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「ボーンズ アンド オール」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
ボーンアンドオール.jpg
イタリア出身の鬼才ルカ・グァダニーノ監督の、
アメリカ・イタリア合作の新作映画で、
1980年代のアメリカを舞台にした青春ホラーとでも言うべき、
かなり特殊なジャンル映画になっています。

共に人間の肉を食べないといられないという、
特殊な嗜好を持った若いの男女の出逢いから、
その数奇な運命が、
ロードムービー的要素を織り交ぜながら、
時に残酷でグロテスクに、
時に詩的に美しく綴られてゆきます。

主人公のアフリカ系女性をテイラー・ラッセルが演じ、
相手の白人青年をティモシー・シャラメが演じます。
そして、演技派のマーク・ライランスが、
得体の知れない高齢の人食いを、
禍々しい雰囲気たっぷりに演じています。
シャラメは勿論抜群に恰好良いですし、
ラッセルの如何にもの身勝手さと直情さも、
なかなかリアルで良い感じを出しています。
そして、ライランスの悪の魅力が、
また抜群で全編を引き締めているのです。
この演技の饗宴だけでも、
充分元は取った気分になります。

監督は「サスペリア」のリメイクもしていますし、
70年代から80年代くらいのホラーが好きなんですね。
今回の作品も舞台は1980年代で、
フィルムで切り取られた風景の質感は、
見事に当時の映画の肌触りを再現しています。
吸血鬼映画のバリエーションなのですが、
超自然的な能力などを一切排して、
単純に逃れられない欲望の問題として処理しているのが特徴で、
やや陳腐にも感じる設定ではあるのですが、
「匂い」が同族であることを知らしめるという趣向が、
スパイスの如く利いていて、
その世界観を意外に切実に感じ、
作品世界に没入することが出来ました。

映画そのものの質感も、
1970年代の「処女の生血」や「マーティン」などの、
切なく悲しい吸血鬼物語に似通っています。
ただ、恋愛ドラマとしての純度は遥かに過去作を凌駕していて、
主人公が母親と対面した時の衝撃や、
悲壮なラストの没入感は見事で、
ラストの余韻も利いていたと思います。

個人的にはこれまでの監督の映画の中で最も愛着を感じた1本で、
かなりどぎつい部分もあるので、
全ての方にお勧め出来る映画ではありませんが、
「青春残酷物語」的ジャンル映画のお好きな方には、
かなり期待をして鑑賞しても、
その期待を裏切らない力作だと思います。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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