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双極性障害とパーキンソン病リスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
双極性障害とパーキンソン病論文.jpg
2019年のJAMA Neurology誌に掲載された、
双極性障害とパーキンソン病との関連についての論文です。

双極性障害は気分障害の1つで、
うつ状態と躁状態を様々な期間と程度で繰り返します。
その発症年齢の中間値は20代で、
通常症状は長期の経過を取ります。

一方でパーキンソン病はより高齢で発症する、
ドーパミン神経の機能低下による神経難病で、
手の震えや筋強直、小刻み歩行などの歩行障害などが出現し、
進行すると身体を自由に動かすことは困難になります。

以前より、
双極性障害とパーキンソン病が合併しやすい、
という疫学データが複数存在しています。

双極性障害においては、
それが長期の経過を取った場合に、
ドーパミン神経の異常に結び付き易いという知見があります。
躁状態ではドーパミン神経が刺激され、
うつ状態ではドーパミン神経が抑制され、
それが繰り返されることにより、
ドーパミン神経の機能異常が起こり、
それがパーキンソン病の発症に結び付く、
という仮説があるのです。

ただ、その一方で、
主に躁状態の時に使用される抗精神病薬には、
ドーパミン神経を抑制するような働きがあり、
医原性のパーキンソン症候群に結び付く可能性もあります。

従来双極性障害の患者さんに、
後になってから生じるパーキンソン病の症状は、
パーキンソン病の合併より、
薬の副作用による薬剤性パーキンソン症候群なのだと、
判断されることが多く、
本物もパーキンソン病が見落とされることもあると指摘されています。

今回のデータはこれまでの臨床データに含まれる、
トータルで4374211名の患者さんの事例を、
まとめて解析するシステマティックレビューとメタ解析の手法で、
双極性障害とパーキンソン病の関連を検証しています。

その結果、
多くのバイアスを調整した結果として、
双極性障害の患者さんはそうでないコントロールと比較して、
その後に発症する特発性パーキンソン病の発症リスクが、
3.21倍(95%CI: 1.89から5.45)有意に増加していました。

この中には薬剤性のパーキンソン症候群が混在している、
という可能性は否定出来ませんが、
大部分が特発性であることはほぼ間違いがなく、
双極性障害の患者さんでその経過中にパーキンソン症状が見られた時には、
常に薬剤性と特発性の両者を疑って、
慎重な診断を行う必要があるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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