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タバコの種類と肺癌リスクとの関連 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
タバコの種類と肺がんリスク.jpg
2019年のJAMA Internal Medicine誌のレターですが、
時々診療の時にも聞かれることのある、
フィルターや低タールのタバコと、
通常のタバコの肺癌リスクの差についての研究結果です。

タバコを吸うことが、
肺癌などの癌や慢性閉塞性肺疾患、
心血管疾患などのリスク増加につながり、
生命予後にも大きな悪影響を与えることは、
皆さんも良くご存じの事実です。

従って、
健康のためには禁煙以外の方法はありません。

ただ、どうしてもタバコを止められない、
という方もいて、
フィルターを付けて吸ったり、
ニコチンやタールの少ないタバコを使用して、
少しでもタバコの害を軽減しよう、
という工夫がしばしば行われています。

しかし、フィルターや低タール、低ニコチンのタバコには、
どの程度の健康リスク低減効果があるのでしょうか?

今回の研究はアメリカで行われた、
肺癌スクリーニングの大規模疫学データを活用したもので、
タバコをレギュラーとライト、そしてウルトラライト、
フィルター付きとフィルターなし、
レギュラーとメンソールとに分けて、
それぞれの肺癌リスクを比較しています。

対象は現在の喫煙者か喫煙歴のある14123名です。

その結果、
明確に差があったのは、
フィルターありとなしのタバコで、
フィルターありと比べてフィルターなしでは、
肺癌になるリスクが1.37倍(95%CI:1.10から1.71)、
肺癌による死亡リスクが1.96倍(95%CI: 1.46から2.64)、
総死亡リスクが1.28倍(95%CI: 1.09から1.50)、
それぞれ有意に増加していました。

ただ、
非喫煙者では人口10万人当り、
肺癌による死亡は34件であったのに対して、
フィルター付きのタバコの使用者は、
1600件という疫学データがありますから、
勿論フィルター付きのタバコであれば肺癌にならない、
ということではありません。

そして、
レギュラーとメンソール、
レギュラーとライト、ウルトラライトとの比較では、
肺癌になるリスク、肺癌で死亡するリスク、
総死亡リスクのいずれにおいても、
有意な差は認められませんでした。

このように、
フィルター付きのタバコは、
フィルターなしと比較すると、
一定の肺癌リスク低減効果が認められますが、
ニコチンやタールを軽減している、
メンソールやライト、ウルトラライトの銘柄については、
明らかな差は認められませんでした。

ただ、勿論フィルター付きのタバコであっても、
前述のように非喫煙者と比較すれば、
明らかなリスクは認められますから、
健康のためには禁煙することが、
必要にして不可欠であることは間違いのないことなのです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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