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消炎鎮痛剤の心不全リスク(糖尿病患者における検証) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前中は石田医師が、
午後2時以降は石原が外来を担当する予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
NSAIDSの短期使用と心不全リスク.jpg
Journal of the American College of Cardiology誌に、
2023年4月18日付掲載された、
消炎鎮痛剤の心不全リスクについての論文です。

ロキソニンやボルタレン(いずれも商品名)などの、
非ステロイド系消炎鎮痛剤は、
手っ取り早く痛みや熱を改善する薬として、
広く使用されています。

その主な作用は、
COXと呼ばれる酵素を阻害することにより、
プロスタグランジンの産生を抑制することにあります。

しかし、非ステロイド系消炎鎮痛剤は、
多くの副作用や有害事象のある薬としても知られています。

現時点で明確なものとしては、
急性の腎障害や胃粘膜障害による消化管出血、
体液の貯留による心不全リスクの増加、
心血管疾患リスクの高い患者さんにおける、
心筋梗塞などの発症リスクの増加などがあり、
この心血管疾患リスクの増加は、
アスピリンなどの抗血小板剤や抗凝固剤の使用時により、
より顕著となることが報告されています。

胃粘膜障害については、
COX2の選択的阻害剤で減少することが確認されていますが、
腎障害や心血管疾患のリスク増加については、
それほどの差はないと考えられています。

2型糖尿病の患者さんでは、
腎機能低下や糖尿病性心筋症、
心不全などを合併しやすいことが知られていて、
そのことからは、
非ステロイド系消炎鎮痛剤を使用時の有害事象についても、
より多いことが想定されます。

しかし、実際には個別のリスクについて、
2型糖尿病の患者さんに限ったデータは、
それほど多くはありません。

そこで今回の研究では、
国民総背番号制を敷いているデンマークにおいて、
2型糖尿病の患者での新規の心不全による入院のリスクと、
非ステロイド系消炎鎮痛剤の処方との関連を、
比較検証しています。

2型糖尿病の患者、トータル331189名を対象とし、
新規の心不全による入院と、
その前1年以内の非ステロイド系消炎鎮痛剤の処方との、
関連を検証したところ、
28日以内の短期の消炎鎮痛剤の使用により、
新規の心不全による入院のリスクは43%(95%CI:1.27から1.63)、
有意に増加していました。
このリスク増加はサブ解析においては、
特に80歳以上の年齢層で78%(95%CI:1.39から2.28)、
これまでに非ステロイド系消炎鎮痛剤の使用歴がない場合には、
2.71倍(95%CI:1.78から4.23)と、
より大きなものとなっていました。

このように特に高齢の患者においては、
非ステロイド系消炎鎮痛剤の2型糖尿病患者への使用は、
それが短期間のものであっても、
心不全による入院のリスクを有意に高めていました。

糖尿病の患者さんへの消炎鎮痛剤の使用は、
リスクがあることを念頭において、
必要最小限にとどめる必要がありそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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