最もバランスの取れた抗うつ剤はどれか? [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
2018年のLancet誌に掲載された、
21種類の世界的に使用されている抗うつ剤の有効性と使いやすさを、
ネットワークメタ解析の手法で比較検証した論文です。
以前にも同じような論文が、
Lancet誌に掲載されていて、
その最新版というような趣のものです。
抗うつ剤は世界中で広く使用されている薬剤ですが、
その有効性は必ずしも精度の高い臨床試験において、
確立されている、という訳ではありません。
プラセボ(偽薬)と比較した有効性が、
明確に認められるようになったのも、
比較的最近開発された薬に限ってのことで、
同種の薬剤同士の直接比較のデータは、
より限られたものしかありません。
今回の研究は、これまでに行われた抗うつ剤に関する、
介入試験と呼ばれる精度の高い臨床試験をまとめて解析し、
ネットワークメタ解析という手法を用いて、
1つの研究の中で直接比較されていない薬剤間でも、
その有効性と利便性の比較を行うことを可能としています。
ここでは日本未発売の薬を含めて、
21種類の現在使用されている抗うつ剤が俎上に上がっています。
古い薬としては、
アミトリプチリン(トリプタノール)とクロミプラミン(アナフラニール)
がエントリーされ、
これは他剤との比較の試験などで、
取り上げられることが多いためです。
それ以外の三環系抗うつ剤などは、
偽薬と比較したような有効性のデータはなく、
対象となっていません。
SSRI以降の抗うつ剤は、
ほぼ網羅される感じになっています。
対象となったアミトリプチリン、クロミプラミンと、
SSRI以降の抗うつ剤は、
偽薬との比較で有効性は確認をされました。
これは偽薬よりうつ状態の指標がより改善している、
という意味です。
最も有効であったのがアミトリプチリンで、
次がミルタザピン(リフレックス)、デュロキセチン(サインバルタ)、
という順番になっていて、
最も有効性が低かったのは、
レボキセチンでした。
治療途中でドロップアウトが少ない忍容性については、
もっともドロップアウトが少ないのはアゴメラチン(日本未発売)で、
次がフルオキセチン(プロザック)、エスシタロプラム(レクサプロ)、
という順番になっていて、
最もドロップアウトが多かったのはクロミプラミン(アナフラニール)でした。
ネットワーク解析で個別の薬剤同士の比較を行うと、
他の薬と比べて有効性が高かったのは、
アゴメラチン、アミトリプチリン、エスシタロプラム、
ミルタザピン、パロキセチン(パキシル)、ベンファラキシン(イフェクサー)、
ボルチオキセチン(日本未発売)で、
逆に有効性が低かったのは、
フルオキセチン、フルボキサミン(ルボックス)、
レボキセチン、トラゾドン(デジレル)でした。
忍容性では、
ドロップアウトが他の薬と比較して少なかったのは、
アゴメラチン、シタロプラム、エスシタロプラム、フルオキセチン、
セルトラリン、ボルチオキセチンで、
逆にドロップアウトが多かったのは、
アミトリプチリン、クロミプラミン、デュロキセチン、フルボキサミン、
レボキセチン、トラゾドン、ベンファラキシンでした。
要するに、
有効性が高く継続がしやすい薬として考えると、
エスシタロプラム(レクサプロ)辺りが、
日本で使用されている薬としてはバランスが良く、
副作用に留意して使用すれば、
アミトリプチリン(トリプタノール)やミルタザピン(リフレックス)も悪くない、
というような結果になっています。
ただ、今回使用されたデータは、
他と比較すれば精度の高いものですが、
一般的なデータの質としてはそれほど高くはなく、
抗うつ剤の評価というのは、
他の分野の薬と比較すると、
まだまだ科学的な分析や評価の質を高める必要があるようです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
2018年のLancet誌に掲載された、
21種類の世界的に使用されている抗うつ剤の有効性と使いやすさを、
ネットワークメタ解析の手法で比較検証した論文です。
以前にも同じような論文が、
Lancet誌に掲載されていて、
その最新版というような趣のものです。
抗うつ剤は世界中で広く使用されている薬剤ですが、
その有効性は必ずしも精度の高い臨床試験において、
確立されている、という訳ではありません。
プラセボ(偽薬)と比較した有効性が、
明確に認められるようになったのも、
比較的最近開発された薬に限ってのことで、
同種の薬剤同士の直接比較のデータは、
より限られたものしかありません。
今回の研究は、これまでに行われた抗うつ剤に関する、
介入試験と呼ばれる精度の高い臨床試験をまとめて解析し、
ネットワークメタ解析という手法を用いて、
1つの研究の中で直接比較されていない薬剤間でも、
その有効性と利便性の比較を行うことを可能としています。
ここでは日本未発売の薬を含めて、
21種類の現在使用されている抗うつ剤が俎上に上がっています。
古い薬としては、
アミトリプチリン(トリプタノール)とクロミプラミン(アナフラニール)
がエントリーされ、
これは他剤との比較の試験などで、
取り上げられることが多いためです。
それ以外の三環系抗うつ剤などは、
偽薬と比較したような有効性のデータはなく、
対象となっていません。
SSRI以降の抗うつ剤は、
ほぼ網羅される感じになっています。
対象となったアミトリプチリン、クロミプラミンと、
SSRI以降の抗うつ剤は、
偽薬との比較で有効性は確認をされました。
これは偽薬よりうつ状態の指標がより改善している、
という意味です。
最も有効であったのがアミトリプチリンで、
次がミルタザピン(リフレックス)、デュロキセチン(サインバルタ)、
という順番になっていて、
最も有効性が低かったのは、
レボキセチンでした。
治療途中でドロップアウトが少ない忍容性については、
もっともドロップアウトが少ないのはアゴメラチン(日本未発売)で、
次がフルオキセチン(プロザック)、エスシタロプラム(レクサプロ)、
という順番になっていて、
最もドロップアウトが多かったのはクロミプラミン(アナフラニール)でした。
ネットワーク解析で個別の薬剤同士の比較を行うと、
他の薬と比べて有効性が高かったのは、
アゴメラチン、アミトリプチリン、エスシタロプラム、
ミルタザピン、パロキセチン(パキシル)、ベンファラキシン(イフェクサー)、
ボルチオキセチン(日本未発売)で、
逆に有効性が低かったのは、
フルオキセチン、フルボキサミン(ルボックス)、
レボキセチン、トラゾドン(デジレル)でした。
忍容性では、
ドロップアウトが他の薬と比較して少なかったのは、
アゴメラチン、シタロプラム、エスシタロプラム、フルオキセチン、
セルトラリン、ボルチオキセチンで、
逆にドロップアウトが多かったのは、
アミトリプチリン、クロミプラミン、デュロキセチン、フルボキサミン、
レボキセチン、トラゾドン、ベンファラキシンでした。
要するに、
有効性が高く継続がしやすい薬として考えると、
エスシタロプラム(レクサプロ)辺りが、
日本で使用されている薬としてはバランスが良く、
副作用に留意して使用すれば、
アミトリプチリン(トリプタノール)やミルタザピン(リフレックス)も悪くない、
というような結果になっています。
ただ、今回使用されたデータは、
他と比較すれば精度の高いものですが、
一般的なデータの質としてはそれほど高くはなく、
抗うつ剤の評価というのは、
他の分野の薬と比較すると、
まだまだ科学的な分析や評価の質を高める必要があるようです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。