バセドウ病の治療後の再発とそのリスク [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
昨年のThyroid誌に掲載された、
飲み薬によるバセドウ病の治療終了後の、
再発のリスクとそれに関わる因子についての論文です。
バセドウ病は甲状腺機能亢進症を来す病気の代表です。
バセドウ病の治療には、
大きく分けて3つの方法があります。
抗甲状腺剤という飲み薬による治療と、
放射性ヨードによるヨード治療、
そして甲状腺を一部を残して切除する手術療法です。
このうちのどれを最初に選択するかは色々な考えがあり、
必ずしも一定はしていませんが、
日本においては禁忌でなければ抗甲状腺剤による薬物治療が、
第一選択となることが一般的です。
抗甲状腺剤による治療の一番の問題は、
一旦治療を行なって寛解と判断され、
治療を終了しても、
その後数年以内にかなりの確率で再発が起こる、
ということです。
上記文献の記載によれば、
ヨーロッパの報告では再発率は40から50%で、
アメリカの報告では70から80%とされています。
日本においては概ねもっと良い数値が報告されていて、
2年間での再発率が30%程度というデータもあります。
ただ、一方で海外ではせいぜい2年は超えない治療期間が、
日本では数年から10年を超えることも稀ではない、
という欠点も同時にあります。
問題は再発をしやすい患者さんと、
再発のリスクの少ない患者さんとを、
見分ける方法がないかどうか、ということです。
甲状腺の治療前の大きさが関連するという報告や、
18か月を超える治療期間では再発が少ないという報告、
喫煙者は再発しやすいという報告などがありますが、
あまり一般臨床において、
価値を持つようなものではありません。
今回の検証はイギリスの単独施設のものですが、
266名のバセドウ病の患者さんに対して、
カルビマゾール(メルカゾールとほぼ同じ)の治療を、
中央値で18か月継続して中止しています。
一部の患者さんはプロピルチオウラシルを使用し、
また一部の患者さんはT4との併用療法を行っています。
今回再発の有無のポイントとしているのは、
TSH受容体抗体の測定値です。
治療終了後1年の時点で31%の患者さんが再発し、
4年後には70%の患者さんが再発しています。
再発した患者さんは、
診断時の年齢が若く(平均39歳)、
診断時のTSHレセプター抗体の測定値が高く(平均8.8IU/L)、
治療終了時のTSHレセプター抗体の測定値も高い(平均1.2IU/L)),
という特徴が認められました。
治療中止の時点で、
TSHレセプター抗体の測定値が0.9IU/L未満であると、
中止4年後の再発率は58%であったのに対して、
それが1.5IU/Lを超えていると、
82%という高率でした。
また、診断の時点でのTSHレセプター抗体が5IU/L未満であると、
治療終了後4年での再発率が57%であったのに対して、
それが12IU/Lを超えていると、
その再発率は84%という高率でした。
つまり、
治療開始の時点と治療終了時のTSHレセプター抗体の数値が、
治療終了後の再発率に大きな影響を与えている、
と言う結果になっていました。
この問題は現状決め手はないのですが、
個人的には2から3年未満での治療の中止を目指して、
甲状腺腫、TSHレセプター抗体値、サイログロブリン値などの安定を指標として、
試行錯誤しながら治療を行なっているところです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
昨年のThyroid誌に掲載された、
飲み薬によるバセドウ病の治療終了後の、
再発のリスクとそれに関わる因子についての論文です。
バセドウ病は甲状腺機能亢進症を来す病気の代表です。
バセドウ病の治療には、
大きく分けて3つの方法があります。
抗甲状腺剤という飲み薬による治療と、
放射性ヨードによるヨード治療、
そして甲状腺を一部を残して切除する手術療法です。
このうちのどれを最初に選択するかは色々な考えがあり、
必ずしも一定はしていませんが、
日本においては禁忌でなければ抗甲状腺剤による薬物治療が、
第一選択となることが一般的です。
抗甲状腺剤による治療の一番の問題は、
一旦治療を行なって寛解と判断され、
治療を終了しても、
その後数年以内にかなりの確率で再発が起こる、
ということです。
上記文献の記載によれば、
ヨーロッパの報告では再発率は40から50%で、
アメリカの報告では70から80%とされています。
日本においては概ねもっと良い数値が報告されていて、
2年間での再発率が30%程度というデータもあります。
ただ、一方で海外ではせいぜい2年は超えない治療期間が、
日本では数年から10年を超えることも稀ではない、
という欠点も同時にあります。
問題は再発をしやすい患者さんと、
再発のリスクの少ない患者さんとを、
見分ける方法がないかどうか、ということです。
甲状腺の治療前の大きさが関連するという報告や、
18か月を超える治療期間では再発が少ないという報告、
喫煙者は再発しやすいという報告などがありますが、
あまり一般臨床において、
価値を持つようなものではありません。
今回の検証はイギリスの単独施設のものですが、
266名のバセドウ病の患者さんに対して、
カルビマゾール(メルカゾールとほぼ同じ)の治療を、
中央値で18か月継続して中止しています。
一部の患者さんはプロピルチオウラシルを使用し、
また一部の患者さんはT4との併用療法を行っています。
今回再発の有無のポイントとしているのは、
TSH受容体抗体の測定値です。
治療終了後1年の時点で31%の患者さんが再発し、
4年後には70%の患者さんが再発しています。
再発した患者さんは、
診断時の年齢が若く(平均39歳)、
診断時のTSHレセプター抗体の測定値が高く(平均8.8IU/L)、
治療終了時のTSHレセプター抗体の測定値も高い(平均1.2IU/L)),
という特徴が認められました。
治療中止の時点で、
TSHレセプター抗体の測定値が0.9IU/L未満であると、
中止4年後の再発率は58%であったのに対して、
それが1.5IU/Lを超えていると、
82%という高率でした。
また、診断の時点でのTSHレセプター抗体が5IU/L未満であると、
治療終了後4年での再発率が57%であったのに対して、
それが12IU/Lを超えていると、
その再発率は84%という高率でした。
つまり、
治療開始の時点と治療終了時のTSHレセプター抗体の数値が、
治療終了後の再発率に大きな影響を与えている、
と言う結果になっていました。
この問題は現状決め手はないのですが、
個人的には2から3年未満での治療の中止を目指して、
甲状腺腫、TSHレセプター抗体値、サイログロブリン値などの安定を指標として、
試行錯誤しながら治療を行なっているところです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。