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インフルエンザワクチンと心血管疾患リスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療となります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
インフルエンザワクチンと心血管疾患リスク.jpg
JAMA Network Open誌に、
2022年4月29日ウェブ掲載された、
季節性インフルエンザワクチンの接種と、
心血管疾患リスクとの関連についての論文です。

新型コロナの蔭に隠れている感じがありますが、
季節性インフルエンザワクチンの接種が、
毎年行われています。

今のワクチンはスプリットワクチンと呼ばれる不活化ワクチンで、
感染そのものを予防する効果は、
それほど高いものではないのですが、
集団免疫と重症化予防の観点からは、
一定の有効性があるとする評価が一般的です。

ただ、この数年は新型コロナの流行により、
その感染は非常に低いレベルで推移しているので、
それでも毎年の接種が必要なのか、
と言う点については、
こうした状況が今後も続くのであれば、
議論の必要はあるように思います。

最近指摘されることの多い知見として、
インフルエンザ感染と急性冠症候群などの心血管疾患との間には、
一定の関連があり、
インフルエンザ感染の予防により、
心血管疾患のリスクも低減出来るのでは、
という考え方があります。

今回の研究は2020年から2021年という、
最近の期間に施行された臨床試験のデータを、
まとめて解析したメタ解析の手法により、
この問題の検証を行っているものです。

その2年間に発表された、6つの介入試験に含まれる、
トータル9001名の臨床データをまとめて解析したところ、
インフルエンザワクチンの接種は、
心血管疾患の発症リスクを、
34%(95%CI:0.53から0.83)有意に低下させていました。
特に急性冠症候群に絞ってみると、
そのリスクを45%(95%CI:0.41から0.75)有意に低下させていました。

このように、
インフルエンザワクチンによる免疫刺激は、
その後の心血管疾患のリスクに影響を与えている可能性があり、
そのメカニズムや因果関係を含めて、
今後より詳細な検証する必要がありそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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