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三谷幸喜「笑の大学」(2023年再演版) [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前中は石田医師が、
午後2時以降は石原が外来を担当する予定です。

土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
笑いの大学.jpg
1996年に青山円形劇場で初演され、
初演時から名作の誉が高く、
1998年にパルコ劇場で同一キャストで再演された「笑の大学」が、
キャスト一新して装いも新たに再演されています。

初演は西村雅彦(上演当時の芸名による)さんと近藤芳正さんの2人芝居、
今回は内野聖陽さんと瀬戸康史さんの2人芝居で、
初演は山田和也さんの演出でしたが、
今回は三谷幸喜さん自身が演出に当たっています。

これは初演と再演の両方を観ています。

初演は「巌流島」という作品とほぼ同時上演で、
「巌流島」の方がパルコ劇場で、
「笑の大学」が青山円形劇場だったのですね。
確か両方とも戯曲がギリギリまで完成せず、
「巌流島」は初日を遅らせての上演となり、
キャストも陣内孝則さんが降板してしまったりして、
相当のドタバタになったのですね。
それで、「巌流島」はチケットを取っていたのですが、
「笑の大学」は「どうせ間に合わないのじゃないかしら」と思って、
当初は行く予定がなかったのですが、
幕が開いてみると大好評で、
当日券に並んで、見切りに近い席で鑑賞したことを覚えています。

これは確かに素晴らしかったのですね。
三谷さんがちょっと井上ひさしさんに、
寄せていた時期だったと思うのですが、
如何にも井上さんが描きそうな台本を、
井上さんの数段上を行く完成度で、
見事な2人芝居に仕立てて見せたのですね。
戦時体制批判のように見えながら、
勿論そうしたものでもあるのですが、
それよりもっと大きな、
藝術家の、そして喜劇作家の矜持のようなものを、
ストレートに描いている点に、
素直に感銘を受けました。

基本西村雅彦さんと近藤芳正さんへの当て書きなのですが、
2人の芝居もそれぞれの代表作と言って過言でない、
非常に見ごたえのあるものでした。

その後映画にもなるなどして、
三谷さんの代表作としての評価を高めたことは、
言うまでもありません。

それで今回の満を持した感のある再演ですが、
改めてこの作品の質の高さを、
再認識させる上演にはなっていたと思います。

役者に関しては微妙なところで、
前半はどうしても、初演のコンビの印象が脳裏に焼き付いていて、
今回のキャストの2人も、
明らかに台詞の言い回しや間合いなど、
影響は受けているんですね。
ああこれは西村さんだよね、
ここは近藤さんが良かったよね、
というように思ってしまいました。
ただ、後半のシリアスになる部分は、
今回のキャストの方が映像経験などは豊富なので、
よりリアルに場面を感じられました。
瀬戸さんは確かに青年座付き作家のように見えますし、
内野さんも検閲官みたいに見えますよね。
ここは今回のキャストの強みだと思いました。
冷静に見ると初演のキャストは、
「お馴染みの2人の2人芝居」のようではあっても、
その役柄をリアルに感じさせる、
というようには見えなかったからです。
ただ、検閲官が後半で一度恫喝するところがあるでしょ。
あそこはもう一段凄味が欲しかったと思いました。

この作品の弱点は、
ラストがそのままでは終われない、
という部分だと思うのですね。
青年座付き作家が去って行って、
検閲官が1人残されるでしょ。
ここでちょっと小芝居がないと、
終われないですよね。
つかこうへいの「熱海殺人事件」と一緒で、
戯曲にきちんとした終わりがないので、
それを演出や役者が埋めないといけない、
というような構造になっているんですね。

今回で言うと、
検閲官は戯曲を読み直して笑いだして、
それからちょっと切ないような表情をして、
それでラストになるのですが、
これで「笑いとペーソス」ということになるのかしら。
こうした台詞のない小芝居をしないと、
終われないというのは如何なものか、
というように思うんですね。
今回の演出では、オープニングも、
1人で部屋に入って来た座付き作家が、
こちらも少し時間を使って小芝居をしていて、
おそらくラストとのバランスを取ったのだと思うのですが、
こういう勿体ぶった感じの演出が、
僕はあまり好きではありません。
本来もっとスパッと始めて、
スパッと終われないといけない筈で、
それが出来ないということは、
戯曲自体に瑕疵がある、ということではないでしょうか?

