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ベラパミルの1型糖尿病進行予防効果(2023年介入試験結果) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ベラパミルの糖尿病進行予防効果.jpg
2023年2月24日ウェブ掲載された、
1型糖尿病の進行予防に、
抗不整脈剤として使用されるカルシウム拮抗薬が、
有効なのではないかという、
臨床試験の結果をまとめた論文です。

1型糖尿病というのは、
主に小児期に発症して、
早期にインスリン分泌が高度に低下し、
インスリンの注射が、
治療にはほぼ必須となるタイプの糖尿病ですが、
その原因は膵臓の細胞に起こる自己免疫的機序による炎症が、
強く関与していると考えられています。

これまでにインスリン以外の多くの薬剤が、
1型糖尿病の進行予防のために使用されていますが、
現状満足のゆく進行予防効果が得られた薬剤はありません。

ところが、2012年にアメリカの研究グループが、
カルシウム拮抗薬のベラパミル(商品名ワソランなど)に、
動物実験のレベルで1型糖尿病による膵臓のβ細胞の壊死を、
予防する作用があることを発表しました。

ベラパミルというのは狭心症や頻脈性不整脈の治療薬で、
今では主に脈拍のコントロールに使用されている薬です。

研究によれば、
ベラパミルには細胞壊死を誘導する蛋白質である、
チオレドキシン相互作用蛋白質(TXNIP)の阻害作用があり、
これにより膵臓のβ細胞の壊死を、
食い止めているのではないかと推測されました。

その後2018年のNature Medicine誌に、
1型糖尿病の早期の患者さんに対して、
ベラパミルを使用した1年間の臨床試験結果が発表されました。

対象者は25名と少ないのですが、
偽薬を使用した厳密な方法による試験で、
一定の有効性が確認されたとする内容でした。

今回の臨床試験はアメリカにおいて、
7歳から17歳の年齢で新規に診断された1型糖尿病の患者、
トータル88名をくじ引きで2つの群に分けると、
一方は通常の糖尿病の治療に加えてベラパミルを上乗せし、
もう一方は偽薬を使用して、
その経過を52週(1年)に渡り観察しています。

その結果、
食事負荷で計測した、
内因性インスリン分泌の指標であるCペプチドの分泌量は、
偽薬群と比較してベラパミル群で30%の増加が認められました。
また1年の経過において、
偽薬群のCペプチドの分泌量は低下していましたが、
ベラパミル群では低下は認められませんでした。

このように、
2018年発表のデータと同様の結果が、
今回のより例数の多い試験においても得られていて、
ベラパミルの使用に一定の1型糖尿病進行予防効果のあることは、
より確実性のある知見になったと言えそうです。

ベラパミルは安全性の確立した薬なので、
今後その1型糖尿病への使用は、
本格的に検討されることになりそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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