中年期のメタボが認知症の原因となるメカニズム [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は水曜日で診療は午前中で終わり、
午後は産業医の面談に都内を廻る予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
今年のJAMA誌に掲載された、
中年期の糖尿病などの動脈硬化リスクが、
その後のアルツハイマー型認知症の発症に結び付く、
そのメカニズムを検証した論文です。
アルツハイマー型認知症は加齢に伴い、
脳にβアミロイドなどの異常タンパクが沈着する病気です。
そのため、直接的には心筋梗塞や脳卒中のような、
動脈硬化によって起こる病気とは別物なのですが、
その一方で動脈硬化を進めるような要因が、
その後のアルツハイマー型認知症のリスクになることも、
また確かなことだと考えられています。
この場合、認知症になった時点での身体の状態ではなく、
病気が発症する10年や20年前の状態の方が、
より病気との関連が大きいと報告されています。
これは考えてみれば当然のことですが、
それを証明するには非常に時間の掛かる臨床研究が必要なので、
最近まで分からなかったような事実も多いのです。
それでは、何故動脈硬化のリスクがあると、
アルツハイマー型認知症が起こりやすいのでしょうか?
1つの可能性としては動脈硬化に伴う脳の虚血性の変化が、
認知症の発症に関係しているという推測が可能です。
アルツハイマー型認知症と脳血管性認知症というのは、
基本的には別の病気ですが、
実際には両者が合併しているケースも多いと、
考えられているからです。
その一方で、
何等かのメカニズムにより、
動脈硬化のリスクがβアミロイドなどの異常タンパクの蓄積と、
結び付いている、という可能性も否定は出来ません。
そこで今回の研究では、
アメリカの3つの地域において、
平均年齢52歳(45から64歳)の登録の時点で認知症のない346名を登録し、
動脈硬化のリスク因子を調査した上で、
平均年齢76歳(67から88歳)の時点でアミロイドPETという、
非侵襲的に脳のβアミロイドタンパクの沈着を計測出来る検査を行って、
アミロイドの沈着と動脈硬化のリスク因子との関連を検証しています。
平均の観察期間は23.5年という、
非常に手の掛かった臨床研究で、
勿論これだけのために行われた研究ではなく、
複数の目標が別個に設定されているものだと思います。
アミロイドPETは特殊な放射線を注射して、
脳の画像を撮り、
通常アミロイドの沈着は殆ど見られない小脳と比較して、
大脳皮質を平均化した時のアミロイドの沈着が、
1.2倍以上になる場合をこの試験では陽性と判断しています。
動脈硬化のリスク因子としては、
BMIが30以上の肥満、喫煙、高血圧、糖尿病、
総コレステロール200mg/dL以上が解析項目となり、
年齢、性別、人種、教育レベル、
アルツハイマー型認知症の遺伝素因である、
APOE遺伝子の変異の有無で、
補正がわれています。
その結果、
登録時の動脈硬化の危険因子が全くない場合と比較して、
リスク因子が1つあると、
アミロイドの病的な沈着が20年後に生じるリスクは、
1.88倍(95%CI;0.95から3.72)、
2つ以上あると2.88倍(95%CI;1.46から5.69)と、
2つ以上のリスクがあると有意に病的なアミロイドの沈着が認められる、
というデータが得られました。
これを高齢の時点でのリスクで解析しても、
アミロイドの沈着との有意な相関は認められませんでした。
つまり、それほど明解な結果とまでは言えませんが、
中年期に動脈硬化のリスクが高いほど、
その20年後にアルツハイマー型認知症になるリスクが高まり、
それがβアミロイドの沈着自身と関連している可能性が高い、
という結果です。
仮にこれが事実であるとすれば、
中年以前の時期からそうした生活習慣を改善することにより、
脳血管性認知症のみならず、
アルツハイマー型認知症のリスクの予防にもなる、
という可能性が高いということになり、
今後そうした介入試験による検証が待たれるところだと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
下記書籍発売中です。
よろしくお願いします。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は水曜日で診療は午前中で終わり、
午後は産業医の面談に都内を廻る予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
今年のJAMA誌に掲載された、
中年期の糖尿病などの動脈硬化リスクが、
その後のアルツハイマー型認知症の発症に結び付く、
そのメカニズムを検証した論文です。
アルツハイマー型認知症は加齢に伴い、
脳にβアミロイドなどの異常タンパクが沈着する病気です。
そのため、直接的には心筋梗塞や脳卒中のような、
動脈硬化によって起こる病気とは別物なのですが、
その一方で動脈硬化を進めるような要因が、
その後のアルツハイマー型認知症のリスクになることも、
また確かなことだと考えられています。
この場合、認知症になった時点での身体の状態ではなく、
病気が発症する10年や20年前の状態の方が、
より病気との関連が大きいと報告されています。
これは考えてみれば当然のことですが、
それを証明するには非常に時間の掛かる臨床研究が必要なので、
最近まで分からなかったような事実も多いのです。
それでは、何故動脈硬化のリスクがあると、
アルツハイマー型認知症が起こりやすいのでしょうか?
