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ストレス関連疾患とその後の重症感染症発症リスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので、
診療は午前中で終わり、
午後は別件の仕事で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ストレスと重症感染症.jpg
2019年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
ストレス関連疾患と感染症との関連についての論文です。

現代はストレス社会とも言われるように、
多くの精神的ダメージに結び付くストレスが蔓延しています。

ストレス関連疾患というのは、
こうしたストレスに伴った病気のことで、
心的外傷後ストレス障害(PTSD)や急性ストレス障害、
適応障害などが含まれています。

PTSDの後には、
免疫系の異常が起こるという報告があります。
また、PTSDの後には、
重症の感染症を来しやすい、
という報告もあります。

ただ、ストレス関連疾患と感染症との関係については、
これまであまりまとまった臨床データがありませんでした。

今回の研究は国民総背番号制を敷いているスウェーデンのもので、
144919名のストレス関連疾患の患者さんと、
その患者さんの兄弟184612名、
そしてストレス関連疾患のない、
一般住民1449190名のコントロールを対象として、
平均観察期間8年間で、
その間の重症感染症の発症リスクと基礎疾患との関連を検証しています。

その結果、
敗血症などの命に関わる感染症の発症率は、
ストレス関連疾患の患者さんでは、
年間1000人当たり2.9件であったのに対して、
その病気を診断されていない兄弟では1.7件、
コントロール群では1.3件でした。

病気のないその兄弟と比較して、
ストレス関連疾患の患者さんでは、
重症感染症の発症リスクが1.47倍(95%CI: 1.37から1.58)、
PTSDの患者さんに限ると1.92倍(95%CI: 1.66から2.28)
有意に増加していました。
このストレス関連疾患による重症感染症のリスクは、
一般住民のコントロールとの比較でも、
ほぼ同等に算出されました。

このストレス関連疾患に伴う重症感染症リスクの増加は、
患者さんの年齢が若いほど大きく、
その診断から1年以内に抗うつ剤のSSRIが使用されていると、
そのリスクは軽減する傾向が認められました。

このように、
ストレス関連疾患の受傷後には、
かなり長期に渡って重症感染症のリスクの増加が見られていて、
この現象がストレスによる免疫系の異常などによるものなのか、
ストレスに伴う喫煙や生活習慣の乱れなどによるものなのか、
それとも別個のメカニズムが隠れているのか、
といった詳細は不明ですが、
今後の研究の進捗を待つと共に、
現時点ではストレス関連疾患の患者さんにおいては、
感染症の重症化のリスクは高いと想定して、
対応する必要がありそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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