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肝細胞癌予防効果を持つ薬剤のメタ解析 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので、
診療は午前中で終わり、
午後は産業医面談などで都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
スタチンの肝細胞癌予防効果.jpg
Alimentary Pharmacology and Therapeutics誌に、
2023年1月10日ウェブ掲載された、
肝細胞癌の予防効果のある薬剤についての論文です。

肝細胞癌は予後の悪い癌の1つとして知られています。
そのため、有効な予防法があれば、
その有用性は非常に高いものと言えるのです。

これまでの疫学データにおいて、
高コレステロール血症の治療薬であるスタチン、
抗血小板剤として幅広く使用されているアスピリン、
糖尿病治療薬の基礎薬として使用されているメトホルミンの、
3種類の薬剤に、
肝細胞癌の予防効果を示唆する結果が報告されています。

それではこの3週類の薬剤のうち、
実際に最も予防効果が確実と言えるのは、
どの薬なのでしょうか?

今回の研究では、
これまでの3種の薬剤と肝細胞癌との関連を検証した、
精度の高い疫学データをまとめて解析する、
メタ解析の手法で、
この問題の検証を施行しています。

スタチンについては、
これまでの10の疫学研究に含まれる、
1774476名のデータをまとめて解析した結果として、
スタチンの使用は肝細胞癌のリスクを、
48%(95%CI:0.37から0.87)有意に低下させていました。
このスタチンによる肝細胞癌の予防効果は、
アスピリンやメトホルミンとの併用においても、
単独においても、肝硬変などの肝臓疾患の有無にも関わらず、
どのサブ解析でも有意に存在していました。

アスピリンについては、
これまでの11の疫学研究に含まれる、
2190285めいのデータをまとめて解析した結果として、
アスピリンの使用は肝細胞癌のリスクを、
52%(95%CI:0.27から0.87)有意に低下させていました。
ただ、この予防効果はメトホルミンやスタチンとの併用事例を補正すると、
有意なものではなくなっていました。

一方でメトホルミンについては、
これまでの3つの疫学研究に含まれる、
125458名のデータをまとめて解析した結果として、
肝細胞癌の有意なリスクの低下は確認されませんでした。

このように、
今回のメタ解析では、
これまでに複数の報告のあった3種の薬剤のうち、
併用に伴うサブ解析を含めて、
その予防効果が確認されたのは、
スタチンのみという結果でした。

スタチンを使用継続することで、
肝細胞癌の一定の予防効果のあることは、
これまでのデータの蓄積からして、
ほぼ間違いがないと言って良いようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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