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外来血圧と比較した24時間血圧の有効性(2023年スペインの臨床研究) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
24時間血圧計の有効性.jpg
Lancet誌に2023年5月5日ウェブ掲載された、
24時間血圧計の有効性についての論文です。

24時間血圧計というのは、
携帯型の血圧計を身体に装着し、
1日もしくは数日の血圧を、
24時間持続t的に測定する医療機器です。

スマートウォッチなどを活用した、
簡易的な血圧測定もあり、
その測定値が正確なものであれば、
より24時間血圧測定は広がりを見せると思うのですが、
現状ではマンシェットを腕に巻き付けて、
それが時間毎に締め付けられる、
というようなタイプが一般的で、
そのため装着すると特に夜間はかなりストレスが掛かるので、
それがこうした測定のハードルを、
高いものにしている部分はあります。

現状高血圧についての多くの臨床試験において、
その指標とされているのは、
外来受診時に医療機関の外来で測定された血圧値です。

しかしこうした外来血圧は、
その測定は正確である一方で、
その患者さんの1日の血圧の推移を、
標準化しているとは言い難いところがあります。

その典型的な例は所謂「白衣高血圧」で、
外来では緊張した状態で測定するために、
自宅で測定した自己測定の数値とは、
かけ離れた高い血圧値を示すことをそう呼んでいます。

血圧という測定値が意味を持つのは、
それが高いことが多くの病気のリスクを高め、
その患者さんの予後とも関連を持っているからです。

そしてその関連の強さは、
医療機関の外来血圧よりも、
24時間血圧測定から得られる血圧値の方が、
より的確であるという考え方があり、
それを実証するようなデータも存在しています。

しかし、そうしたデータの多くは、
比較的精度の低い観察研究のデータで、
患者さんを登録して経過をみるような本格的な臨床試験は、
それほど多くはない上に、
対象者の少ない小規模なデータばかりです。

そこで今回の研究では、
スペインの223か所のプライマリケアのクリニックにおいて、
何らかの理由により24時間血圧測定を施行した、
トータル59124名の患者を中間値で9.7年観察しています。
その観察期間中に12.1%に当たる7174名が死亡しており、
4.0%に当たる2361名は心筋梗塞など心血管疾患による死亡でした。

24時間血圧測定は、
比較的古いタイプのアメリカのメーカーの機器により測定しています。
昼間は20分に1回測定し、
夜は30分に1回の測定が施行されています。
極端は数値を除外して、
それ以外の全ての数値の平均を算出します。

血圧の数値を5分割すると、
一番低い群を除いた4群において、
血圧の上昇は死亡リスクの上昇と相関していました。
そして、クリニックの外来で測定した収縮期血圧より、
24時間血圧を平均化した収縮期血圧の方が、
より強く死亡リスクと相関していました。

また、診察室血圧のみが上昇している白衣高血圧は、
有意な死亡リスクの増加とは関連していませんでした。

今回のこれまでで最も大規模な24時間血圧のデータからは、
外来血圧よりも家庭血圧の重要性が明確に示されていて、
今後より負担なく24時間血圧が正確に測定可能となれば、
家庭血圧のみが健康指標として活用されるようになることも、
そう遠い将来のことではなさそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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