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SGLT2阻害剤のドライアイへの有効性 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
SGLT2阻害剤とドライアイ.jpg
JAMA Network Open誌に、
2022年9月22日ウェブ掲載された、
糖尿病治療薬のドライアイに対する有効性についての論文です。

糖尿病における目の異常と言えば、
眼底に出血などが起こる糖尿病性網膜症が有名です。
ただ、それ以外にも糖尿病に関連する目の異常は報告があり、
その1つが目の表面が乾燥して痛みなどを伴うドライアイです。

ドライアイは糖尿病患者の2割は罹患している、
というほど頻度の高い合併症です。
糖尿病でドライアイが生じるメカニズムは、
まだ不明の点が多いのですが、
涙の分泌を減少させ、角膜の炎症を来して、
それが悪循環になってドライアイが進行する、
というように説明されています。

それでは、
糖尿病自体の治療により、
ドライアイの予防も可能なのでしょうか?

近年評価の高い経口糖尿病治療薬に、
尿へのブドウ糖排泄を増加させる作用を持つ、
SGLT2阻害剤があり、
この薬は抗炎症作用を持つことが推測されているため、
ドライアイの予防にも、
有効な可能性が想定されます。

そこで今回の研究では台湾において、
医療データを後から解析する手法で、
新規にSGLT2阻害剤を開始した糖尿病の患者を、
別個の治療薬であるGLP1アナログを開始した患者と比較して、
ドライアイのリスクを検証しています。

新規にSGLT2阻害剤を開始した10038名の糖尿病患者を、
GLP1アナログを開始した1077名と比較したところ、
観察期間中にドライアイを発症するリスクは、
SGLT2阻害剤使用群の方が、
22%(95%CI:0.68から0.89)有意に低下していました。

これはまだ確定的な知見とは言えませんが、
ドライアイも糖尿病治療により予防可能、
という結果は非常に興味深く、
今後の検証の蓄積に期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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