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片頭痛予防における食物繊維の有効性 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
片頭痛に対する食物繊維の有効性.jpg
Frontiers in Nutrition誌に、
2023年1月4日掲載された、
食物繊維の片頭痛予防効果についての論文です。

片頭痛は慢性頭痛の代表です。
頭の片側のズキズキする拍動性の頭痛で、
嘔吐などの症状を伴い、
目の前にギザギザの光が走るような前兆を、
伴うことがあります。

その発作は短期間に繰り返す事が多く、
日常生活に大きな負担となります。

頭痛は脳血管の拡張により起こる、
という考え方が以前は主流でしたが、
現在では脳の表面の硬膜に分布する、
脳神経の三叉神経が刺激され、
一種の炎症を起こすことがその主な要因と考えられています。

その発作の治療には、
トリプタン製剤と呼ばれる、
セロトニン受容体作動薬が使用され、
神経刺激性のペプチドである、
CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)への抗体が、
注射薬として使用開始されています。

ただ、いずれの薬も非常に高価で、
発作を完全に抑える、というほどの効果はありません。

片頭痛の発症には、
食事などの環境要因の関与も大きいと考えられています。

たとえば、2021年6月のBritish Medical Journal誌に掲載された研究では、
多価不飽和脂肪酸のDHAやEPAを多く摂り、
リノール酸を減らした食事をすると、
片頭痛発作が抑えられるとする結果が報告されています。

片頭痛と、
過敏性腸症候群などの自律神経の関連する腹部症状との間には、
関係が深いことが知られていて、
これは脳と腸との自律神経系を介した交通が、
影響していると考えられています。

それでは、
腸内細菌叢を改善して腸内環境を整える作用のある、
食物繊維を多く摂ることにより、
片頭痛を予防することは出来るのでしょうか?

今回の研究はアメリカで施行された、
国民健康栄養調査のデータを活用して、
12710名の一般住民の食物繊維の摂取量を推計し、
激しい頭痛や片頭痛のリスクとの関連を検証しているものです。

その結果、
食物繊維の摂取量が多いほど、
激しい頭痛や片頭痛のリスクは低下していて、
食物繊維の摂取量を5つに分けた時、
最も少ない群と比較した時最も多い群では、
激しい頭痛や片頭痛のリスクは、
26%(95%CI:0.61から0.90)有意に低下していました。
ここから、
毎日の食物繊維の量を10グラム増加させることにより、
激しい頭痛や片頭痛のリスクが11%低下すると推計されました。

ただ、条件を変えてサブ解析を行うと、
人種によっては食物繊維と頭痛との関連が認められなかったり、
過体重から軽度の肥満の人では関連が認められないなど、
一部の条件では食物繊維の頭痛予防効果は認められませんでした。

今回のデータのみで、
食物繊維に頭痛の予防効果があるとは言えませんが、
これまでの多くの報告から見て、
一般に健康に良いとされる食習慣に、
習慣性頭痛の予防効果のあることは、
事実である可能性が高いと思われます。

食習慣が健康の決め手の1つであることは、
間違いのない事実であるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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