「ゆれる人魚」 [映画]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は土曜日で健康教室の日なので、
午前中は石田医師が外来を担当し、
午後は石原が担当する予定です。
今日は土曜日なので趣味の話題です。
今日はこちら。
ポーランドの女性監督による、
人魚姫の物語をグロテスクなロックミュージカルとして蘇生させた、
奇怪なファンタジーホラー映画を観て来ました。
東欧というのはかなり変な映画の宝庫でもあって、
身もふたもないような、
変態の極致や残酷見世物の極致のような作品も、
これまでにビデオなどで見たことがあります。
ホラーのジャンルをかすめるロックミュージカルというと、
「ロッキー・ホラー・ショー」と「ファントム・オブ・パラダイス」が有名で、
この2作のカルト的な成功の後、
その亜流の酷い映画が一時期山のように製作されました。
「ファントム・オブ・パラダイス」は、
僕のオールタイムベストの1本でとても偏愛しているので、
一時的似たような映画を大量に見たのですが、
ほぼ100パーセントがクズ映画でした。
それでも矢張り、
変態的な愛を描いたホラー色のあるロックミュージカルと聞くと、
根が大好きなのでどうしても観に行ってしまうのです。
これは1980年代のワルシャワを舞台として、
人肉を好む少女の人魚ゴールデンとシルバーの2人が、
ストリップバーのスターになるというお話で、
愛する人に捨てられると海の泡になるとか、
人間になると声が出せなくなる、
といった約束事はそのまま使われています。
人魚が2人であるということと、
登場する世界がほぼストリップバーだけ、
と言う点が特徴です。
ストリップバーのレビューシーンが、
多く盛り込まれているのですが、
その得体の知れない雰囲気が好きかどうかが、
まずこの映画の好悪を分ける点ではないかと思います。
個人的には嫌いではなく、
特に昔ポランスキーの大傑作「水の中のナイフ」で、
青年を演じていた、バーのオーナーのおじさんが、
ヘンテコな目つきでヘンテコなダンスを踊る、
というようなビジュアルにはとても惹かれます。
ただ、全体にレビューシーンはメリハリに乏しく、
曲ももっと仰々しい感じや、
もっとオドロオドロしい感じ、
もっと抒情的な大バラードなどを期待してしまうのですが、
どうも中途半端なテクノロックみたいなものが多く、
あまり乗れませんでした。
メリハリのないのは物語も一緒で、
ただ愛する男とセックスがしたいためだけに、
壮絶な下半身取り換え手術をして、
人間の下半身を手に入れた筈なのに、
結局セックスにも失敗してしまうシルバーの悲惨な愛などは、
もっと切なく盛り上がってくれても良いと思うのに、
そこに至る段取りがあまり整理されておらず、
演出も何か稚拙な感じなので、
唐突な残酷シーンの印象のみで、
終わってしまった感じがするのは非常に残念でした。
とても良いのはラストの船のクライマックスで、
泡になったシルバーに怒り狂い、
青年の喉笛を掻っ切って海に身を躍らせるゴールデンの姿は、
ホラーミュージカルという様式でこそなし得た、
壮絶な歪んだ美の表現として卓越していました。
それと、途中でゴールデンが車の中で人間を食べ、
ずるずると長い尾を引きずって水に逃れる場面は、
楳図かずおの「蛇少女」のようで、
その動きの面白さと奇怪な美に魅了されました。
ただ、こうした優れたビジュアルがある一方で、
オープニングの海から人間を襲う場面などは、
女性の悲鳴でブラックアウトするという、
非常に凡庸な演出でガッカリします。
このようなトータルなバランスの悪さが、
この作品の評価を不安定にしている主因だと思います。
そんな訳で好きな世界ではあるのですが、
悪趣味と美意識やセンスとの匙加減があまり良いとは言えず、
演出の稚拙さも目立つので、
大満足とは言えませんでした。
これは…
こうしたものがお好きな方のみに、