1つの可能性としては動脈硬化に伴う脳の虚血性の変化が、
認知症の発症に関係しているという推測が可能です。
アルツハイマー型認知症と脳血管性認知症というのは、
基本的には別の病気ですが、
実際には両者が合併しているケースも多いと、
考えられているからです。
その一方で、
何等かのメカニズムにより、
動脈硬化のリスクがβアミロイドなどの異常タンパクの蓄積と、
結び付いている、という可能性も否定は出来ません。
そこで今回の研究では、
アメリカの3つの地域において、
平均年齢52歳(45から64歳)の登録の時点で認知症のない346名を登録し、
動脈硬化のリスク因子を調査した上で、
平均年齢76歳(67から88歳)の時点でアミロイドPETという、
非侵襲的に脳のβアミロイドタンパクの沈着を計測出来る検査を行って、
アミロイドの沈着と動脈硬化のリスク因子との関連を検証しています。
平均の観察期間は23.5年という、
非常に手の掛かった臨床研究で、
勿論これだけのために行われた研究ではなく、
複数の目標が別個に設定されているものだと思います。
アミロイドPETは特殊な放射線を注射して、
脳の画像を撮り、
通常アミロイドの沈着は殆ど見られない小脳と比較して、
大脳皮質を平均化した時のアミロイドの沈着が、
1.2倍以上になる場合をこの試験では陽性と判断しています。
動脈硬化のリスク因子としては、
BMIが30以上の肥満、喫煙、高血圧、糖尿病、
総コレステロール200mg/dL以上が解析項目となり、
年齢、性別、人種、教育レベル、
アルツハイマー型認知症の遺伝素因である、
APOE遺伝子の変異の有無で、
補正がわれています。
その結果、
登録時の動脈硬化の危険因子が全くない場合と比較して、
リスク因子が1つあると、
アミロイドの病的な沈着が20年後に生じるリスクは、
1.88倍(95%CI;0.95から3.72)、
2つ以上あると2.88倍(95%CI;1.46から5.69)と、
2つ以上のリスクがあると有意に病的なアミロイドの沈着が認められる、
というデータが得られました。
これを高齢の時点でのリスクで解析しても、
アミロイドの沈着との有意な相関は認められませんでした。
つまり、それほど明解な結果とまでは言えませんが、
中年期に動脈硬化のリスクが高いほど、
その20年後にアルツハイマー型認知症になるリスクが高まり、
それがβアミロイドの沈着自身と関連している可能性が高い、
という結果です。
仮にこれが事実であるとすれば、
中年以前の時期からそうした生活習慣を改善することにより、
脳血管性認知症のみならず、
アルツハイマー型認知症のリスクの予防にもなる、
という可能性が高いということになり、
今後そうした介入試験による検証が待たれるところだと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
下記書籍発売中です。
よろしくお願いします。
誰も教えてくれなかった くすりの始め方・やめ方: ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ
- 作者: 石原藤樹
- 出版社/メーカー: 総合医学社
- 発売日: 2016/10/28
- メディア: 単行本