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10年の胃癌リスクの推定法 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診です。
色々とバタバタしていて、
夜の更新となってしまいました。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
10年の胃癌リスク.jpg
2015年のInternational Journal of Cancer誌にウェブ掲載された、日本人の10年の胃癌リスクを予測する方法を解説した論文です。

日本ではABC検診という胃癌検診が、
市町村などで行われています。

これは血液検査でピロリ菌の抗体と、
萎縮性胃炎を反映していると考えられている、
ペプシノーゲンという数値を同時に測定して、
ピロリ菌の感染のあるなしと萎縮性胃炎のあるなしで、
ABCDの4つの群に分けて二次検査を進めるものです。

A群はピロリ菌が陰性で萎縮性胃炎もないもの、
B群はピロリ菌は陽性で萎縮性胃炎はないもの、
C群はピロリ菌は陽性で萎縮性胃炎もあるもの、
D群はピロリ菌は陰性で萎縮性胃炎のあるもの、
です。

多目的コホート研究による19000人余りの住民データを元に、
このABC分類と、
年齢、性別、胃癌の家族歴、高塩分食品の摂取の有無、
喫煙の有無をリスクとして、
今後の10年間にどのくらい胃癌のリスクがあるのかを、
数値化するモデルを考案しています。

こちらをご覧ください。
胃癌の10年リスク.jpg
これは国立がん研究センターのサイトの解説から引用したものです。
この項目を計算して10年間の胃癌リスクを算出します。

今回の研究で分かったことは、
ABC分類が意外に優れモノだということです。

A群つまりピロリ菌も萎縮性胃炎もないと、
胃癌のリスクは非常に低く、
逆にそれ以外の群であると、
それだけで10%近いリスクに結び付くのです。

現状どのような胃癌検診が、
どのような対象者に有用であるのかの、
明確な指針は存在していませんが、
こうした検証を元に、
胃カメラ検査などの対象者の絞り込みが、
合理的になされることを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。