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季節と統合失調症リスク(2023年メタ解析) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
統合失調症と季節性.jpg
Schizophrenia Research誌に、
2023年1月20日ウェブ掲載された、
統合失調症の季節性についての論文です。

統合失調症は内因性の精神疾患の代表的な病気の1つですが、
1929年にこの病気は冬に生まれた人に発症することが多い、
という知見が発表されています。

冬は北半球の地域では紫外線の曝露量が減り、
皮膚で紫外線により産生されるビタミンDが不足するために、
胎児の神経発達に何等かの影響があるのではないか、
という意見や、
冬に多いウイルス感染が、
胎児に影響を与えるのでは、
という仮説もありますが、
実証されているものではありません。

その後もこうしたデータは複数ありますが、
個々にはそれほど精度の高いものではなく、
アップデートが必要であると考えられています。

今回の研究はこれまでの主だった臨床データを、
まとめて解析するシステマティックレビューとメタ解析という手法で、
この問題の再検証を行っているものです。

これまでの世界30か国の43の臨床研究に含まれる、
440039名の統合失調症患者のデータをまとめて解析したところ、
冬に生まれた人は、
統合失調症の罹患リスクが平均的な罹患率と比較して、
5%(95%CI:1.03から1.07)有意に増加していました。
この場合の「冬」というのは、
北半球では12月から2月を指し、
南半球では6月から8月を指しています。
一方で夏に生まれた人は、
統合失調症の罹患リスクが平均的な罹患率と比較して、
4%(95%CI:0.94から0.98)有意に低下していました。
北半球と南半球を別々にして解析しても、
統合失調症の罹患リスクが冬生まれに高く夏生まれに低い、
という傾向は同じように認められていました。

このように、
季節としての冬、
つまり気温が低く紫外線量が少ない時期に生まれた人では、
地域に関わらず統合失調症のリスクが高く、
季節としての夏、
つまり気温が高く紫外線量が多い時期に生まれた人では、
統合失調症のリスクが低いという傾向は、
今回のメタ解析でも明確に認められました。

ただ、そのリスクの差は小さく、
有意ではあるものの軽微な差と思われます。
その原因は不明ですが今回の検証からは、
紫外線量やビタミンDの影響が、
仮説としては想定されます。
今後統合失調症の原因が余すところなく解明されれば、
この季節性への答えも判明することになるかも知れません。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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