新規経口抗生物質レフェムリンの有効性 [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
2019年のJAMA誌に掲載された、
新しい飲み薬の抗生物質の、
臨床試験の結果をまとめた論文です。
ペニシリンの発見に始まる抗菌剤は、
感染症の治療において多大な貢献をして、
多くの患者さんの命を救いました。
ただその使用が一般化し拡大するにつれ、
抗菌剤を使用することの負の側面も徐々に明らかになって来ました。
抗菌剤を繰り返し使用することが増えると、
その抗菌剤が効かない耐性菌が増加します。
また、抗菌剤には少なからず有害事象や副作用があり、
その安易な使用により、
却って患者さんに悪影響を与えてしまう、
ということもあります。
細菌性肺炎は抗菌剤による治療が必要な代表的な感染症の1つです。
その原因となる細菌には、
肺炎球菌や黄色ブドウ球菌、インフルエンザ桿菌、
モラクセラ菌、マイコプラズマ、クラミジア、レジオネラなどがあります。
現行のガイドラインにおいては、
ペニシリンなどのβラクタム、マクロライド、
ニューキノロン系の3系統の抗菌剤が適応となっていますが、
βラクタムとマクロライドは耐性菌が多く、
ニューキノロンにはアキレス腱の炎症や断裂、
末梢神経障害、大動脈解離などの特有のリスクがあり、
その安全性に危惧が大きくなっているのが実際です。
そこで、
耐性菌を誘導し難く、安全に使用可能であるような、
新しい抗菌剤の開発が望まれているのです。
今回ご紹介するレフェムリンはその候補となる薬の1つです。
レフェムリンは、
世界で初めての内服や注射で使用可能な、
プレウロムチリン系の抗生物質です。
プレウロムチリンというのは、
ある種の真菌から分泌される物質で、
細菌の蛋白合成酵素を阻害することにより、
強力で広い範囲の細菌に抗菌作用を持っています。
その作用点は従来の抗菌剤とは異なるもので、
耐性菌の誘導も起こり難いと想定されています。
ただ、その合成が難しいために、
これまで外用剤以外は抗生物質としては実用化されていませんでした。
それが最近になって、
比較的簡単な方法で合成することが可能となり、
そうして創薬されたプレウロムチリン系の抗生物質が、
今回のレフェムリンです。
今回の第三相臨床試験では、
世界19カ国の99の医療施設において、
急性の細菌性肺炎に罹患した738名の一般住民を、
くじびきで2つの群に分けると、
一方はレファムリンの経口剤を、
600mgで1日2回5日間服用し、
もう一方はニューキノロン系抗菌剤のモキシフロキサシン(アベロックス)を、
1日400mgで7日間服用して、
その治療効果を比較検証しています。
その結果、
内服開始96時間以内に、
肺炎の症状が一定レベル以上改善する、
早期治療有効率は、
モキシフロキサシン群で90.8%に対して、
レフェムリン群も90.8%で両群に差はなく、
治療終了後5から10日の時点で治癒が認められる治癒率にも、
両群で差はありませんでした。
レフェムリンの有害事象は吐き気や下痢が主で、
特に重篤なものは認められませんでした。
このようにニューキノロン系抗菌剤と比較して、
劣っていない(非劣性)ことが認められたという今回の結果は、
レフェムリンの一定の有効性を示すもので、
これまでの抗菌剤と構造が異なり、
耐性菌を誘導しにくいという知見が事実であれば、
今後感染症診療において、
大きな役割を果たす薬剤になるかも知れません。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
2019年のJAMA誌に掲載された、
新しい飲み薬の抗生物質の、
臨床試験の結果をまとめた論文です。
ペニシリンの発見に始まる抗菌剤は、
感染症の治療において多大な貢献をして、
多くの患者さんの命を救いました。
ただその使用が一般化し拡大するにつれ、
抗菌剤を使用することの負の側面も徐々に明らかになって来ました。
抗菌剤を繰り返し使用することが増えると、
その抗菌剤が効かない耐性菌が増加します。
また、抗菌剤には少なからず有害事象や副作用があり、
その安易な使用により、
却って患者さんに悪影響を与えてしまう、
ということもあります。
細菌性肺炎は抗菌剤による治療が必要な代表的な感染症の1つです。
その原因となる細菌には、
肺炎球菌や黄色ブドウ球菌、インフルエンザ桿菌、
モラクセラ菌、マイコプラズマ、クラミジア、レジオネラなどがあります。
現行のガイドラインにおいては、
ペニシリンなどのβラクタム、マクロライド、
ニューキノロン系の3系統の抗菌剤が適応となっていますが、
βラクタムとマクロライドは耐性菌が多く、
ニューキノロンにはアキレス腱の炎症や断裂、
末梢神経障害、大動脈解離などの特有のリスクがあり、
その安全性に危惧が大きくなっているのが実際です。
そこで、
耐性菌を誘導し難く、安全に使用可能であるような、
新しい抗菌剤の開発が望まれているのです。
今回ご紹介するレフェムリンはその候補となる薬の1つです。
レフェムリンは、
世界で初めての内服や注射で使用可能な、
プレウロムチリン系の抗生物質です。
プレウロムチリンというのは、
ある種の真菌から分泌される物質で、
細菌の蛋白合成酵素を阻害することにより、
強力で広い範囲の細菌に抗菌作用を持っています。
その作用点は従来の抗菌剤とは異なるもので、
耐性菌の誘導も起こり難いと想定されています。
ただ、その合成が難しいために、
これまで外用剤以外は抗生物質としては実用化されていませんでした。
それが最近になって、
比較的簡単な方法で合成することが可能となり、
そうして創薬されたプレウロムチリン系の抗生物質が、
今回のレフェムリンです。
今回の第三相臨床試験では、
世界19カ国の99の医療施設において、
急性の細菌性肺炎に罹患した738名の一般住民を、
くじびきで2つの群に分けると、
一方はレファムリンの経口剤を、
600mgで1日2回5日間服用し、
もう一方はニューキノロン系抗菌剤のモキシフロキサシン(アベロックス)を、
1日400mgで7日間服用して、
その治療効果を比較検証しています。
その結果、
内服開始96時間以内に、
肺炎の症状が一定レベル以上改善する、
早期治療有効率は、
モキシフロキサシン群で90.8%に対して、
レフェムリン群も90.8%で両群に差はなく、
治療終了後5から10日の時点で治癒が認められる治癒率にも、
両群で差はありませんでした。
レフェムリンの有害事象は吐き気や下痢が主で、
特に重篤なものは認められませんでした。
このようにニューキノロン系抗菌剤と比較して、
劣っていない(非劣性)ことが認められたという今回の結果は、
レフェムリンの一定の有効性を示すもので、
これまでの抗菌剤と構造が異なり、
耐性菌を誘導しにくいという知見が事実であれば、
今後感染症診療において、
大きな役割を果たす薬剤になるかも知れません。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。