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北村想「奇蹟 miracle one-way ticket」 [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
奇蹟.jpg
北村想さんの新作が、
今三軒茶屋の世田谷パブリックシアターで上演されています、

北村想さんと演出の寺十吾さんのコラボは、
2013年の「グッドバイ」から中断はありながらも続いていて、
今回が多分8回目になるかど思います。
僕は初回の「グットバイ」にとても感銘を受けて、
そのうちの7作品は観ています。

当初は古典文学作品を、
北村さんの視点で読み直す、
という感じのシリーズだったのですが、
途中からはもうあまり原作とは関連がなくなり、
今回は純然たる新作のオリジナルになっています。

今回は井上芳雄さんが主演で、
ホームズばりの名探偵を演じ、
そのワトソン役に鈴木浩介さん、
井上小百合さん、瀧内公美さん、大谷亮介さんなどが脇を固めます。

これは昔の「碧い彗星の一夜」みたいな感じなんですね。

レトロな探偵物語がファンタジー的な色彩も加えて、
何処まで真面目で何処まで不真面目なのか、
俄に判断しがたいような展開になります。

登場人物は平気で楽屋落ちや、
勝手に作者や観客の立場に立ったような台詞を口にしますし、
探偵と犯人の対決になるのかと思いの外、
犯人が登場してものんびり話をするだけという脱力的な展開になります。
ラストには急に意外な設定が語られるものの、
すぐに「嘘です」とひっくり返されたりもします。

昔はこうした脱力系の展開に、
随分腹が立ったりもしたのですが、
今はそれこそが北村さんの個性だと思っているので、
決して面白いとは思えないのですが、
これはこれでありかな、というようには感じています。

今回はただ、テーマになっている「バチカンの女」という蘊蓄と、
奇蹟の裏で悲劇的な運命を辿る女性の話が、
少し弱いという感じはありました。
大好きな瀧内公美さんの出番も、
かなり少ないのが残念でした。

そんな訳でこのシリーズとしては、
少し落ちる出来かなというようには思うのですが、
寺十さんの演出は円熟味を増して素晴らしいですし、
北村さんの牧歌的な世界に、
自然に身を委ねることが出来る人には、
他の芝居では得難い経験を与えてくれる作品だと思います。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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