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高齢者の血液ナトリウム濃度と認知症リスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ナトリウム濃度と認知機能.jpg
Age and Aging誌に2023年1月掲載された、
血液のナトリウム濃度と認知機能との関連についての論文です。

血液のナトリウム濃度が低下する低ナトリウム血症は、
高齢者では最も頻度の高い電解質代謝異常として知られています。

高齢者ではナトリウムを維持するホルモンの働きが、
加齢により弱まることが多く、
水よりナトリウムがより喪失するようなタイプの、
脱水症を起こしやすいのです。
また癌や心不全などの病気も低ナトリウム血症の原因となりますし、
高血圧などの治療薬が、
その原因となることも多いのです。

高度の低ナトリウム血症は脳の浮腫を伴い、
そのため意識障害や痙攣などを起こすことがありますし、
多彩な神経症状や、
認知機能低下などを来すこともあります。

しかし、慢性に進行する比較的軽度のナトリウムの低下が、
認知機能などに与える影響については、
まだあまり明確なことが分かっていません。

今回の研究はオランダにおいて、
中高年の慢性疾患についての疫学データを二次利用したものですが、
平均年齢が63.6歳の一般住民8028名を、
中間値で10.7年観察し、
認知機能と血液のナトリウム濃度との関連を比較検証しています。

その結果、
血液のナトリウム濃度の低下と、
経過中の認知症のリスクとの間には、
明確な関連は認められませんでした。

その一方で軽度のものを含む低ナトリウム血症では、
集中力と精神運動機能の低下が認められました。

今回の検証では、
軽度の低ナトリウム血症と認知症との関連は、
明らかなものではありませんでしたが、
ナトリウムの低下が、
認知機能に一定の影響を与える可能性は示唆されていて、
高齢者の健康状態を考える上で、
血液のナトリウム濃度は、
重要な情報の1つであることは間違いがないようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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