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活性型ビタミンDの糖尿病予防効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
活性型ビタミンDの糖尿病予防効果.jpg
British Medical Journal誌に、
2022年5月25日ウェブ掲載された、
活性型ビタミンDの糖尿病予防効果についての論文です。
産業医科大学などの日本の研究グループによる研究です。

2型糖尿病を予防するという試みは多く行われていますが、
体重コントロールや食事、運動などの生活改善以外に、
特定の薬剤やサプリメントなどの有効性が示されたことは、
これまでに殆どありません。

ビタミンDは骨の健康な形成と維持に、
必要不可欠なステロイドホルモンの一種ですが、
それ以上に抗炎症作用や免疫の調整作用など、
多くの身体に不可欠な働きを持っています。
観察研究においては、
血液のビタミンD濃度が低いと、
インスリン抵抗性が増し、
それが糖尿病の発症リスクに繋がっているのではないか、
ということを示唆する所見があります。

それでは、
ビタミンDを使用することにより、
糖尿病の予防効果があるのでしょうか?

今回の研究では糖尿病にはなっていない耐糖能異常のある、
30歳以上の1256名をくじ引きで2つの群に分けると、
一方は活性型ビタミンD製剤であるエルデカルシドールを0.75μg使用し、
もう一方は偽薬を使用して、
3年間の経過観察を行っています。
対象者の平均年齢は61.3歳です。

エルデカルシドールは日本では骨粗鬆症などに対して、
非常にポピュラーに使用されている薬剤なので、
その薬に糖尿病の予防効果があるとすれば、
臨床的には非常に意味の大きなことであるのです。

その結果、
エルデカルシドール群630名中79名と、
偽薬群626名中89名が、
観察期間中に糖尿病を発症しました。
この差は有意なものではありませんでしたが、
二次解析として、
肥満度など関連する因子を補正して多変量解析を施行すると、
エルデカルシドールの使用により、
糖尿病の発症は31%(95%CI:0.51から0.95)
有意に抑制されていました。
この効果は特にインスリン濃度が低い群において、
より顕著に認められました。

また副次的な解析として、
エルデカルシドール群では、
脊椎と大腿骨頸部の骨塩量が、
偽薬と比較して有意に増加していました。

このように、
主解析では明確な差はありませんでしたが、
活性型ビタミンDの使用により、
特にインスリン濃度の低い耐糖能異常者において、
糖尿病の予防効果が示唆され、
またその骨塩量保持の有効性も確認されました。

ビタミンDは海外ではサプリメントの扱いなので、
活性型ビタミンDを使用したこうした臨床試験はあまり行われておらず、
エルデカルシドール(商品名エディロールなど)は、
日本では広く処方されている薬剤でありながら、
臨床データが乏しいという点がありましたから、
今回の臨床試験はそれを補完するものとして、
臨床的には意義のあるものではないかと思います。

それほどクリアな結果ではないのが残念ですが、
今後日本国外においても、
こうした臨床試験が行われ、
多角的にこうした試みが検証されることを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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