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高用量ビタミンCの敗血症とARDSに対する有効性 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ビタミンCとARDS.jpg
2019年のJAMA誌に掲載された、
ビタミンCを大量に静脈内投与することの、
敗血症と急性呼吸窮迫症候群に対する有効性を検証した論文です。

ビタミンCを大量に注射や点滴で使用することが、
癌や重症感染症など、
命に直結するような病気に有効である、
という考え方は根強くあります。

ビタミンCには強力な抗酸化作用があり、
ステロイドに似た、抗炎症作用も持っています。

そうした作用を考えると、
確かに大量のビタミンCを使用すれば、
多くの病気の予後の改善に効果がありそうです。

ただ、実際には動物実験や小規模の臨床試験においては、
癌や重症感染症に対するビタミンC大量療法が、
病気の予後を改善したというデータはあるのですが、
症例数も多く、偽薬を使用するような厳密な臨床試験において、
その有効性や予後改善効果が確認されたことはありません。

今回の研究は、
肺炎などの重症感染症で、
敗血症という血液中で病原体が増殖する状態に至り、
炎症性物質の増加から、
急激に呼吸状態が悪化する、
急性呼吸窮迫症候群(ARDS)という病態を併発した患者さんに対して、
偽薬を使用した厳密な臨床試験を行なったものです。

アメリカの7か所の集中治療室に入室した、
敗血症とARDSを合併した患者さん、
トータル167名を、
患者さんにも主治医にも分からないように、
発症24時間以内にくじ引きで2つの群に分けると、
一方は体重1キロ当たり50ミリグラムのビタミンCを、
6時間毎に96時間まで静脈内に投与し、
もう一方はただの水を投与して、
96時間の時点での内臓障害の程度と炎症と血管障害のマーカー値を、
比較検証しています。

その結果、
今回の厳密な検証においては、
投与後96時間の時点での内臓障害や炎症と血管障害のマーカーには、
ビタミンCの使用による有意な改善は、
認められませんでした。
二次的な解析においては、
投与後28時間の時点での死亡リスクが、
ビタミンC群で有意に45%の低下を認めていましたが、
その差は96時間の時点では消失していました。

このように、
今回もビタミンC大量投与の効果は、
厳密な臨床試験において明確には確認されませんでした。

28時間の時点で生命予後にかなり大きな差がついている、
という現象をどう考えるのかは難しいところで、
ビタミンCには矢張り何らかの急性効果はあるものの、
それが通常の治療として、
明確に患者さんにメリットがあるとは言い難い、
という辺りが妥当な判断ではないかと思います。

今回もビタミンCの大量投与の有効性については、
疑問符が残る結果になったようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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