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小児の市中肺炎に対する抗生物質の使用法と有効性 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
アモキシシリンの使用量と有効性.jpg
JAMA誌に2021年11月2日ウェブ掲載された、
抗生物質の適正使用量と使用期間についての論文です。

5歳未満の小児の肺炎は、
細菌感染が原因であるのは全体の3分の1とされています。
ただ、症状や検査から細菌性かそれ以外であるのかを、
正確に診断することは実際には困難で、
そのため多くの事例で抗菌剤による治療が施行されます。

第一選択の薬剤はペニシリン系の抗生物質です。
アモキシシリンはその代表的な薬剤の1つです。
入院が必要な小児の肺炎事例においては、
退院後も一定期間経口で抗生物質が使用されるのが通常です。

ただ、その使用量や使用期間については、
これまでの臨床試験においてもまちまちで一定していません。

そこで今回の臨床試験においては、
イギリスとアイルランドの28の病院において、
市中肺炎に罹患して入院した、
生後6ヶ月を超え体重が6から24キロまでの小児、
トータル814名を4つの群に分け、
退院後の抗生物質アモキシシリンの量と期間を、
量については体重1キロ当たり35から50mgの低用量と、
70から90mgの高用量、
使用期間については3日と7日がそれぞれ比較されています。

その結果、
量については低用量でも高用量でも、
使用期間については3日でも7日でも、
登録後28日以内の抗菌剤再治療率には、
有意な差は認められませんでした。

つまり、肺炎退院後のアモキシシリンによる抗菌剤治療は、
日本でも使用されているレベルの体重35から50mgの用量で、
期間は3日で問題ないと考えて良いようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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「ハロウィン KILLS」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は祝日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
ホロウィンキル.jpg
1978年に製作され日本では1979年に公開された、
ジョン・カーペンター監督の出世作が、
40年の時を経て新作の続編として2018年に製作され、
その続編が今ロードショー公開されています。
どうやら3部作のようで、
正直あまりすっきりしたラストにはなっていません。

オリジナルは日本での封切りの時に観ています。
殺人鬼がずっとマスクを着けていて、
一言も喋らず、最後まで正体すら不明のままです。
ホラーですがショッカー演出のみで、
血が出るような描写もほぼ皆無という斬新な作品でしたが、
当時はもっとひねった筋立てが好きだったので、
正直物足りなく感じました。

その後すぐに続編の「ハロウィン2」が作られ、
「スターウォーズ帝国の逆襲」の影響か、
主人公と殺人鬼に血のつながりがある、
という設定が付加されました。
せっかく「不条理で意味不明の恐怖」という斬新さが、
それによって台無しになったのですが、
この映画はショッカー演出の技巧が冴えていて、
当時として脅かし演出の頂点を極めた、
といって過言ではないホラーでした。
その後「ハロウィン3」が作られましたが、
こちらは前2作の設定とは無関係で、
ハロウィンに起こる奇怪な事件、という趣向のみを引き継いだ、
当時としてはニューウェイブのホラー映画でした。
意味不明なところが多いのですが、
僕は割と気に入っています。
その後リメイク的な映画や他のホラーとのコラボなどがあり、
かなり時間をおいて2018年作に至ります。

2018年の「ハロウィン」は終身刑のオリジナルの殺人鬼が、
40年後のハロウィンの夜に再び脱走して…
というお話で正調の続編となっていて、
主役はオリジナルで殺人鬼と対決した、
ジェイミー・リー・カーティスです。

内容は結局はオリジナルとほぼほぼ同じ話なのですが、
ジェイミー・リー・カーティスの孫娘まで登場し、
3世代で殺人鬼と対決し、
ラストはトラップに嵌めて地下室で焼き殺すのですが、
今回の続編では消防士に救助されてまた復活し、
昔と同じ田舎町を恐怖に陥れます。

今回はホラーというより、
アメリカの暴力の連鎖を批判するような、
アジテーションドラマに近い内容で、
殺人鬼の恐怖に怯える住民が、
集団ヒステリーとなって関係のない脱獄囚の男を死に至らしめ、
ラストは殺人鬼をなぶり殺しにするものの、
不死身の殺人鬼に皆殺しにされてしまう、
という酷い話です。

最後にお説教が付いていて、
「悪は暴力では殺せない」という意味合いのことが語られます。

要するに殺人鬼をテロリストになぞらえて、
テロがあったからと言って、
その報復で暴力を行使しても、
それはテロを滅ぼす結果にはならない、
という主張であるようです。

それは勿論そうかも知れませんが、
ホラー映画のテーマとしては、
それはあまりに筋違いの主張であるように思えます。

ホラーとしては脱力系のガッカリです。

ただ、これは3部作の2作目ということのようなので、
果たして人道主義的なテーマと、
破滅残虐嗜好のホラーの世界を、
どのように一致させて結末にもってゆくのか、
そんなことはほぼ不可能で、
おバカな結末になるしか思えない気もするのですが、
あまり期待はせずに次作を待ちたいと思います。

