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新型コロナの経過と抗原検査の陽性率比較 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

本日は祝日でクリニックは休診です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
COVID-19のPCRと抗原比較.jpg
JAMA Internal Medicine誌に、
2022年4月29日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルス感染症診断に使用されている、
抗原検査キットの精度についての論文です。

新型コロナウイルス感染症の診断のスタンダードは、
RT-PCR検査であることは間違いがありませんが、
ウイルス抗原の一部に反応する迅速抗原検査キットは、
5から15分程度でその場で結果の判明するという簡便さから、
医療機関のみならず、自宅などでも広く使用されています。

現状厚労省も、
抗原検査のみでの診断を認めていますし、
医療機関においても、
流行状況などからその可能性が高い時には、
抗原検査のみで診断して届け出をしています。

ただ、RT-PCR検査はウイルス遺伝子の一部を、
増幅して検出するので、
ごく微量の遺伝子断片でも診断が可能ですが、
抗原検査は一定のウイルス量がないと、
反応が検出されないという特徴があります。

つまり、流行している地域で特徴的な症状があって、
抗原検査で明確に陽性反応があれば、
新型コロナウイルス感染症に罹患していると言って、
ほぼ問題はありませんが、
ぼんやりと陽性ラインが見えるような弱陽性は、
他のウイルス抗原による偽陽性も否定は出来ませんし、
軽症の感染や無症状の感染の場合、
検体の採取が適切でない場合、
感染の時期によって局所のウイルス量が少ない場合などでは、
結果が陰性であっても感染の可能性は否定は出来ないのです。

こうした内容は医学的にはほぼ常識として、
捉えられていますが、
その根拠となるデータはパンデミックの初期に取られたもので、
今とは検査キット自体の性能も違っていますし、
ワクチンの接種や無症状感染などとの関連も検討されていません。

従って、
今一般に使用されているような抗原検査キットを使用し、
実際にあり得る状況でRT-PCR検査と比較したデータが、
一般臨床においては重要なのです。

今回の検証はアメリカにおいて、
新型コロナウイルス感染症とRT-PCR検査で診断され、
15日間連続して抗原迅速検査を施行し、
経過中に1回以上の鼻腔RT-PCR検査と、
ウイルス培養検査を施行したトータル225名のデータを解析したもので、
3044件の抗原迅速試験と、642件のRT-PCR検査が施行されています。

その結果はこちらをご覧下さい。
COVID-19のPCRと抗原比較の図.jpg
図の黒いラインはRT-PCR検査の陽性率で、
オレンジのラインが抗原検査の陽性率、
青いラインがウイルス培養の陽性率を示しています。

トータルの抗原迅速検査の感度は、
50%(95%CI:45から55%)と算出されます。

発症日の0日で見ると、
抗原迅速試験の陽性率は30%程度しかありません。
それが症状出現数日後には、
RT-PCR検査とかなり近い陽性率になっています。
そのピークは症状出現0日として4日目で、
陽性率は77%(95%CI:69 から83%)に達しています。

つまり、抗原検査の結果が信頼出来るのは、
症状出現後2日目から5日目くらいまでで、
それ以外の時期においては、
陰性であっても感染を否定する根拠にはなり得ない、
ということが分かります。

ここから病初期5日以内に限って、
1から2日間隔で2回の抗原検査を行うことは、
その感度を高めるために最も有効性が高い、
と言うことが出来ます。
この場合2回とも陰性であれば、
感染はかなり否定的だと言うことが出来るからです。

それでは次にこちらをご覧下さい。
COVID-19の抗原陽性率と症状の有無の図.jpg
この図のグレイのラインは有症状の感染の場合の、
抗原検査陽性率を示し、
オレンジのラインは無症状感染の場合の、
陽性率の推移を示しています。
有症状感染と比較して、
無症状感染では抗原検査の感度はより低く、
無症状の感染を抗原検査のみで否定することは、
殆ど無意味に近いということが分かります。

最後にこちらをご覧下さい。
COVID-19の抗原陽性率とワクチン接種.jpg
こちらはワクチン接種者と未接種者のデータです。

黒いラインはワクチン未接種者の抗原検査陽性率を示し、
青いラインはワクチン接種者のそれを示しています。
ワクチン接種者は未接種者と比較して、
抗原検査の陽性率が低いことが分かります。

このように、
抗原検査には一定の有効性があり、
診断における重要なツールの1つですが、
その感度はRT-PCR検査よりは低く、
その感度が高いのは症状出現数日後から数日くらいの時期のみなので、
発症初期に数回の検査を数日間隔で繰り返すなど、
検査のプロトコールを工夫し、
かつ無症状感染には使用しないなど、
条件付きの対応が必要であるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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