「おちょこの傘持つメリー・ポピンズ」(唐組・第68回公演) [演劇]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
唐組の春公演が新宿の花園神社で上演されています。
大雨の日に出掛けました。
演目は「おちょこの傘持つメリー・ポピンズ」、
これは1976年に状況劇場で初演された長い1幕劇で、
状況劇場の作品としては、
家庭劇に近いような味わいの作品です。
舞台も傘屋から動きませんし、
内容も一夜の出来事だけを描いていて、
幻想的な場面や時間が移動するような仕掛けもありません。
キャストも傘屋のおちょこと檜垣という男、
そしてヒロインの3人がメインで展開されます。
この作品は1980年代に一度状況劇場で再演され、
その時は石橋蓮司さんが客演していました。
その芝居は実際に観ています。
今回の上演は唐組としては初めてのもので、
おちょこを久保井研さん、ヒロインを藤井由紀さん、
檜垣を稲荷卓央さんという座組でした。
ほぼ2時間の1幕劇ですが、
今回は途中1時間くらいのところで20分の休憩を入れていました。
前回の上演時には休憩はなかったと思います。
ただ、矢張りテントで1幕2時間というのはかなりきついので、
この判断は正解だったという気はします。
今回も唐戯曲の何たるかを知り尽くした、
久保井さんとメインキャストの演技と演出が的確で素晴らしく、
唐組らしい「おちょこ」になっていたと思います。
初演がどうだったのかは分からないのですが、
1980年代の再演では、
ラストは李礼仙さんが傘を持って、
テントの外の空に宙乗りするのですね。
ただ、戯曲はおちょこと瀕死の檜垣が空を飛ぶ、
というものなので、
それをヒロインの宙乗りに変えてしまうのは、
如何なものかな、という気はしました。
今回は戯曲通りにおちょこがクレーンからのワイヤーで、
宙乗りをするラストでしたから、
これは良かったと思いました。
ただ、今回の芝居では、
現実と狂気とを往還する、
ヒロインの感情のうねりがポイントなのですが、
藤井由紀さんの芝居には、
そうしたパッションは希薄なので、
正気の部分と狂気の部分がブツ切れで交互に出て来る、
というような感じがあって、
物語がスムースに流れてゆかない、
というきらいはありました。
前回の「ビニールの城」は絶品で、
「さすらいのジェニー」も素晴らしかったのですが、
藤井さんは緑魔子さんの役柄にはピタリとフィットするのですが、
李礼仙さんの、
特にパッションと狂気が前面に出たような芝居は、
基本的に合わないのかも知れません。
また、前回のおちょこは唐先生でしたから、
今回久保井さんが演じるのは妥当なラインではあるのですが、
そもそも純朴な少年に近い役柄なので、
こちらもちょっと無理があるなあ、
というようには感じました。
初演の録音などを聞くと、
基本的に地味な芝居に、
かなり強烈な音響や演技を付けて、
強引にメリハリをつけているような感じがあるのですね。
今回の上演はそれをもっと戯曲に即した形で、
自然な演技と演出でリニューアルしているのですが、
もともとヒロインの感情のうねりに、
かなり強引なところがあるので、
過剰な演出をしないと、
却って不自然に見えてしまうという感じがありました。
そういうところが唐先生の芝居は難しいのですね。
ただ、久保井さんも勿論そうしたことは分かった上で、
今回はこれまでとは別の形の「おちょこ」を、
見せてくれたのではないかと思います。
いずれにしても、
唐戯曲の神髄を緻密な手さばきで再構成してくれる、
唐組の芝居はいつも刺激的で素晴らしく、
今後も楽しみにテントには通いたいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
唐組の春公演が新宿の花園神社で上演されています。
大雨の日に出掛けました。
演目は「おちょこの傘持つメリー・ポピンズ」、
これは1976年に状況劇場で初演された長い1幕劇で、
状況劇場の作品としては、
家庭劇に近いような味わいの作品です。
舞台も傘屋から動きませんし、
内容も一夜の出来事だけを描いていて、
幻想的な場面や時間が移動するような仕掛けもありません。
キャストも傘屋のおちょこと檜垣という男、
そしてヒロインの3人がメインで展開されます。
この作品は1980年代に一度状況劇場で再演され、
その時は石橋蓮司さんが客演していました。
その芝居は実際に観ています。
今回の上演は唐組としては初めてのもので、
おちょこを久保井研さん、ヒロインを藤井由紀さん、
檜垣を稲荷卓央さんという座組でした。
ほぼ2時間の1幕劇ですが、
今回は途中1時間くらいのところで20分の休憩を入れていました。
前回の上演時には休憩はなかったと思います。
ただ、矢張りテントで1幕2時間というのはかなりきついので、
この判断は正解だったという気はします。
今回も唐戯曲の何たるかを知り尽くした、
久保井さんとメインキャストの演技と演出が的確で素晴らしく、
唐組らしい「おちょこ」になっていたと思います。
初演がどうだったのかは分からないのですが、
1980年代の再演では、
ラストは李礼仙さんが傘を持って、
テントの外の空に宙乗りするのですね。
ただ、戯曲はおちょこと瀕死の檜垣が空を飛ぶ、
というものなので、
それをヒロインの宙乗りに変えてしまうのは、
如何なものかな、という気はしました。
今回は戯曲通りにおちょこがクレーンからのワイヤーで、
宙乗りをするラストでしたから、
これは良かったと思いました。
ただ、今回の芝居では、
現実と狂気とを往還する、
ヒロインの感情のうねりがポイントなのですが、
藤井由紀さんの芝居には、
そうしたパッションは希薄なので、
正気の部分と狂気の部分がブツ切れで交互に出て来る、
というような感じがあって、
物語がスムースに流れてゆかない、
というきらいはありました。
前回の「ビニールの城」は絶品で、
「さすらいのジェニー」も素晴らしかったのですが、
藤井さんは緑魔子さんの役柄にはピタリとフィットするのですが、
李礼仙さんの、
特にパッションと狂気が前面に出たような芝居は、
基本的に合わないのかも知れません。
また、前回のおちょこは唐先生でしたから、
今回久保井さんが演じるのは妥当なラインではあるのですが、
そもそも純朴な少年に近い役柄なので、
こちらもちょっと無理があるなあ、
というようには感じました。
初演の録音などを聞くと、
基本的に地味な芝居に、
かなり強烈な音響や演技を付けて、
強引にメリハリをつけているような感じがあるのですね。
今回の上演はそれをもっと戯曲に即した形で、
自然な演技と演出でリニューアルしているのですが、
もともとヒロインの感情のうねりに、
かなり強引なところがあるので、
過剰な演出をしないと、
却って不自然に見えてしまうという感じがありました。
そういうところが唐先生の芝居は難しいのですね。
ただ、久保井さんも勿論そうしたことは分かった上で、
今回はこれまでとは別の形の「おちょこ」を、
見せてくれたのではないかと思います。
いずれにしても、
唐戯曲の神髄を緻密な手さばきで再構成してくれる、
唐組の芝居はいつも刺激的で素晴らしく、
今後も楽しみにテントには通いたいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。