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甲状腺ホルモン剤のジェネリックによる違い [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
甲状腺ホルモンのジェネリックによる違い.png
JAMA Internal Medicine誌に2022年2月28日ウェブ掲載された、
甲状腺ホルモン製剤をジェネリックに切り替えることのリスクについての論文です。

ジェネリック薬品という言葉も、
今ではとてもポピュラーになりました。

ジェネリック薬品と言うのは、
パテントの切れた医薬品を、
自由に他のメーカーも製造販売出来るようにしたもので、
自由に、と言っても当該の国の認可がないと駄目ですが、
新薬は当然開発費などが上乗せされているので、
非常に高額に設定されていますから、
概ねその値段はかなり引き下げられ、
医療費削減の意味でもメリットがあり、
かつ低所得層や発展途上国の患者さんにも、
安価に薬剤を供給するための制度として、
世界的に広く普及しています。

その価格は自由競争で決められることが、
世界的には多いのですが、
日本には薬価制度というものがあって、
国が薬の値段を決めているので、
ジェネリック医薬品の価格も国が決めていて、
同じ性能と品質を持つ商品であるという建前なのに、
国が別の価格を付けているという、
ちょっと歪な仕組みになっています。

日本の場合医療費削減のための帳尻合わせとして、
ジェネリック薬品と薬価制度があるという側面が大きく、
それが必ずしも医療全体の将来であるとか、
バランスであるとかと言った面に配慮していない、と言う点が、
大きな問題であるという気がします。

今多くの一般的な医薬品の流通が、
非常に歪で不安定な状態となり、
昨日まで普通に使える薬が今日は使えない、
という異常な状態が生まれているのですが、
その原因の1つとしてジェネリック制度の歪な実態があるのです。

少し話が反れました。

ジェネリック薬品はその元になる先発薬品と、
基本的には同じ薬効を持っている建前です。

ただ、原材料は同じでも添加物などには差がありますし、
製造工程にも違いはあります。
また本当に同じ成分がどのジェネリック薬品でも、
同じ分量含まれているのか、と言う点についても、
現状は確認する方法はなく、
使用する患者さんや処方する医師、調剤する薬剤師は、
メーカーを信頼するしかない、というのが現状です。

このことは海外でも問題視はされていて、
ジェネリック薬品の種類による薬効の差が、
しばしば議論となっています。

今回の論文で取り上げられているのは、
甲状腺機能低下症で使用される甲状腺ホルモン製剤(T4製剤)ですが、
その吸収により薬効が異なるという微妙な側面があり、
そのため2014年のアメリカ甲状腺学会のガイドラインにおいては、
甲状腺ホルモン剤は原則として、
1つのメーカーの製品を持続的に使用することが望ましい、
という記載がされています。

今回の研究はその妥当性を検証したもので、
アメリカの医療保険のデータベースを活用して、
種々のジェネリック医薬品に、
甲状腺ホルモン剤を途中で変更した場合と、
1つのメーカーの製品を使い続けた場合において、
TSHの数値に変化が見られるかどうかを比較検証したものです。

その結果ジェネリック薬品への変更による、
明確な甲状腺機能への影響は確認されませんでした。

ただ、これをもって全てのジェネリック薬品の品質が同一、
ということは言い切れませんし、
今後は日本においても、
こうした検証が継続的に施行されることを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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