非アルコール性脂肪肝炎の新薬の治療効果(第2相臨床試験) [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
今年のLancet誌に掲載された、
非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の新薬の、
第2相臨床試験の効果についての報告です。
非アルコール性脂肪肝炎というのは、
アルコール性の肝障害と非常に似通った病態が、
お酒を飲まない人にも生じるというもので、
従来の脂肪肝という概念とは異なり、
進行性で肝硬変に移行することも稀ではないのが特徴です。
その病態は内臓肥満やメタボと関連が深く、
高血圧や糖尿病、高脂血症などと高率に合併し、
インスリンの効きが悪くなってインスリンの濃度が高くなる、
インスリン抵抗性がその土台にあると考えられています。
非アルコール性脂肪肝炎というのは、
メタボの内臓に与える影響の1つの現れで、
単独でも肝硬変などの命に関わる病気に繋がる一方、
他の動脈硬化性疾患や糖尿病など、
メタボに関連する病気とも、
密接に結びついているのです。
さて、現時点で減量や運動療法などの生活改善以外に、
特効薬のような治療薬のない非アルコール性脂肪肝炎ですが、
ビタミンEやインスリン抵抗性改善剤であるピグリタゾンなどが、
一定の有効性があるという報告があります。
ただ、その効果は限定的で、
たとえばアメリカのFDAが、
現時点でその有効性を認めている治療薬はありません。
今回その臨床試験結果が報告されている新薬は、
初めての有効性の高い薬剤として、
非常に注目をされているものです。
それはどのような薬なのでしょうか?
NGM282と仮に名付けられている新薬は、
FGF19という身体から分泌されているホルモンと、
同じ作用を持つ物質です。
FGF19というのは、
成長因子の一種で、
胆汁代謝と糖質の代謝に関わっています。
FGFは酵素活性を調節して胆汁の産生を抑え、
インスリン作用を持ってインスリンの感受性を改善する作用があります。
このホルモンは非アルコール性脂肪肝炎の患者さんで、
低下するということも報告されていますから、
この病気の抜本的な治療に結び付く可能性があるのです。
今回の第2相の臨床試験は、
アメリカとオーストラリアで登録された、
18歳から75歳の肝生検で確定診断されたNASHの患者さん、
トータル82名を本人にも主治医にも分からないように、
くじ引きで3つの群に分けると、
新薬の3ミリグラム、もしくは6ミリグラム毎日1回の皮下注射と、
偽薬の注射群に割り付けて、
12週間の治療を継続してその有効性を比較しています。
その結果、
12週間の治療により、
MRI検査で計測した肝臓内脂肪量が、
5%以上減少した割合は、
偽注射群では7%でしたが、
NGM282 の3ミリグラム群では74%、
6ミリグラム群では79%に上っていました。
肝生検により肝臓組織が正常化していたのは、
NGM282群3ミリグラム群では26%、
6ミリグラム群では39%認められましたが、
偽薬群ではそうした改善は1例も認められませんでした。
薬の有害事象としては、
接種部位の発赤や疼痛が最も多く、
下痢、腹痛などの順となっていました。
このように、
これまでの非アルコール性脂肪肝炎の治療薬の中では、
間違いなく最も有効性の高い薬剤で、
今のところ問題となるような重篤な有害事象もないことから、
毎日の自己注射が必要という欠点はありますが、
この病気の患者さんには福音となる可能性を、
秘めた薬剤であると言って良いように思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
今年のLancet誌に掲載された、
非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の新薬の、
第2相臨床試験の効果についての報告です。
非アルコール性脂肪肝炎というのは、
アルコール性の肝障害と非常に似通った病態が、
お酒を飲まない人にも生じるというもので、
従来の脂肪肝という概念とは異なり、
進行性で肝硬変に移行することも稀ではないのが特徴です。
その病態は内臓肥満やメタボと関連が深く、
高血圧や糖尿病、高脂血症などと高率に合併し、
インスリンの効きが悪くなってインスリンの濃度が高くなる、
インスリン抵抗性がその土台にあると考えられています。
非アルコール性脂肪肝炎というのは、
メタボの内臓に与える影響の1つの現れで、
単独でも肝硬変などの命に関わる病気に繋がる一方、
他の動脈硬化性疾患や糖尿病など、
メタボに関連する病気とも、
密接に結びついているのです。
さて、現時点で減量や運動療法などの生活改善以外に、
特効薬のような治療薬のない非アルコール性脂肪肝炎ですが、
ビタミンEやインスリン抵抗性改善剤であるピグリタゾンなどが、
一定の有効性があるという報告があります。
ただ、その効果は限定的で、
たとえばアメリカのFDAが、
現時点でその有効性を認めている治療薬はありません。
今回その臨床試験結果が報告されている新薬は、
初めての有効性の高い薬剤として、
非常に注目をされているものです。
それはどのような薬なのでしょうか?
NGM282と仮に名付けられている新薬は、
FGF19という身体から分泌されているホルモンと、
同じ作用を持つ物質です。
FGF19というのは、
成長因子の一種で、
胆汁代謝と糖質の代謝に関わっています。
FGFは酵素活性を調節して胆汁の産生を抑え、
インスリン作用を持ってインスリンの感受性を改善する作用があります。
このホルモンは非アルコール性脂肪肝炎の患者さんで、
低下するということも報告されていますから、
この病気の抜本的な治療に結び付く可能性があるのです。
今回の第2相の臨床試験は、
アメリカとオーストラリアで登録された、
18歳から75歳の肝生検で確定診断されたNASHの患者さん、
トータル82名を本人にも主治医にも分からないように、
くじ引きで3つの群に分けると、
新薬の3ミリグラム、もしくは6ミリグラム毎日1回の皮下注射と、
偽薬の注射群に割り付けて、
12週間の治療を継続してその有効性を比較しています。
その結果、
12週間の治療により、
MRI検査で計測した肝臓内脂肪量が、
5%以上減少した割合は、
偽注射群では7%でしたが、
NGM282 の3ミリグラム群では74%、
6ミリグラム群では79%に上っていました。
肝生検により肝臓組織が正常化していたのは、
NGM282群3ミリグラム群では26%、
6ミリグラム群では39%認められましたが、
偽薬群ではそうした改善は1例も認められませんでした。
薬の有害事象としては、
接種部位の発赤や疼痛が最も多く、
下痢、腹痛などの順となっていました。
このように、
これまでの非アルコール性脂肪肝炎の治療薬の中では、
間違いなく最も有効性の高い薬剤で、
今のところ問題となるような重篤な有害事象もないことから、
毎日の自己注射が必要という欠点はありますが、
この病気の患者さんには福音となる可能性を、
秘めた薬剤であると言って良いように思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。