単独の作品として鑑賞することは、
あまりお勧め出来ません。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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急性心筋梗塞と生命予後との関連 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前中は石田医師が外来を担当し、
午後は臨時で休診の予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
心筋梗塞と生命予後のとの関連.jpg
JAMA Internal Medicine誌に、
2021年10月25日ウェブ掲載された、
非致死性心筋梗塞の生命予後に与える影響についての論文です。

急性心筋梗塞というのは、
心臓を栄養する冠動脈という血管の血流が遮断されることにより、
その栄養する心臓の筋肉がダメージを受け、
そのままであれば壊死してしまう状態のことで、
かつては死に直結する心臓の病気の代表でした。

その多くは動脈硬化により、
冠動脈にプラークという不安定な動脈硬化巣が生じ、
それが破れて血栓が血管を塞ぐことにより、
発症すると説明されています。

心筋梗塞は20世紀以降、
急速にその治療が進歩した病気です。

その予防としては、
生活改善やコレステロールの積極的降下療法、
再発予防としては、
抗血小板剤の使用などがその有効性を確認され、
急性期治療としては、
カテーテルによる再灌流治療が積極的に行われ、
ステントによる拡張や血栓除去療法も、
長足の進歩を遂げています。

この非致死性心筋梗塞の発症は、
多くの動脈硬化性疾患などの予防や治療の臨床試験において、
総死亡のリスクや心血管疾患の死亡リスクの代用指標として、
活用されています。

これは心筋梗塞の発症は、
動脈硬化進行の1つの表れであって、
それは死亡リスクの増加と結びついているので、
心筋梗塞を予防するような治療は、
その患者の死亡リスクの低下にも結び付く筈だ、
という考え方に基づいています。

しかし、実際にはその関連性が、
明確に実証されているという訳ではありません。

今回の研究では、
これまでの144の精度の高い臨床試験に含まれている、
トータルで1211897名の患者データをまとめて解析することにより、
非致死性心筋梗塞の発症リスクと、
総死亡及び心血管疾患による死亡リスクとの関連を検証しています。

その結果、
その研究の実施時期や方法により、
かなりばらつきはありますが、
時期を分けた解析を含めて全ての解析において、
非致死性心筋梗塞の発症と、
総死亡及び心血管疾患による死亡のリスクとの間には、
明確な関連は認められませんでした。

つまり、
非致死性心筋梗塞を予防しても、
それはその患者の生命予後に、
必ずしも影響を与えるとは言えない、
という結果です。

この結果の解釈はなかなか難しいのですが、
治療の進歩により、
心筋梗塞は生命予後に直接的影響を与えるような、
そうした病気ではなくなったのでは、
という考え方も出来ますし、
そもそも心筋梗塞はその全てが動脈硬化により発症する訳ではなく、
動脈硬化の進行の典型として、
取り上げることに誤りがあるのではないか、
という考え方も可能です。

いずれにしても今後の臨床試験のデザインにおいて、
非致死性心筋梗塞の位置づけは、
考え直される必要がありそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。       
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新型コロナワクチン接種後の急性心筋炎(18歳以上のアメリカ疫学データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は月曜日ですが、
クリニックは臨時の休診となります。

受診予定の方はご注意下さい。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ワクチン接種後の心筋炎の頻度.jpg
JAMA Internal Medicine誌に、
2021年10月4日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルスワクチン接種後の、
急性心筋炎の発症についてのレターです。

新型コロナウイルス感染症予防のための、
ファイザー・ビオンテック社とモデルナ社の、
2種類のmRNAワクチンが、
その有効性において高い効果を上げていることは間違いがありません。

その安全性についても、
概ね満足のゆくデータが得られています。

ただ、幾つか気になる報告もあり、
その中で一番注目されているものの1つが、
ワクチン接種後の急性心筋炎の発症リスクの増加です。

これは報告の事例の多くが、
10代の男性であることに特徴があり、
その年齢層での疫学データにおいては、
他の年齢層よりも明確に高い発症率を示しています。

ただ、成人での発症事例も報告はあり、
その頻度についてはまだ議論のあるところです。

今回の検証はアメリカの大手健康保険会社である、
カイザー・パーマネント社の医療データを活用して、
1回以上ファイザー・ビオンテック社もしくはモデルナ社の、
mRNAワクチンを接種した、
年齢18歳以上のトータル2392924名のデータを解析した大規模なものです。

その結果、
トータルで15名の急性心筋炎の事例がワクチン後に報告されていて、
そのうちの13例は2回接種後の発症でした。
その発症率は1回接種後では、
100万接種当たり0.8件で、
2回接種後では100万接種当たり5.8件でした。
これは接種後10日以内の発症事例で、
その全ては男性、年齢の中間値は25歳です。
発症者に重症の事例はありませんでした。
これをワクチン未接種者の発症率と比較すると、
初回接種後ではリスクの上昇は認められませんでしたが、
2回目接種後では2.7倍(95%CI:1.4 から4.8)の増加が認められました。

このように、
18歳以上でも急性心筋炎の事例は認められるのですが、
その多くは矢張り20代くらいまでの若年成人で、
男性にほぼ限定されています。

そのトータルな発症率は低く、
ワクチン接種の有効性を上回るものではありませんが、
特に2回目接種後5日以内くらいの胸部痛については、
その可能性を疑って慎重に診察する必要がありそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
nice!(3)  コメント(0)