三谷幸喜「笑の大学」(2023年再演版) [演劇]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は土曜日で午前中は石田医師が、
午後2時以降は石原が外来を担当する予定です。
土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
1996年に青山円形劇場で初演され、
初演時から名作の誉が高く、
1998年にパルコ劇場で同一キャストで再演された「笑の大学」が、
キャスト一新して装いも新たに再演されています。
初演は西村雅彦(上演当時の芸名による)さんと近藤芳正さんの2人芝居、
今回は内野聖陽さんと瀬戸康史さんの2人芝居で、
初演は山田和也さんの演出でしたが、
今回は三谷幸喜さん自身が演出に当たっています。
これは初演と再演の両方を観ています。
初演は「巌流島」という作品とほぼ同時上演で、
「巌流島」の方がパルコ劇場で、
「笑の大学」が青山円形劇場だったのですね。
確か両方とも戯曲がギリギリまで完成せず、
「巌流島」は初日を遅らせての上演となり、
キャストも陣内孝則さんが降板してしまったりして、
相当のドタバタになったのですね。
それで、「巌流島」はチケットを取っていたのですが、
「笑の大学」は「どうせ間に合わないのじゃないかしら」と思って、
当初は行く予定がなかったのですが、
幕が開いてみると大好評で、
当日券に並んで、見切りに近い席で鑑賞したことを覚えています。
これは確かに素晴らしかったのですね。
三谷さんがちょっと井上ひさしさんに、
寄せていた時期だったと思うのですが、
如何にも井上さんが描きそうな台本を、
井上さんの数段上を行く完成度で、
見事な2人芝居に仕立てて見せたのですね。
戦時体制批判のように見えながら、
勿論そうしたものでもあるのですが、
それよりもっと大きな、
藝術家の、そして喜劇作家の矜持のようなものを、
ストレートに描いている点に、
素直に感銘を受けました。
基本西村雅彦さんと近藤芳正さんへの当て書きなのですが、
2人の芝居もそれぞれの代表作と言って過言でない、
非常に見ごたえのあるものでした。
その後映画にもなるなどして、
三谷さんの代表作としての評価を高めたことは、
言うまでもありません。
それで今回の満を持した感のある再演ですが、
改めてこの作品の質の高さを、
再認識させる上演にはなっていたと思います。
役者に関しては微妙なところで、
前半はどうしても、初演のコンビの印象が脳裏に焼き付いていて、
今回のキャストの2人も、
明らかに台詞の言い回しや間合いなど、
影響は受けているんですね。
ああこれは西村さんだよね、
ここは近藤さんが良かったよね、
というように思ってしまいました。
ただ、後半のシリアスになる部分は、
今回のキャストの方が映像経験などは豊富なので、
よりリアルに場面を感じられました。
瀬戸さんは確かに青年座付き作家のように見えますし、
内野さんも検閲官みたいに見えますよね。
ここは今回のキャストの強みだと思いました。
冷静に見ると初演のキャストは、
「お馴染みの2人の2人芝居」のようではあっても、
その役柄をリアルに感じさせる、
というようには見えなかったからです。
ただ、検閲官が後半で一度恫喝するところがあるでしょ。
あそこはもう一段凄味が欲しかったと思いました。
この作品の弱点は、
ラストがそのままでは終われない、
という部分だと思うのですね。
青年座付き作家が去って行って、
検閲官が1人残されるでしょ。
ここでちょっと小芝居がないと、
終われないですよね。
つかこうへいの「熱海殺人事件」と一緒で、
戯曲にきちんとした終わりがないので、
それを演出や役者が埋めないといけない、
というような構造になっているんですね。
今回で言うと、
検閲官は戯曲を読み直して笑いだして、
それからちょっと切ないような表情をして、
それでラストになるのですが、
これで「笑いとペーソス」ということになるのかしら。
こうした台詞のない小芝居をしないと、
終われないというのは如何なものか、
というように思うんですね。
今回の演出では、オープニングも、
1人で部屋に入って来た座付き作家が、
こちらも少し時間を使って小芝居をしていて、
おそらくラストとのバランスを取ったのだと思うのですが、
こういう勿体ぶった感じの演出が、
僕はあまり好きではありません。
本来もっとスパッと始めて、
スパッと終われないといけない筈で、
それが出来ないということは、
戯曲自体に瑕疵がある、ということではないでしょうか?
