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ビタミンCの心房細動予防効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
ビタミンCの心房細動予防効果.jpg
今年のBMC Cardiovascular Disorders誌に掲載された、
ビタミンCの心房細動予防効果についての論文です。

心房細動は年齢と共に増加する不整脈で、
発作性であっても脳塞栓症という、
脳卒中のリスクになることで知られています。

心房細動は種々のストレスを誘因として、
発症することが知られていて、
たとえば心臓のバイパス手術の後では、
およそ30%の患者さんが心房細動を発症するというデータが、
上記文献には引用されています。

このストレスによる心房細動発症のメカニズムは、
正確には分かっていませんが、
動物実験では酸化ストレスがその原因の1つであると想定されています。

ビタミンCは抗酸化物質として知られています。
それでは、心臓手術後などの心房細動高リスクの患者さんに対して、
ビタミンCの補充を行うことにより、
心房細動は予防出来るのでしょうか?

今回の研究では、
これまでの臨床データをまとめて解析する方法で、
この問題の検証を行っています。

これまでの15の臨床試験における、
心房細動の発症リスクが高い、
2050 名の患者さんのデータが対象となっています。

そのうちの14の臨床研究では、
心臓手術後の心房細動の発症リスクが検証されていて、
もう1つの臨床研究は、
心房細動を電気ショックで治療した後の再発リスクを検証しています。
いずれもそうした時期の前後でビタミンCを使用して、
心房細動のリスクが抑制されるかどうかを検証しているのです。

臨床研究のうち5つはアメリカのもので、
5つはイラン、3つはギリシャ、
そして残りの1つはロシアの、
もう1つはスロベニアの研究でした。

ビタミンCの心房細動予防効果は、
かなり明確な地域差が認められました。

アメリカで施行された心臓手術後の5つの臨床研究では、
ビタミンCによる心房細動予防効果は
認められませんでした。
アメリカ以外で施行された9つの心臓手術後の臨床試験を、
まとめて解析した結果では、
ビタミンCの使用により心房細動の発症リスクは、
44%有意に抑制されていました。
(95%CI:0.47から0.67)

ギリシャで行われた、
唯一の電気ショック後の研究では、
ビタミンCの使用により心房細動の再発リスクは、
87%有意に抑制されていました。
(95%CI:0.02から0.92)

ギリシャの研究はかなりばらつきの大きなデータですし、
アメリカとそれ以外のデータが異なる理由も、
何とも言えません。
シンプルに考えれば、
ビタミンCでそれほど心房細動の発症リスクが下がるとは、
考えにくいのですが、
使用することで身体に有害とも考えにくく、
他にストレス後の心房細動を予防する決め手がない現状では、
1つの選択肢にはなりうるように思います。

今後のデータの蓄積を注視したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

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