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重病から回復後の自動車運転再開について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
重病罹患後の運転再開のリスク.jpg
JAMA Internal Medicine誌に、
2023年3月27日ウェブ掲載されたレターですが、
重病から回復後の車の運転再開のリスクについての内容です。

敗血症など命に関わる病気で入院すると、
一時的にはせん妄状態などの意識障害を来すことがあり、
回復して退院となっても、
体力の低下などと共に、
認知機能の低下や精神的な不安定などの、
後遺症を残すことが多いことが知られています。

入院する前の元気な時に車の運転をしていた人は、
退院後も自分の判断で、
運転を再開することが通常と思われますが、
実際には認知機能の低下などがあって、
運転にリスクがある状態である可能性も否定出来ません。

それでは実際に、
こうした大病の後で、
どのくらいの患者さんが運転を再開し、
認知機能の低下はどの程度認められるのでしょうか?

今回の研究ではアメリカにおいて、
集中治療室で4日以上の治療を受け、
その間にせん妄状態を発症したか、
敗血症や呼吸不全に罹患した、
196名の患者を回復期のクリニックで観察し、
自動車の運転の再開の有無と、
認知機能低下の有無を検証しています。

その結果、
入院前にそのうちの126名は自動車を運転していて、
退院後1か月以内に運転を再開していたのは、
そのうちの13%に当たる16人でした。
そして、その半数に当たる8人は、
軽度認知機能障害の指標である、
MoCAスコアが認知機能低下を疑う26点未満となっていました。

このように、
重病で治療を受けた患者さんの多くは、
退院後すぐには運転を再開していませんが、
一部の患者さんは再開しており、
そのうちの半数では、
運転にリスクがある認知機能の低下が疑われる状態でした。

近年日本でも認知機能の低下している高齢者の、
自動車運転のリスクが問題となっていますが、
認知機能低下が指摘されていない人でも、
重病で入院した後のような状況では、
運転にはリスクがある可能性があり、
今後はたとえば入院中にせん妄状態が確認されたケースでは、
退院後に運転の安全性をチェックするなどの、
対策が必要となるかも知れません。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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