そんな訳でこの戯曲の素晴らしさを、
改めて感じさせる上演であった一方で、
まだこなれていない部分も散見される上演でもありました。
同一キャストでの、
練り上げられた再演に期待したいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は土曜日で午前中は石田医師が、
午後2時以降は石原が外来を担当する予定です。
土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
1996年に青山円形劇場で初演され、
初演時から名作の誉が高く、
1998年にパルコ劇場で同一キャストで再演された「笑の大学」が、
キャスト一新して装いも新たに再演されています。
初演は西村雅彦(上演当時の芸名による)さんと近藤芳正さんの2人芝居、
今回は内野聖陽さんと瀬戸康史さんの2人芝居で、
初演は山田和也さんの演出でしたが、
今回は三谷幸喜さん自身が演出に当たっています。
これは初演と再演の両方を観ています。
初演は「巌流島」という作品とほぼ同時上演で、
「巌流島」の方がパルコ劇場で、
「笑の大学」が青山円形劇場だったのですね。
確か両方とも戯曲がギリギリまで完成せず、
「巌流島」は初日を遅らせての上演となり、
キャストも陣内孝則さんが降板してしまったりして、
相当のドタバタになったのですね。
それで、「巌流島」はチケットを取っていたのですが、
「笑の大学」は「どうせ間に合わないのじゃないかしら」と思って、
当初は行く予定がなかったのですが、
幕が開いてみると大好評で、
当日券に並んで、見切りに近い席で鑑賞したことを覚えています。
これは確かに素晴らしかったのですね。
三谷さんがちょっと井上ひさしさんに、
寄せていた時期だったと思うのですが、
如何にも井上さんが描きそうな台本を、
井上さんの数段上を行く完成度で、
見事な2人芝居に仕立てて見せたのですね。
戦時体制批判のように見えながら、
勿論そうしたものでもあるのですが、
それよりもっと大きな、
藝術家の、そして喜劇作家の矜持のようなものを、
ストレートに描いている点に、
素直に感銘を受けました。
基本西村雅彦さんと近藤芳正さんへの当て書きなのですが、
2人の芝居もそれぞれの代表作と言って過言でない、
非常に見ごたえのあるものでした。
その後映画にもなるなどして、
三谷さんの代表作としての評価を高めたことは、
言うまでもありません。
それで今回の満を持した感のある再演ですが、
改めてこの作品の質の高さを、
再認識させる上演にはなっていたと思います。
役者に関しては微妙なところで、
前半はどうしても、初演のコンビの印象が脳裏に焼き付いていて、
今回のキャストの2人も、
明らかに台詞の言い回しや間合いなど、
影響は受けているんですね。
ああこれは西村さんだよね、
ここは近藤さんが良かったよね、
というように思ってしまいました。
ただ、後半のシリアスになる部分は、
今回のキャストの方が映像経験などは豊富なので、
よりリアルに場面を感じられました。
瀬戸さんは確かに青年座付き作家のように見えますし、
内野さんも検閲官みたいに見えますよね。
ここは今回のキャストの強みだと思いました。
冷静に見ると初演のキャストは、
「お馴染みの2人の2人芝居」のようではあっても、
その役柄をリアルに感じさせる、
というようには見えなかったからです。
ただ、検閲官が後半で一度恫喝するところがあるでしょ。
あそこはもう一段凄味が欲しかったと思いました。
この作品の弱点は、
ラストがそのままでは終われない、
という部分だと思うのですね。
青年座付き作家が去って行って、
検閲官が1人残されるでしょ。
ここでちょっと小芝居がないと、
終われないですよね。
つかこうへいの「熱海殺人事件」と一緒で、
戯曲にきちんとした終わりがないので、
それを演出や役者が埋めないといけない、
というような構造になっているんですね。
今回で言うと、
検閲官は戯曲を読み直して笑いだして、
それからちょっと切ないような表情をして、
それでラストになるのですが、
これで「笑いとペーソス」ということになるのかしら。
こうした台詞のない小芝居をしないと、
終われないというのは如何なものか、
というように思うんですね。
今回の演出では、オープニングも、
1人で部屋に入って来た座付き作家が、
こちらも少し時間を使って小芝居をしていて、
おそらくラストとのバランスを取ったのだと思うのですが、
こういう勿体ぶった感じの演出が、
僕はあまり好きではありません。
本来もっとスパッと始めて、
スパッと終われないといけない筈で、
それが出来ないということは、
戯曲自体に瑕疵がある、ということではないでしょうか?
そんな訳でこの戯曲の素晴らしさを、
改めて感じさせる上演であった一方で、
まだこなれていない部分も散見される上演でもありました。
同一キャストでの、
練り上げられた再演に期待したいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
2023-02-18 06:45
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