控え目にお薦めする感じの作品です。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は土曜日で健康教室の日なので、
午前中は石田医師が外来を担当し、
午後は石原が担当する予定です。
今日は土曜日なので趣味の話題です。
今日はこちら。
ポーランドの女性監督による、
人魚姫の物語をグロテスクなロックミュージカルとして蘇生させた、
奇怪なファンタジーホラー映画を観て来ました。
東欧というのはかなり変な映画の宝庫でもあって、
身もふたもないような、
変態の極致や残酷見世物の極致のような作品も、
これまでにビデオなどで見たことがあります。
ホラーのジャンルをかすめるロックミュージカルというと、
「ロッキー・ホラー・ショー」と「ファントム・オブ・パラダイス」が有名で、
この2作のカルト的な成功の後、
その亜流の酷い映画が一時期山のように製作されました。
「ファントム・オブ・パラダイス」は、
僕のオールタイムベストの1本でとても偏愛しているので、
一時的似たような映画を大量に見たのですが、
ほぼ100パーセントがクズ映画でした。
それでも矢張り、
変態的な愛を描いたホラー色のあるロックミュージカルと聞くと、
根が大好きなのでどうしても観に行ってしまうのです。
これは1980年代のワルシャワを舞台として、
人肉を好む少女の人魚ゴールデンとシルバーの2人が、
ストリップバーのスターになるというお話で、
愛する人に捨てられると海の泡になるとか、
人間になると声が出せなくなる、
といった約束事はそのまま使われています。
人魚が2人であるということと、
登場する世界がほぼストリップバーだけ、
と言う点が特徴です。
ストリップバーのレビューシーンが、
多く盛り込まれているのですが、
その得体の知れない雰囲気が好きかどうかが、
まずこの映画の好悪を分ける点ではないかと思います。
個人的には嫌いではなく、
特に昔ポランスキーの大傑作「水の中のナイフ」で、
青年を演じていた、バーのオーナーのおじさんが、
ヘンテコな目つきでヘンテコなダンスを踊る、
というようなビジュアルにはとても惹かれます。
ただ、全体にレビューシーンはメリハリに乏しく、
曲ももっと仰々しい感じや、
もっとオドロオドロしい感じ、
もっと抒情的な大バラードなどを期待してしまうのですが、
どうも中途半端なテクノロックみたいなものが多く、
あまり乗れませんでした。
メリハリのないのは物語も一緒で、
ただ愛する男とセックスがしたいためだけに、
壮絶な下半身取り換え手術をして、
人間の下半身を手に入れた筈なのに、
結局セックスにも失敗してしまうシルバーの悲惨な愛などは、
もっと切なく盛り上がってくれても良いと思うのに、
そこに至る段取りがあまり整理されておらず、
演出も何か稚拙な感じなので、
唐突な残酷シーンの印象のみで、
終わってしまった感じがするのは非常に残念でした。
とても良いのはラストの船のクライマックスで、
泡になったシルバーに怒り狂い、
青年の喉笛を掻っ切って海に身を躍らせるゴールデンの姿は、
ホラーミュージカルという様式でこそなし得た、
壮絶な歪んだ美の表現として卓越していました。
それと、途中でゴールデンが車の中で人間を食べ、
ずるずると長い尾を引きずって水に逃れる場面は、
楳図かずおの「蛇少女」のようで、
その動きの面白さと奇怪な美に魅了されました。
ただ、こうした優れたビジュアルがある一方で、
オープニングの海から人間を襲う場面などは、
女性の悲鳴でブラックアウトするという、
非常に凡庸な演出でガッカリします。
このようなトータルなバランスの悪さが、
この作品の評価を不安定にしている主因だと思います。
そんな訳で好きな世界ではあるのですが、
悪趣味と美意識やセンスとの匙加減があまり良いとは言えず、
演出の稚拙さも目立つので、
大満足とは言えませんでした。
これは…
こうしたものがお好きな方のみに、
控え目にお薦めする感じの作品です。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。