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新型コロナ流行期の医師の超過死亡(アメリカの疫学データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は訪問診療と事務作業の予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
COVID-19流行期の医師の超過死亡.jpg
JAMA Internal Medicine誌に、
2023年2月6日ウェブ掲載されたレターですが、
新型コロナの流行期における、
医師の死亡リスクについての検討です。

超過死亡というんは、
ある原因のために上乗せされた死亡数のことで、
アメリカにおいては新型コロナのパンデミックにより、
100万人を超える超過死亡があったと推測されています。

医者などの医療者は一般の人と比較して、
新型コロナの感染者と接触する機会が多く、
感染のリスクは高いと想定されます。
その一方で感染防御の知識はあり、
感染対策も取って対応していますから、
そのリスクはかなり低減されるのではないか、
という推測も可能です。

ただ、同じ医療者といっても様々で、
実際に患者さんに毎日接している医師もいれば、
殆ど診察をしていない医師もいます。
また診察や治療はしていても、
感染症の患者は診ていない、
という医師もいます。
感染防御の知識や向き合い方においても、
その専門分野や経験により、
そのレベルは様々です。

今回の検証はアメリカにおいて、
医師の新型コロナ流行期の超過死亡を、
患者の診察に従事しているかどうかや、
年齢などで分類して推計しているものです。

その結果、
2020年3月から2021年12月までの期間において、
毎月平均で785631名の医師のうち、
4511名が死亡していて、
そのうち622名(95%CI:476から769)が、
新型コロナによる超過死亡と推測されました。
これは年間10万人当たり43人(95%CI:33から53)の超過死亡、
ということになります。

超過死亡は年齢により大きく影響されていて、
実際に患者の診療に従事している医師でも、
年齢が45から64歳の若年群では、
年間10万人当たりの超過死亡は10人(95%CI:3から17)、
と低いのに対して、
年齢が75から84歳の高齢群では、
年間10万人当たりの超過死亡は182人(95%CI:98から267)と、
明確な増加が認められました。

実際に診療には従事していない医師の方が、
超過死亡は高く、
年齢を問わない超過死亡は、
年間10万人当たり140人(95%CI:100から181)に達していました。
一方で年齢は問わず患者の診療に従事している医師の超過死亡は、
年間10万人当たり22人(95%CI:8から51)と低く、
これは一般人口における超過死亡(294人)より、
遥かに低くなっていました。

通常患者を診察しない医師の方が、
感染のリスクは低いように思われがちですが、
実際には油断して知らないうちに感染することも多く、
慎重にリスクを理解した上で患者の診療を行っている医師の方が、
超過死亡は少ないという興味深い結果です。
ただ、それでも75歳を超える高齢の医師では、
超過死亡は明確に高くなっていて、
感染のリスクを伴う感染症の診療には、
一定の年齢制限が必要ではないかとも思われます。

こうしたデータを元にして、
医療者の配置についても、
今後はより合理的な振り分けが必要であるように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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