そんな訳でこの戯曲の素晴らしさを、
改めて感じさせる上演であった一方で、
まだこなれていない部分も散見される上演でもありました。
同一キャストでの、
練り上げられた再演に期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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季節と統合失調症リスク(2023年メタ解析) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
統合失調症と季節性.jpg
Schizophrenia Research誌に、
2023年1月20日ウェブ掲載された、
統合失調症の季節性についての論文です。

統合失調症は内因性の精神疾患の代表的な病気の1つですが、
1929年にこの病気は冬に生まれた人に発症することが多い、
という知見が発表されています。

冬は北半球の地域では紫外線の曝露量が減り、
皮膚で紫外線により産生されるビタミンDが不足するために、
胎児の神経発達に何等かの影響があるのではないか、
という意見や、
冬に多いウイルス感染が、
胎児に影響を与えるのでは、
という仮説もありますが、
実証されているものではありません。

その後もこうしたデータは複数ありますが、
個々にはそれほど精度の高いものではなく、
アップデートが必要であると考えられています。

今回の研究はこれまでの主だった臨床データを、
まとめて解析するシステマティックレビューとメタ解析という手法で、
この問題の再検証を行っているものです。

これまでの世界30か国の43の臨床研究に含まれる、
440039名の統合失調症患者のデータをまとめて解析したところ、
冬に生まれた人は、
統合失調症の罹患リスクが平均的な罹患率と比較して、
5%(95%CI:1.03から1.07)有意に増加していました。
この場合の「冬」というのは、
北半球では12月から2月を指し、
南半球では6月から8月を指しています。
一方で夏に生まれた人は、
統合失調症の罹患リスクが平均的な罹患率と比較して、
4%(95%CI:0.94から0.98)有意に低下していました。
北半球と南半球を別々にして解析しても、
統合失調症の罹患リスクが冬生まれに高く夏生まれに低い、
という傾向は同じように認められていました。

このように、
季節としての冬、
つまり気温が低く紫外線量が少ない時期に生まれた人では、
地域に関わらず統合失調症のリスクが高く、
季節としての夏、
つまり気温が高く紫外線量が多い時期に生まれた人では、
統合失調症のリスクが低いという傾向は、
今回のメタ解析でも明確に認められました。

ただ、そのリスクの差は小さく、
有意ではあるものの軽微な差と思われます。
その原因は不明ですが今回の検証からは、
紫外線量やビタミンDの影響が、
仮説としては想定されます。
今後統合失調症の原因が余すところなく解明されれば、
この季節性への答えも判明することになるかも知れません。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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片頭痛予防における食物繊維の有効性 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
片頭痛に対する食物繊維の有効性.jpg
Frontiers in Nutrition誌に、
2023年1月4日掲載された、
食物繊維の片頭痛予防効果についての論文です。

片頭痛は慢性頭痛の代表です。
頭の片側のズキズキする拍動性の頭痛で、
嘔吐などの症状を伴い、
目の前にギザギザの光が走るような前兆を、
伴うことがあります。

その発作は短期間に繰り返す事が多く、
日常生活に大きな負担となります。

頭痛は脳血管の拡張により起こる、
という考え方が以前は主流でしたが、
現在では脳の表面の硬膜に分布する、
脳神経の三叉神経が刺激され、
一種の炎症を起こすことがその主な要因と考えられています。

その発作の治療には、
トリプタン製剤と呼ばれる、
セロトニン受容体作動薬が使用され、
神経刺激性のペプチドである、
CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)への抗体が、
注射薬として使用開始されています。

ただ、いずれの薬も非常に高価で、
発作を完全に抑える、というほどの効果はありません。

片頭痛の発症には、
食事などの環境要因の関与も大きいと考えられています。

たとえば、2021年6月のBritish Medical Journal誌に掲載された研究では、
多価不飽和脂肪酸のDHAやEPAを多く摂り、
リノール酸を減らした食事をすると、
片頭痛発作が抑えられるとする結果が報告されています。

片頭痛と、
過敏性腸症候群などの自律神経の関連する腹部症状との間には、
関係が深いことが知られていて、
これは脳と腸との自律神経系を介した交通が、
影響していると考えられています。

それでは、
腸内細菌叢を改善して腸内環境を整える作用のある、
食物繊維を多く摂ることにより、
片頭痛を予防することは出来るのでしょうか?

