SSブログ

「最後まで行く」(2023年藤井道人監督版) [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前午後とも石田医師が外来を担当する予定です。

土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
最後まで行く.jpg
現在を代表する邦画監督の1人、
藤井道人監督が、
韓国映画のヒット作を原作として、
岡田准一さんと綾野剛さんが主演を勤める、
アクションスリラー映画のメガホンを取りました。

藤井監督は海外で言えば、
フライシャーやフリッツ・ラングみたいな感じ、
多作で職人芸的な体質がありながら、
映画マニアで個性的な映像美と、
作り込んだジャンル映画が持ち味です。

「新聞記者」が非常に評価されたので、
社会派監督めいたイメージが付きましたが、
決してそれが本領ということではなく、
社会派もやれば、アクションもやるし、
ミステリーもやれば、恋愛ものも撮る、
というタイプの監督だと思います。
でも、どんなジャンル映画を撮っても、
そこに藤井イズムはしっかりと持っているのです。

ファンとしては多作なのが嬉しいですね。
多作でも三池崇史監督や大林宜彦監督のように、
明らかなやっつけ仕事が多いのは困るのですが、
藤井監督はそうしたことはなくて、
どの作品も一定のクオリティと、
藤井監督らしい拘りの場面が、
必ず用意されているのがさすがです。

今回の作品はおそらく、
与えられた企画だと思うのですが、
タランティーノがやりたかったのだと思うのですね。
それから、70年代くらいの、
東映サスペンススリラーみたいな感じ。

絵作りは明らかに昔のシネスコスリラーなんですよね。
それを洗練させているという感じ。
で、でっかい字幕で日付が出て、
それが途中で逆廻しされて時間が戻るところは、
これはもうタランティーノ以外の何物でもないですね。
それを本家よりスタイリッシュにやっています。
爆破や銃撃の質感や色味の美しさにも拘りがあり、
1場面だけでも、
これまでにないアクションを作ろう、
という意欲が感じられました。

岡田准一さんは頑張っていましたが、
ちょっとこの役柄には合わなかったですね。
これ、もう少し昔の北野武さんの役柄ですよね。
ちょっと憎めないところもある悪徳刑事が絶体絶命になる感じ。
岡田さんは矢張りヒーローが似合うので、
この崩れ方は違和感がありました。
対する綾野剛さんは凄かったですね。
よくぞここまで、という崩し方で、
これまでのキャリアの中でも、
屈指の芝居ではなかったかと思いました。
彼の演技の落差の素晴らしさを見るだけでも、
この作品は値打ちがあると思います。

総じて、藤井監督のフィルモグラフィの中では、
突出したものではなく、
職人芸的な水準作ですが、
それでも細部まで監督の魅力の感じられる、
愛すべきノワール(暗黒映画)になっていたと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
nice!(3)  コメント(0)