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心臓バイパス手術後の抗凝固療法(2019年メタ解析) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
CABGと抗凝固療法.jpg
2019年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
心臓のバイパス手術後の投薬についての論文です。

心筋梗塞や狭心症の治療としては、
ステントという金属性の管などを使用した、
カテーテル治療が広く行われています。

多くの病変はこのカテーテル治療で対応が可能ですが、
3枝病変と言って、
主要な3本の心臓の栄養する動脈の全てに、
危険性の高い病変が存在するような場合には、
心臓バイパス手術(CABG)が選択されます。

心臓バイパス手術というのはその名の通り、
詰まったり狭くなった血管をバイパスして、
新しい血液の通り道を人工的に作る、
という方法です。

このバイパスとしては、
大伏在静脈という足の静脈が、
伝統的に最も広く使用されていました。
ただ、静脈は弱い血管なので、
血栓などで塞がってしまうリスクが高いのが欠点で、
上記文献の記載では、
術後1年以内に30から40%が、
10年では70%が閉塞してしまう、
と報告されています。

それに代わって最近使用されることが多いのが、
内胸動脈や橈骨動脈などの動脈のバイパスで、
こちらは閉塞が少ないことが特徴とされています。
現行の日本のバイパス手術の多くでは動脈のバイパスが使用されています。

しかし、実際にはまた大伏在静脈のバイパスは、
特に海外においては広く使用されていて、
その閉塞が大きな臨床上の問題になっているようです。

現状静脈の閉塞の予防のために、
最も広く行われているのが少量のアスピリンの使用です。

ただ、その予防効果は充分なものとは言えません。

そこで2種類の抗血小板剤を併用することが、
しばしば行われていますが、
その効果と安全性についてはまだ確立されていないのが実際です。

今回の研究は、
これまでの主だった20の介入試験の結果をまとめた、
システマティックレビューとメタ解析ですが、
ネットワークメタ解析という手法を用いることによって、
抗血小板剤同士の比較を行なっています。

その結果、
アスピリンの単独治療と比較して、
アスピリンとチカグレロル(ブリリンタ)という、
2種類の抗血小板剤の併用は、
グラフトの閉塞を50%(95%CI: 0.31から0.79)、
アスピリンとクロピドグレル(プラビックス)の併用は、
グラフトの閉塞を40%(95%CI: 0.42から0.86)、
それぞれ有意に低下させていました。
重篤な出血系合併症や心筋梗塞再発のリスクについては、
アスピリン単独と併用療法との間で、
有意な差は認められませんでした。

このように、今回のメタ解析においては、
グラフトに大伏在静脈を用いたバイパス手術の術後には、
その後にアスピリンともう一種類の抗血小板剤を併用した方が、
アスピリン単独と比較して、
その予後の改善にメリットが大きいようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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