書籍発売中です。
よろしくお願いします。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
今月のJAMA誌のレターですが、
スーパー高齢者と呼ばれる、
認知機能や記憶が若いままに保たれている高齢者の脳の特徴を、
MRIの経過観察で検証した研究です。
スーパー高齢者(SuperAgers)というのは、
年齢で80歳以上にも関わらず、
エピソード記憶(出来事の記憶)を呼び覚ます働きが、
50から60歳代はそれより若いレベルを保ち、
それ以外の認知機能も同年代の高齢者より低下はしていない、
という特徴を持つ高齢者のことです。
そうした高齢者の脳を頭部MRI検査で撮影すると、
脳の皮質と呼ばれる脳細胞が集まった部分の大きさが、
同年齢の平均よりも大きい(厚い)ことが特徴とされています。
それでは、このスーパー高齢者の脳皮質の大きさは、
そもそも脳が大きいということなのでしょうか?
それとも加齢に伴って起こる脳の萎縮が、
より少ないことによっているのでしょうか?
その疑問を解決する目的で、
アメリカの単独施設において、
24名のスーパー高齢者と、
12名の認知症のない同年齢の通常の高齢者を登録し、
MRI検査によって皮質の体積を計測すると、
その18か月後に再検査を行い、
その間に進行した体積の低下の程度を、
比較検証しています。
その結果、
登録時の大脳皮質の体積は、
ややスーパー高齢者が大きい傾向はあったものの、
有意な差はありませんでした。
しかし、18カ月後の変化を見ると、
スーパー高齢者の減少率が1.06%(95%CI;0.50から1.63)であったのに対して、
通常の高齢者の減少率は2.24%(95%CI;1.06から3.42)で、
明らかに有意差をもって、
スーパー高齢者では脳の萎縮が軽度にとどまっていました。
つまり、
勿論大脳皮質のもともとの大きさが大きい、
ということもあるのだとは思いますが、
80歳を超えて時点での状態としては、
その大きさよりもむしろ萎縮の進行が遅い、
ということが、
認知機能の維持に大きな役割を果たしている可能性が高い、
という結果になっていたのです。
日本でもこうしたスーパー高齢者の特徴の解析は、
行なわれていますが、
当然ながら例数は少なく、
経過観察も困難であることが多いので、
なかなかクリアな結果には結び付かないようです。
健康に長寿でありたいというのは、
誰しもが望む年の取り方ですが、
その実態がこうした研究の積み重ねによって、
明らかになることを期待したいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
下記書籍発売中です。
よろしくお願いします。
誰も教えてくれなかった くすりの始め方・やめ方: ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ
- 作者: 石原藤樹
- 出版社/メーカー: 総合医学社
- 発売日: 2016/10/28
- メディア: 単行本