今回の研究はアメリカで施行された、
国民健康栄養調査のデータを活用して、
12710名の一般住民の食物繊維の摂取量を推計し、
激しい頭痛や片頭痛のリスクとの関連を検証しているものです。

その結果、
食物繊維の摂取量が多いほど、
激しい頭痛や片頭痛のリスクは低下していて、
食物繊維の摂取量を5つに分けた時、
最も少ない群と比較した時最も多い群では、
激しい頭痛や片頭痛のリスクは、
26%(95%CI:0.61から0.90)有意に低下していました。
ここから、
毎日の食物繊維の量を10グラム増加させることにより、
激しい頭痛や片頭痛のリスクが11%低下すると推計されました。

ただ、条件を変えてサブ解析を行うと、
人種によっては食物繊維と頭痛との関連が認められなかったり、
過体重から軽度の肥満の人では関連が認められないなど、
一部の条件では食物繊維の頭痛予防効果は認められませんでした。

今回のデータのみで、
食物繊維に頭痛の予防効果があるとは言えませんが、
これまでの多くの報告から見て、
一般に健康に良いとされる食習慣に、
習慣性頭痛の予防効果のあることは、
事実である可能性が高いと思われます。

食習慣が健康の決め手の1つであることは、
間違いのない事実であるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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肝細胞癌予防効果を持つ薬剤のメタ解析 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので、
診療は午前中で終わり、
午後は産業医面談などで都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
スタチンの肝細胞癌予防効果.jpg
Alimentary Pharmacology and Therapeutics誌に、
2023年1月10日ウェブ掲載された、
肝細胞癌の予防効果のある薬剤についての論文です。

肝細胞癌は予後の悪い癌の1つとして知られています。
そのため、有効な予防法があれば、
その有用性は非常に高いものと言えるのです。

これまでの疫学データにおいて、
高コレステロール血症の治療薬であるスタチン、
抗血小板剤として幅広く使用されているアスピリン、
糖尿病治療薬の基礎薬として使用されているメトホルミンの、
3種類の薬剤に、
肝細胞癌の予防効果を示唆する結果が報告されています。

それではこの3週類の薬剤のうち、
実際に最も予防効果が確実と言えるのは、
どの薬なのでしょうか?

今回の研究では、
これまでの3種の薬剤と肝細胞癌との関連を検証した、
精度の高い疫学データをまとめて解析する、
メタ解析の手法で、
この問題の検証を施行しています。

スタチンについては、
これまでの10の疫学研究に含まれる、
1774476名のデータをまとめて解析した結果として、
スタチンの使用は肝細胞癌のリスクを、
48%(95%CI:0.37から0.87)有意に低下させていました。
このスタチンによる肝細胞癌の予防効果は、
アスピリンやメトホルミンとの併用においても、
単独においても、肝硬変などの肝臓疾患の有無にも関わらず、
どのサブ解析でも有意に存在していました。

アスピリンについては、
これまでの11の疫学研究に含まれる、
2190285めいのデータをまとめて解析した結果として、
アスピリンの使用は肝細胞癌のリスクを、
52%(95%CI:0.27から0.87)有意に低下させていました。
ただ、この予防効果はメトホルミンやスタチンとの併用事例を補正すると、
有意なものではなくなっていました。

一方でメトホルミンについては、
これまでの3つの疫学研究に含まれる、
125458名のデータをまとめて解析した結果として、
肝細胞癌の有意なリスクの低下は確認されませんでした。

このように、
今回のメタ解析では、
これまでに複数の報告のあった3種の薬剤のうち、
併用に伴うサブ解析を含めて、
その予防効果が確認されたのは、
スタチンのみという結果でした。

スタチンを使用継続することで、
肝細胞癌の一定の予防効果のあることは、
これまでのデータの蓄積からして、
ほぼ間違いがないと言って良いようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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早期肺癌の縮小手術の有効性 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
肺癌縮小手術の有効性.jpg
the New England Journal of Medicine誌に、
2023年2月9日掲載された、
早期の肺癌に対する縮小手術の有効性についての論文です。

肺癌はその組織から、
大きく小細胞肺癌とそれ以外の非小細胞肺癌とに分類されます。

そして、非小細胞肺癌については、
転移などにより困難な場合を除けば、
手術により病変を切除することが第一選択の治療です。

特に臨床分類でT1N0という、
腫瘍の大きさが3センチ以下で、
腫瘍が肺の中に留まっていて、
リンパ節の転移もない状態では、
手術により腫瘍を周辺部を含んで切除することにより、
高い生命予後が得られることが分かっています。

ただ、問題は腫瘍を含むどのくらいの肺組織を、
切除するべきかということです。

腫瘍が小さくても、
肺葉切除と言って、
腫瘍が存在する肺葉という大きな範囲を、
丸ごと切除するという考え方があり、
その一方で腫瘍周辺の一部のみを切り取る、
縮小手術という考え方があります。

