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ラメルテオンのせん妄への有効性(2023年メタ解析) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ラメルテオンのせん妄への効果.jpg
Journal of Pineal Research誌に、
2023年2月1日掲載された、
通常睡眠補助的に使用されるメラトニン系の薬剤の、
せん妄への有効性についての論文です。

せん妄というのは急性に生じる意識障害で、
集中治療室に入った患者さんが、
急に興奮して暴れたり、
重症の認知症を思わせるような症状が、
急に出現したりするのが、
その典型的な事例です。

環境の変化や病気などによるストレスが、
その要因となっていることが多く、
そのため病状が安定すれば、
速やかにその症状も消失します。

しかし、実際には病院の集中治療室や急性期病棟などで、
その対応に苦慮することも多く、
肝心の元の病気の治療にも、
影響を与えることが稀ではありません。

特に高齢者においてその発症頻度が高いことが知られていて、
その予防としての薬物療法の必要性が高い割には、
現時点で明確に有効性のある治療は存在していません。

高齢者のせん妄は、
認知症の急性増悪と考えることも可能なので、
明確な認知症症状がなくても、
予めアリセプトのような、
コリン作動性の認知症治療薬を、
予防的に使用することでせん妄が予防出来るのでは、
という考え方があり、
そうした臨床試験も幾つか行われましたが、
いずれも失敗に終わっています。

強い鎮静作用を持つ抗精神病薬が、
一定の有効性があるとする報告がありますが、
実際にせん妄のリスクの高い高齢の患者さんは、
抗精神病薬の副作用が出易く、
全身状態も不安定な方なので、
そうした患者さんに予防のために抗精神病薬を使用する、
というのは、
矢張り問題が大きい考え方ではないかと思います。

睡眠のリズムを調整する作用のあるメラトニンの誘導体で、
不眠の治療薬であるラメルテオン(商品名ロゼレム)は、
高齢者にも副作用の生じ難い薬剤である、
と考えられていますが、
このラメルテオンの使用により、
入院時のせん妄が予防出来るのでは、
ということを示唆するデータがあり、
複数の臨床データが報告されています。

今回の研究では、
これまでに報告された 主だった臨床試験データを、
まとめて解析するメタ解析の手法で、
その有効性の再検討を行っています。

これまで施行された偽薬を使用した精度の高い8つの介入試験に含まれる、
587の事例をまとめて解析したところ、
ラメルテオンの使用によりせん妄の発症は、
50%(95%CI:0.29から0.86)有意に抑制されていました。

サブ解析では、
65歳以上の高齢者では有効性が認められた一方で、
65歳未満では有意なせん妄の抑制は認められず、
有効性は継続的な使用でのみ認められていました。

このように、急性入院などせん妄の発症リスクが高いと想定される場合、
高齢患者にラメルテオンを使用することは、
その発症の予防に一定の有効性があると、
今回のメタ解析の結果からは考えられます。

ラメルテオンによるせん妄予防の臨床データは、
現状日本のものが多く、
今後国外でのデータの蓄積にも期待をしたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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