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赤身肉の摂取と動脈硬化進行との関連について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コレステロールと肉摂取.jpg
2013年のNature Medicine誌に掲載された、
赤身の肉に多く含まれる成分のカルニチンが、
動脈硬化の進行と関連しているのでは、
というちょっとショッキングな内容の論文です。

肉を多く食べることが健康にとってどのような影響を与えるのか、
というのは多くの議論のある問題です。

肉を多めに摂ることが健康に良い、
という趣旨のデータもある一方、
特に赤身肉やソーセージなどの加工肉の摂取が多いと、
心血管疾患のリスクや総死亡のリスクが増加する、
という複数の報告が存在しています。

仮に赤身肉の摂取と心血管疾患のリスクが関連しているとすると、
それは赤身肉に含まれるどのような成分によるものなのでしょうか?

その1つの候補と考えられているのが、
カルニチンです。

カルニチンは脂質代謝に関わるビタミン様の物質で、
活性のあるLカルニチンは、
動物の赤身肉に多く含まれています。
カルニチンは筋肉細胞内にあって、
脂質をミトコンドリアに運んで代謝を促進働きを持っています。

このためカルニチンを多く摂ることにより、
脂肪代謝が亢進してダイエット効果が期待されるのではないか、
という健康への良い影響を期待する見解もありました。

しかし、
その一方でカルニチンを多く摂取することで、
心血管疾患が増加することを示唆する報告もあります。

仮にカルニチンが動脈硬化の進行と結び付いているとすると、
そのメカニズムはどのようなものなのでしょうか?

今回の研究ではネズミの実験により、
L- カルニチンを摂取することにより、
腸内細菌の代謝によってトリメチルアラニン(TMA)という物質が生まれ、
それが更に肝臓で代謝されてトリメチルアラニンーNーオキサイド(TMAO)という物質が、
生まれることを確認しています。

このTMAOには、
コレステロールの組織からの抜き取り能を低下させ、
コレステロールの組織への蓄積を増加させて、
結果として動脈硬化を促進する働きのあることが確認されています。

こちらをご覧下さい。
コレステロール代謝と肉摂取の図.jpg
赤身肉の摂取による動脈硬化促進のメカニズムの仮説を、
図示したものがこちらになります。

今回の研究では腸内細菌の影響を排除することにより、
TMAOの発生がブロックされていることも確認しています。

人間における補助的なデータも付加されていますが、
まだ人間においても同じことが起こっていることは、
確実とは言えません。

その点については今後の検証を待ちたいと思いますが、
カルニチンが腸内細菌の影響によって動脈硬化促進物質に変化する、
という今回の知見は大変興味深く、
今後の更なる検証に期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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