1995年に発表された有名な臨床研究があり、
そこではT1N0の肺癌症例で、
肺葉切除と縮小手術とを比較したところ、
縮小手術をすると局所の再発が3倍に増え、
死亡リスクが50%増加するという結果が得られています。

そのため多くのガイドラインにおいて、
T1N0の非小細胞肺癌は肺葉手術が第一選択とされたのです。

ただ、当時はまだCTを施行したような肺癌検診は一般的ではなく、
発見される肺癌の多くは2センチを超えていました。

従って、
たとえば1センチ程度の肺癌のみを対象としても、
肺葉切除をしなければいけないのか、
という点については、
検証の余地が残っていたのです。

この疑問に対して先行的に臨床試験を施行したのは日本です。

2022年のLancet誌に発表された、
JCOG0802という大規模な臨床試験の結果では、
T1N0で大きさが2センチ以下の非小細胞肺癌の事例、
1106例をくじ引きで2つの群に分け、
肺葉切除と縮小手術に割り付けてその予後を比較したところ、
生命予後に明確な優劣はありませんでした。
この研究では腫瘍の画像の、
すりガラス陰影と充実性の部分の比率を、
1つの判断の指標にしています。

今回の研究はアメリカ、カナダ、オーストラリアの複数施設において、
腫瘍の大きさが2センチ以下の非小細胞肺癌の事例、
697例をくじ引きで2つの群に分けると、
一方は肺葉切除を施行し、
もう一方は縮小手術を施行して、
中間値で7年の経過か観察を施行しています。

その結果、先行する日本のデータと同様、
観察期間中の死亡と再発を併せたリスクには、
両群で明確な優劣は認められませんでした。
5年生存率や総死亡も両群で同等でした。
その一方で残存肺機能については、
縮小手術施行群が有意に高くなっていました。

このように、
画像の評価法や縮小手術の方法などについては、
日本の研究と今回のものでは違いもあるのですが、
基本的にT1N0の2センチ以下の非小細胞肺癌では、
縮小手術がその予後において肺葉切除に劣らない、
という知見は一致していて、
これが今後のガイドラインにおいても、
基礎となる知見となることは、
間違いがないようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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高齢者の血液ナトリウム濃度と認知症リスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ナトリウム濃度と認知機能.jpg
Age and Aging誌に2023年1月掲載された、
血液のナトリウム濃度と認知機能との関連についての論文です。

血液のナトリウム濃度が低下する低ナトリウム血症は、
高齢者では最も頻度の高い電解質代謝異常として知られています。

高齢者ではナトリウムを維持するホルモンの働きが、
加齢により弱まることが多く、
水よりナトリウムがより喪失するようなタイプの、
脱水症を起こしやすいのです。
また癌や心不全などの病気も低ナトリウム血症の原因となりますし、
高血圧などの治療薬が、
その原因となることも多いのです。

高度の低ナトリウム血症は脳の浮腫を伴い、
そのため意識障害や痙攣などを起こすことがありますし、
多彩な神経症状や、
認知機能低下などを来すこともあります。

しかし、慢性に進行する比較的軽度のナトリウムの低下が、
認知機能などに与える影響については、
まだあまり明確なことが分かっていません。

今回の研究はオランダにおいて、
中高年の慢性疾患についての疫学データを二次利用したものですが、
平均年齢が63.6歳の一般住民8028名を、
中間値で10.7年観察し、
認知機能と血液のナトリウム濃度との関連を比較検証しています。

その結果、
血液のナトリウム濃度の低下と、
経過中の認知症のリスクとの間には、
明確な関連は認められませんでした。

その一方で軽度のものを含む低ナトリウム血症では、
集中力と精神運動機能の低下が認められました。

今回の検証では、
軽度の低ナトリウム血症と認知症との関連は、
明らかなものではありませんでしたが、
ナトリウムの低下が、
認知機能に一定の影響を与える可能性は示唆されていて、
高齢者の健康状態を考える上で、
血液のナトリウム濃度は、
重要な情報の1つであることは間違いがないようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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月影番外地その7「暮らしなずむばかりで」 [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
暮らしなずむばかりで.jpg
高田聖子さんが企画している、
月影番外地の第7弾として、
福原充則さんの新作を木野花さんが演出し、
高田さん以外に松村武さん、宍戸美和公さんらが出演する舞台が、
先日下北沢のスズナリで上演されました。

