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昼間の眠気とアルツハイマー型認知症との関係について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日はプロバイダーのトラブルで、
昼間の更新が出来ませんでした。
それで夜の更新になってしまいました。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
アルツハイマーと昼の眠気.jpg
2018年のJAMA Neurology誌に掲載された、
高齢者の昼間の眠気が、
認知症の進行と関連があるのではないか、
という気になる報告です。

昼間の眠気というのは、
病気のあるなしに関わらず、
年齢と共に増えて来る症状です。

誰でも退屈な授業や会議などの時には、
眠ってはいけないと思いながら眠くなりますし、
食事の後では満足感と共に眠気が襲います。

これは勿論正常な生理現象ですが、
一方で病的な眠気というものもあります。

ナルコレプシーという病気があり、
この病気では緊張しているような時にかえって、
強い眠気が生じて、
場所に関わらず居眠りをしてしまいます。

病気とは言えないものの、
とは言って正常とも言えない眠気は、
加齢に伴う眠気です。

高齢になると、
ほぼ間違いなく覚醒の維持が困難になります。
つまり、居眠りをしやすくなるのです。
おじいちゃんやおばあちゃんが、
縁側で居眠りをしているのは、昭和的な情景としては、
誰でも馴染みのあるものですし、
テレビ番組や映画などを、
最後まで見続けることは難しくなります。

この眠気はおそらくは脳の機能の、
加齢性の低下によるものと思われます。

ところで、認知症というのも、
脳の機能の低下により起こる症状です。

それでは、
認知症の症状のない高齢者の昼間の眠気と、
その後の認知症の発症の間には、
何らかの関連があるのでしょうか?

以前から認知症と昼間の眠気との間に、
ある程度の関連があるという報告は複数認められていました。
ただ、そのメカニズムにまで踏み込んだ検討は、
これまでに殆どありませんでした。

そこで今回の研究では、
アルツハイマー型認知症の原因物質の1つとされる、
アミロイドβという異常タンパクの脳への沈着の経時的な増加と、
高齢者の昼間の眠気との関連を検証しています。

アメリカのメイヨー・クリニックにおいて、
70歳以上で認知症の症状がなく、
昼間の眠気の程度を測定した、
283名の一般住民に、
平均で2年以上の間隔を空けて、
アミロイドβの沈着の程度の検査を行ない、
その沈着の増加と眠気との関連を検証しています。

脳へのアミロイドβ蛋白の沈着は、
アミロイド・ペット(PiB-PET)という画像の検査で診断しています。
アミロイドβと結合し易い物質(Pittsburgh compound B)
を放射線でラベルして注射し、
それを脳画像で分析します。

病的な眠気の診断は、
エプワース眠気尺度という指標で行われています。
これは日本でも病的な眠気の診断として行われているもので、
どんな状況でどのくらいの頻度で眠気があったかを、
簡単に数値化したもので、
点数が高いほど病的な眠気と判断します。
点数は24点が最も高く、
この研究では10点以上を病的な眠気としています。

登録された283名中、
63名では病的な眠気が認められました。
登録時の病的な眠気と、
前帯状皮質、後帯状皮質から楔前部、後帯状皮質、
という脳の3つの領域におけるアミロイドβの沈着との間には、
有意な相関が認められました。

そして、
時間を置いて計測した、
前帯状皮質と後帯状皮質から楔前部においての、
アミロイド沈着量の増加率は、
より強く病的な眠気と相関していました。

つまり、
今回のデータからは、
アルツハイマー型認知症の発病以前の時点で、
アミロイドβの沈着の1つの現れとして、
昼間の病的な眠気が生じるという可能性が示唆されました。

勿論全ての昼間の眠気が、
認知症のサインということではありませんが、
今後認知症の初期診断とその治療についての知見がより整理されれば、
認知症に結び付くような眠気とそうでない眠気との鑑別も、
より臨床的な意味を持つことになるかも知れません。

それでは今日はこのくらいで。

もう夜ですが今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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