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新規降圧剤バクスドロスタットの有効性(第2相臨床試験) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
バクスドロスタットの有効性.jpg
the New England Journal of Medicine誌に、
2021年2月2日掲載された、
新しいメカニズムの降圧剤の、
第2相の臨床試験結果をまとめた論文です。

高血圧の治療薬は、
カルシウム拮抗薬、ACE阻害剤もしくはARB、
サイアザイド系利尿薬のいずれかが第一選択で、
病態によりβブロッカーやαブロッカーが補助的に使用されます。
このうち1つの薬剤を充分量使用しても、
目標とする血圧(概ね130/80mmHg以下)に達しない場合には、
複数の薬が併用されることになります。
そして、3種類以上の薬を一緒に使用していても、
目標の血圧に達しない場合、
「治療抵抗性高血圧」と言われることが多いのです。

今回のバクスドロスタットは、
こうした治療抵抗性高血圧症の治療薬として開発されたもので、
アルドステロン合成酵素の選択的阻害剤です。

アルドステロンはステロイドホルモンの一種で、
身体の水分と塩分とを維持することがその役割ですが、
過剰に産生されることにより血圧上昇を来します。
従って、アルドステロンを抑制することは、
血圧の低下に繋がるのです。

ただ、アルドステロン合成の最終段階の酵素は、
CYP11B2ですが、
この酵素はステロイドホルモンの代表である、
コルチゾールの合成酵素であるCYP11B1と、
93%は同一の構造を持っています。

そのため、これまでにもアルドステロン合成酵素の阻害剤は、
開発はされていたのですが、
実際に使用してみると、
コルチゾールの合成も少なからず阻害してしまうので、
その弊害があって成功しなかったのです。

今回のバクスドロスタットは、
最新の創薬技術によってその酵素阻害の選択性を高め、
コルチゾール合成酵素の阻害作用は、
アルドステロン合成酵素の阻害作用の、
100分の1にすることに成功したと記載されています。

今回の第2相臨床試験においては、
治療抵抗性高血圧の患者さん248名に対して、
1日0.5㎎から2㎎の複数の用量でバクスドロソタットを上乗せ使用し、
その降圧効果と安全性を検証しています。
その結果、既に3剤以上の降圧剤を使用中の患者さんにおいて、
用量依存的な血圧低下作用が確認されました。
高用量の2㎎では、
偽薬と比較して平均20.3mmHgの血圧低下が認められています。

副作用と有害事象については、
最も危惧される高カリウム血症も、
その影響は比較的軽微で、
すぐに中止が必要と考えられる、
血液中のカリウム濃度が6.0nmol/L以上であったのは2名のみで、
薬剤の中止により、
カリウム濃度は速やかに低下が認められました。

治療抵抗性高血圧に有効かつ安全に使用可能な薬剤は、
世界的に必要性が高いと言って良く、
今後より長期の有効性と安全性のデータにも、
注視したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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