これはもうレトロに小劇場という感じの舞台。

3人の小劇場で生きて来た、
おじさんおばさん役者をメインにして、
果たして今の時代にどのような「物語」が可能なのか、
今はドラマの脚本でも名を挙げている福原さんが頭を絞り、
こちらも小劇場と共に年を重ねて来た、
木野花さんの演出でスズナリで上演、というのですから、
これはもう生粋の小劇場演劇です。

ボロアパートに暮らす、
曰くのある3人の中年の男女の人生スケッチが、
ちょっとした金銭的トラブルから、
瞬く間に闇の世界に疾走し、
ラストは異界の扉を抜けるというところで終わります。

勿論派手さはないのですが、
工夫された台本も、手作り感のあるセットや演出も、
なかなか趣きのある感じです。
役者は松村武さんが、
これぞプロというスケール感のあるお芝居で、
舞台の格を一段上げていたように思います。

多分小劇場に慣れ親しんでいない方には、
あまり向いていない舞台であるように思いますが、
小劇場好きにはとても楽しく、
その世界にゆったりと浸ることが出来ました。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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極私的感染症流行情報(2023年2月11日) [仕事のこと]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は祝日の土曜日でクリニックは休診です。

今日はクリニック周辺の感染症情報です。

クリニックでは1階で通常診療を行い、
感染症のリスクがあって、
適宜検査が必要と思われる患者さんは、
事前にお電話でご連絡を頂いて時間を決めた上で、
2階の発熱外来で対応しています。

この1か月で142名の患者さんを2階の発熱外来で対応しました。

その内訳は、
新型コロナウイルスの感染が49例、
インフルエンザA型の感染が31例、
インフルエンザB型の感染が2例、
新型コロナとインフルエンザA型の、
同時感染が疑われるケースが1例でした。

1月中旬までは陽性であれば新型コロナの比率が多く、
発熱者における陽性率は低下している、
という感じでしたが、
1月中旬以降はインフルエンザA型の陽性率がぐっと増え、
下旬には完全に新型コロナと逆転しているという経過です。

昨日新型コロナ流行後の季節性インフルエンザ感染では、
家族内感染がより増加している、
というアメリカのデータをご紹介しましたが、
実際にクリニックで経験している感染でもそうした傾向は顕著で、
家族全員が感染するという事例が、
新型コロナではなくインフルエンザで見られている、
という状態です。

症状はインフルエンザA型に関しては、
典型的なものは寒気と高熱ですが、
これは新型コロナのオミクロン株の感染でも、
今は殆ど同じような事例が多く、
咽頭所見は必ず観察していますが、
咽頭後編の発赤やリンパ濾胞の所見にも、
全く差は見られていません。

現時点ではインフルエンザと新型コロナウイルスの感染は、
ほぼ同等のものとなり、
その重症度や経過もとても似通っていて、
その診断は検査をしないと見分けは付かない、
というのが、
クリニックの事例から感じる現時点での印象です。

そんな状況であるので、
診断は今はもっぱら、
インフルエンザと新型コロナの抗原同時検出で施行していて、
診断の困難な事例のみ、
新型コロナのRT-PCR検査を追加する、
という感じで診療を行っています。
インフルエンザのPCR検査は健康保険では施行出来ないからです。

ただ、抗原検査はタイミングにより陽性率が変わるので、
概ね発症から12時間以上は経過した時点で、
検査を行うことを原則とし、
早期の診断は新型コロナのみであれば、
RT-PCR検査を優先しています。
こちらは症状出現時には陽性となるからです。

このまま新型コロナが収束するかどうかはまだ分かりませんが、
地域の小さなクリニックが通常の診療として診る範囲においては、
現状インフルエンザと新型コロナの感染は、
同等のものとして扱っても、
大きな問題のない状況であることは事実であるようです。
ただ、勿論、
重症の患者さんを多く診られる基幹病院などの先生であれば、
また別の認識をお持ちであるかも知れません。

主にオミクロン株流行以前の知見として、
新型コロナの感染が季節性インフルエンザなどと比較して、
重症化リスクや死亡リスクが高いというデータがあり、
また罹患後の後遺症と呼ばれるような遷延する体調不良や、
心血管疾患などのリスク増加など、
新型コロナの感染に特異的と思われる知見もあるので、
それがトータルな軽症化に伴って、
どのように推移するのかは、
今後も慎重に見て行く必要がありますが、
多くの感染症の中で新型コロナのみを、
特別視する必要がなくなりつつあることは、
確かなことのように思います。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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新型コロナ流行以降のインフルエンザ家族内感染率 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
終日事務作業の予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コロナ前後のインフル家族内感染.jpg
JAMA誌に2023年1月26日ウェブ掲載された、
新型コロナ流行前後のインフルエンザ感染の、
傾向の違いについての論文です。

