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サイアザイド系利尿薬による尿路結石再発予防効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は終日レセプト事務作業の予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
サイアザイド系利尿薬と尿路結石予防効果.jpg
the New England Journal of Medicine誌に、
2023年3月2日付で掲載された、
サイアザイド系利尿薬の尿路結石予防効果についての論文です。

腎尿路結石というのは、
腎臓から尿管を経て膀胱に至る経路に、
硬い石のような沈着物が出来る病気です。
無症状のこともありますし、
それが尿管の狭い部分を塞ぐと、
お腹や背中の激痛が起こることもあります。
そして、無症状であっても結石の影響によって、
腎臓の機能が低下することもあります。

結石を取り除く手術や衝撃波の治療などはありますが、
一度石が取り除かれても、
再発し易いことがこの病気の厄介なところです。

カルシウムやシュウ酸、尿酸などが結石の成分で、
そうした成分の排泄が多いことや、
尿の酸性度が高いことなどが結石の原因と考えられ、
再発予防のために、
尿酸の産生を抑える薬を使用したり、
尿の酸性度を抑える薬を使用したり、
シュウ酸を多く含む食品を制限する食事療法などが行われていますが、
その有効性は限定的なのが実際です。

こうした予防法の1つとして、
推奨されているのがサイアザイド系利尿薬の使用です。

サイアザイド系利尿薬は、
古くからある利尿薬の一種で、
塩分と水分の排泄を促す働きから、
心不全や高血圧などの治療に主に使用されています。

その副次的な作用として、
尿に排泄されるカルシウムの量を減らす働きがあり、
それがカルシウムを主体とする結石の、
再発予防に繋がると考えられているのです。

実際のその予防効果を示す臨床データが報告されていますが、
データは30年近く前のもので、
その後アップデートされていないという問題がありました。

過去にそのために使用されたサイアザイド系利尿薬の使用量は、
非常に高用量で、
実際には副作用が強くて使いづらく、
エビデンスはあっても、
臨床で結石予防のためにサイアザイド系利尿薬が使用される、
ということはあまりないのが現実でした。

各種ガイドラインには記載されているものの、
日本では保険適応自体がありません。

今回の研究はその有効性を再評価したもので、
カルシウムを含有する尿路結石症と診断された416名の患者を、
本人にも主治医にも分からないように、
くじ引きで複数の群に分けると、
偽薬と、サイアザイド系利尿薬のハイドロクロロサイアザイドを、
1日12.5㎎から50㎎までの用量群に割り付けて、
中間値で2.9年の経過観察を施行しています。

その結果、用量に関わらず、
サイアザイドには尿路結石の再発予防効果は確認されず、
当然のことですが、低カリウム血症や高尿酸血症などの、
サイアザイドに特有の副作用は、
偽薬より実薬でより多く認められました。
尿中のカルシウムは確かにサイアザイドの使用によりやや減少しましたが、
その一方で同じ結石の原因物質の1つであるシュウ酸塩は、
サイアザイド系利尿薬使用群で増加が認められました。

つまり、
カルシウム主体の結石のみで評価すれば、
サイアザイド系利尿薬の高用量で、
一定の結石再発予防効果は可能性があるのですが、
一方でシュウ酸カルシウム主体の結石であると、
却ってシュウ酸塩の排泄増加が、
悪く働く可能性もあるという理屈です。

今後より結石の成分を考慮した上で、
分析が必要な知見ではありますが、
実際的にはこうした薬剤の使いにくさを考えると、
その使用はかなり限定的になるのではないかと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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