COPDに対するアジスロマイシンの長期効果 [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は産業医の面談などに都内を廻る予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
2018年のChest誌に掲載された、
慢性閉塞性肺疾患に対して抗生物質を長期使用するという方法の、
1年を超える治療効果と安全性とを検証した論文です。
慢性閉塞性肺疾患(COPD)の予後改善のために、
最も重要なことの1つは、
COPDの急性増悪を予防することです。
急性増悪というのは感染症などをきっかけとして、
呼吸機能が急激に悪化することで、
それを繰り返すことが、
COPDの予後を大きく左右することが、
これまでの多くの研究から明らかになっています。
この急性増悪の予防のために、
以前から抗生物質を感染症の初期の段階から、
もしくは感染症などに関わらず継続する形で、
抗菌剤を使用することが試みられ、
マクロライド系と言われる抗菌剤については、
一定の予防効果や呼吸機能低下の抑制効果が、
複数の研究で確認されています。
これまでで最も長期の臨床データは、
アジスロマイシンという抗菌剤を1年間使用したもので、
それを超える期間での有効性と安全性は確立をされていません。
そこで今回の研究ではスペインにおいて、
重症(GOLD分類グレードD)で、
4回以上の急性増悪を繰り返している患者さんのうち、
アジスロマイシンの使用を継続している患者さん、
トータル109名を登録し、
その持続期間を24ヶ月以上の場合とそれより短い場合とに分け、
その経過をアジスロマイシン未使用の12か月と比較検証しています。
アジスロマイシンは、
1週間に3日間500ミリグラムを使用しています。
これは通常日本で使用されている処方と同じで、
通常は1回で済ますものを、
毎週繰り返して使用するのです。
開始して1年間は治療を継続し、
その1年間での、
入院を必要とするCOPD急性増悪が1回以下であれば、
一旦中止が検討され、
その後急性増悪が増えれば、
治療が再開されるという流れになっています。
アジスロマイシンによる継続治療が行われた患者さんは、
トータルで109名で、
このうち結果として24か月以上治療が継続されたのは、
35.8%に当たる39名でした。
未治療の1年間を基準とした場合、
このアジスロマイシン長期継続群では、
急性増悪の発症率が、
1年目には56.2%、2年目には70%、3年目には41%低下していました。
また入院のリスクについても、
1年目には62.6%、2年目には75.8%、3年目には39.8%と低下が認められました。
ただ、治療1年目と2年目の比較において、
アジスロマイシンの長期使用継続群では、
マクロライド系抗菌剤の耐性化が50%増加し、
緑膿菌の感染に伴う急性増悪の頻度は、
7.2%から13.1%へと増加していました。
このように、
少なくとも2年間はアジスロマイシンの長期継続療法は、
重症なCOPDの患者さんで急性増悪が認められる場合に限れば、
その予防に一定の有効性があると考えられます。
3年目に関してもそれまでより低いものの、
有効性は認められていました。
ただ、2年の時点で耐性菌は増加していて、
細菌感染による急性増悪自体は低下しているのですが、
耐性菌による感染が多くなる傾向は認められています。
従って、
現状の考え方としては、
急性増悪を繰り返しているCOPDの患者さんに限れば、
アジスロマイシンの継続療法は検討する値打ちがあると思います。
ただ、耐性菌の増加という弊害はあるので、
対象はその効果が大きく期待される患者さんに限る必要があります。
その継続期間に関しては、
2年の時点で一定の評価を行ない、
有効性が確認されなかったり、
急性増悪自体が認められなくなった時には、
一時中止して様子を見るという方針が、
妥当であるように思われます。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は産業医の面談などに都内を廻る予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
2018年のChest誌に掲載された、
慢性閉塞性肺疾患に対して抗生物質を長期使用するという方法の、
1年を超える治療効果と安全性とを検証した論文です。
慢性閉塞性肺疾患(COPD)の予後改善のために、
最も重要なことの1つは、
COPDの急性増悪を予防することです。
急性増悪というのは感染症などをきっかけとして、
呼吸機能が急激に悪化することで、
それを繰り返すことが、
COPDの予後を大きく左右することが、
これまでの多くの研究から明らかになっています。
この急性増悪の予防のために、
以前から抗生物質を感染症の初期の段階から、
もしくは感染症などに関わらず継続する形で、
抗菌剤を使用することが試みられ、
マクロライド系と言われる抗菌剤については、
一定の予防効果や呼吸機能低下の抑制効果が、
複数の研究で確認されています。
これまでで最も長期の臨床データは、
アジスロマイシンという抗菌剤を1年間使用したもので、
それを超える期間での有効性と安全性は確立をされていません。
そこで今回の研究ではスペインにおいて、
重症(GOLD分類グレードD)で、
4回以上の急性増悪を繰り返している患者さんのうち、
アジスロマイシンの使用を継続している患者さん、
トータル109名を登録し、
その持続期間を24ヶ月以上の場合とそれより短い場合とに分け、
その経過をアジスロマイシン未使用の12か月と比較検証しています。
アジスロマイシンは、
1週間に3日間500ミリグラムを使用しています。
これは通常日本で使用されている処方と同じで、
通常は1回で済ますものを、
毎週繰り返して使用するのです。
開始して1年間は治療を継続し、
その1年間での、
入院を必要とするCOPD急性増悪が1回以下であれば、
一旦中止が検討され、
その後急性増悪が増えれば、
治療が再開されるという流れになっています。
アジスロマイシンによる継続治療が行われた患者さんは、
トータルで109名で、
このうち結果として24か月以上治療が継続されたのは、
35.8%に当たる39名でした。
未治療の1年間を基準とした場合、
このアジスロマイシン長期継続群では、
急性増悪の発症率が、
1年目には56.2%、2年目には70%、3年目には41%低下していました。
また入院のリスクについても、
1年目には62.6%、2年目には75.8%、3年目には39.8%と低下が認められました。
ただ、治療1年目と2年目の比較において、
アジスロマイシンの長期使用継続群では、
マクロライド系抗菌剤の耐性化が50%増加し、
緑膿菌の感染に伴う急性増悪の頻度は、
7.2%から13.1%へと増加していました。
このように、
少なくとも2年間はアジスロマイシンの長期継続療法は、
重症なCOPDの患者さんで急性増悪が認められる場合に限れば、
その予防に一定の有効性があると考えられます。
3年目に関してもそれまでより低いものの、
有効性は認められていました。
ただ、2年の時点で耐性菌は増加していて、
細菌感染による急性増悪自体は低下しているのですが、
耐性菌による感染が多くなる傾向は認められています。
従って、
現状の考え方としては、
急性増悪を繰り返しているCOPDの患者さんに限れば、
アジスロマイシンの継続療法は検討する値打ちがあると思います。
ただ、耐性菌の増加という弊害はあるので、
対象はその効果が大きく期待される患者さんに限る必要があります。
その継続期間に関しては、
2年の時点で一定の評価を行ない、
有効性が確認されなかったり、
急性増悪自体が認められなくなった時には、
一時中止して様子を見るという方針が、
妥当であるように思われます。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。