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透析中の活性型ビタミンD治療の効果(J-DAVID研究) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
J-DAVID試験の結果.jpg
2018年のJAMA誌に掲載された、
透析中の患者さんに活性型ビタミンDを使用する、
臨床試験の結果をまとめた論文です。

これは「日本透析活性型ビタミンD試験」と題されたもので、
それを英語で略してJ-DAVID試験とされています。
日本全国の透析医療機関で行われた大規模臨床試験で、
この研究のみのサイトが開設されるなど、
かなり力の入ったプロモーションが行われていました。

透析を含む進行した腎不全の状態においては、
心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患のリスクが増加し、
それが腎不全の患者さんの予後を大きく左右しています。

しかし、その予防の手立てはあまり有効なものが見つかっていません。

進行した腎不全の状態においては、
腎臓におけるビタミンDの活性化が阻害されます。
このことにより、ビタミンDの骨への作用が低下し、
血液のカルシウムは低下してリンが増加します。
カルシウムの低下に伴って、
カルシウムを増加させるホルモンである、
副甲状腺ホルモン(PTH)が増加し、
それが骨からカルシウムを誘導するので、
骨は脆くなって骨折が増えるのです。
更に副甲状腺ホルモンが過剰に分泌された状態が持続することにより、
副甲状腺が肥大して、
カルシウム濃度が低下していなくても、
副甲状腺ホルモンの分泌が続く、
という悪循環に陥るのです。

これはビタミンDの活性障害に起因する、
骨への影響ですが、
それ以外に活性型ビタミンDには、
抗炎症作用などの抗動脈硬化作用があり、
そのことが慢性腎不全において、
心血管疾患が増加することの大きな要因ではないかと、
そのように考える専門家もいます。

現状のガイドラインにおいて、
透析の患者さんに活性型ビタミンDを使用するのは、
副甲状腺ホルモンが明らかな異常高値である時のみです。
この時の副甲状腺ホルモンの管理目標値には、
日本のものと欧米や国際的な基準とでは、
かなりの違いがあります。
intact PTHの測定値で、
日本の管理目標値が60から240pg/mLであるのに対して、
欧米のそれは150から600pg/mLです。

ただ、副甲状腺ホルモンの明確な上昇のない場合に、
活性型ビタミンDを使用することの意義については、
これまでに明確な有用性が確認されていません。

そこで今回の研究では、
日本国内の108の透析施設において、
血液のintact PTHが180pg/mL以下である透析患者、
トータル976名をくじ引きで2つの群に分けると、
一方は通常の治療のみを行い、
もう一方では通常の治療に加えて、
1日0.5μgの活性型ビタミンD(アルファカルシドール)を使用して、
中央値で4年間の経過観察を行っています。
ビタミンDの使用量は経過中の副甲状腺ホルモンなどの数値により、
適宜変更が加えられます。

その結果、
心筋梗塞などの心血管疾患の発症リスクは、
有意ではないもののむしろビタミンD使用群の方が、
多い傾向が認められました。
総死亡のリスクについては差はありませんでした。
ただ、実際には最初に治療群に割り付けられた患者さんのうち、
3分の1はカルシウム値の上昇などの理由から、
ドロップアウトしています。

このように、今回の検証においては、
透析の患者さんに対して活性型ビタミンDを使用することの、
有効性は確認されませんでした。

おそらく血液中の副甲状腺ホルモンが上昇していないケースでは、
活性型ビタミンDの使用が患者さんにメリットのある場合もあり、
その一方でむしろ有害である場合もあると想定されます。

従って、透析の患者さんに画一的に活性型ビタミンDを使用することは誤りで、
どのような指標に基づいてビタミンDを使用するべきかについては、
今後より詳細な検証が必要であるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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