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骨粗鬆症治療薬の有効性比較(2023年メタ解析) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

今日は休みの日ですが祝日が続いたので医療の話題です。

今日はこちら。
骨粗しょう症治療薬のメタ解析.jpg
British Medical Journal誌に、
2023年5月2日付で掲載された、
閉経後の骨粗鬆症治療薬の、
有効性を比較したメタ解析の論文です。

骨粗鬆症の治療薬は、
糖尿病の治療薬と並んで、
近年最もその進歩が著しい分野で、
新たな治療薬が次々と開発され、
実際に臨床に活用されています。

現状最も広く使用されている閉経後の骨粗鬆症治療薬は、
ビスフォスフォネートという強力な骨吸収の抑制剤で、
その効果は代表的な薬剤の1つである、
リセドロネート(商品名アクトネル、ベネットなど)のデータでは、
2から3年の継続的使用で、
トータルな骨折のリスクを4割程度減少させています。

一方でより強力な骨吸収の抑制剤として、
抗RANKL抗体という注射薬があり、
その1つであるデノスマブの効果は、
3年間で背骨の骨折のリスクを68%、
股関節の骨折のリスクを40%低下させた、
というデータが発表されています。

また別のメカニズムを持つ注射薬として、
骨形成を促進させる作用を持つ、
副甲状腺ホルモンの誘導体の注射薬があり、
その1つである週1回の注射のテリパラチド(商品名テリボンなど)は、
18か月の使用で新規骨折のリスクを70%以上低下させている、
というデータが報告されています。

更に最も新しく2019年に日本で発売されたロモソズマブ(商品名イベニティ)は、
抗スクレロスチンモノクローナル抗体というタイプの注射薬です。
スクレロスチンは骨細胞から分泌される蛋白質の一種で、
骨代謝を抑制する働きを持っています。
この蛋白質を強力に抑えることにより、
骨吸収と骨代謝を共に抑えるという、
それまでの薬剤ではなかった作用を持っているのです。
その有効性は臨床試験においては、
他の前述の骨粗鬆症治療薬に勝る骨折予防効果が報告されています。

こうしたデータからは、
ビスフォスフォネートより、
デノスマブやテリパラチドの方が、
更にはそれよりもロモソズマブの方が、
骨折リスクの高いような高齢者では、
有用性が高いように思われます。

ただ、骨折のリスクを評価の項目とした、
厳密な方法でのこうした薬剤の直接比較の試験は、
実際にはこれまであまり行われていませんでした。

今回の検証はこれまでの精度の高い臨床試験のデータを、
まとめて解析して比較する、
システマティックレビューとネットワークメタ解析といった手法で、
閉経後骨粗鬆症治療薬の有効性比較を行っているものです。

これまでの69の精度の高い臨床研究に含まれる、
8万人を超える患者データをまとめて解析したところ、
偽薬と比較して、
ビスフォスフォネート、副甲状腺ホルモン誘導体、
ロモソズマブには、
有意な骨折予防効果が確認されました。

副甲状腺ホルモン誘導体と比較すると、
ビスフォスフォネートは、
臨床的な骨折予防の有効性において劣っていました。

デノスマブは、
副甲状腺ホルモン誘導体とロモソズマブよりも、
臨床的な骨折予防の有効性において劣っていました。

このように現状の臨床データからは、
ビスフォスフォネート、デノスマブ、副甲状腺ホルモン誘導体、
ロモソズマブの4者の治療において、
最も有効性において優れているのは、
ロモソズマブと副甲状腺ホルモン誘導体で、
次がデノスマブという順になり、
ビスフォスフォネートはその3剤よりは劣るというのが、
現状の理解で良いようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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