新型コロナが流行して以降の、
2020年から21年のシーズンには、
世界的に季節性インフルエンザの流行が起こりませんでした。

それが2021年から22年には一部地域において、
2022年から23年のシーズンにおいては、
地域によっては新型コロナを超える、インフルエンザの流行が起こり、
日本においても今年の冬は、
3年ぶりにインフルエンザの流行が明確に認められています。

クリニックの周辺でも、
2023年の1月下旬からは、
新型コロナよりもA型インフルエンザの方が、
明らかに多い状況が続いています。

それでは、新型コロナの前後で、
季節性インフルエンザの感染力には違いがあるのでしょうか?

今回の研究はアメリカにおいて
新型コロナ以前の2017年から2020年と、
新型コロナ以降の2021年から22年にシーズンにおいて、
季節性インフルエンザの家族内感染のリスクを、
比較検証しているものです。

それによると、
新型コロナ流行以前の時期において、
季節性インフルエンザが同居家族に感染するリスクは、
20.1%であったのに対して、
新型コロナ流行以降の感染においては、
50.0%に増加していました。

つまり、家族内感染で見る限り、
季節性インフルエンザの感染力は、
新型コロナ流行以前よりも強くなっている、
ということを示唆する知見です。

これはクリニック周辺の感染状況でも感じることで、
今のインフルエンザの家族内感染のリスクは非常に高く、
ほぼ家族全員に漏れなく感染する、
というケースが多く認められています。

それでは、何故インフルエンザの感染力は増加しているのでしょうか?

数年流行がなかったことで、
個々の免疫が低下して感染の感受性が増加したこと、
ワクチンの株と実際に流行しているウイルスとの性質に違いがあり、
ワクチンの有効性も低下している可能性があることと、
新型コロナワクチン接種が優先された関係で、
インフルエンザワクチンの接種率が低下したことなどが、
原因として推測はされていますが、
現時点で確定的なことは言えないのが実際であるようです。

いずれにしても、
弱毒化した新型コロナとインフルエンザが、
周期的な流行を繰り返し、
毒性の強い変異株が発生すれば、
世界的なパンデミックが生じ得る、
という現状は当面はこのまま続くように思われます。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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SGLT2阻害剤のドライアイへの有効性 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
SGLT2阻害剤とドライアイ.jpg
JAMA Network Open誌に、
2022年9月22日ウェブ掲載された、
糖尿病治療薬のドライアイに対する有効性についての論文です。

糖尿病における目の異常と言えば、
眼底に出血などが起こる糖尿病性網膜症が有名です。
ただ、それ以外にも糖尿病に関連する目の異常は報告があり、
その1つが目の表面が乾燥して痛みなどを伴うドライアイです。

ドライアイは糖尿病患者の2割は罹患している、
というほど頻度の高い合併症です。
糖尿病でドライアイが生じるメカニズムは、
まだ不明の点が多いのですが、
涙の分泌を減少させ、角膜の炎症を来して、
それが悪循環になってドライアイが進行する、
というように説明されています。

それでは、
糖尿病自体の治療により、
ドライアイの予防も可能なのでしょうか?

近年評価の高い経口糖尿病治療薬に、
尿へのブドウ糖排泄を増加させる作用を持つ、
SGLT2阻害剤があり、
この薬は抗炎症作用を持つことが推測されているため、
ドライアイの予防にも、
有効な可能性が想定されます。

そこで今回の研究では台湾において、
医療データを後から解析する手法で、
新規にSGLT2阻害剤を開始した糖尿病の患者を、
別個の治療薬であるGLP1アナログを開始した患者と比較して、
ドライアイのリスクを検証しています。

新規にSGLT2阻害剤を開始した10038名の糖尿病患者を、
GLP1アナログを開始した1077名と比較したところ、
観察期間中にドライアイを発症するリスクは、
SGLT2阻害剤使用群の方が、
22%(95%CI:0.68から0.89)有意に低下していました。

これはまだ確定的な知見とは言えませんが、
ドライアイも糖尿病治療により予防可能、
という結果は非常に興味深く、
今後の検証の蓄積に期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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