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「来る」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前午後とも石原が外来を担当する予定です。

今日は土曜日なので趣味の話題です。

今日はこちら。
来る.jpg
2015年に日本ホラー小説大賞を受賞した、
澤村伊智さんの処女小説を、
映像の鬼才中島哲也監督が演出に当り、
岡田准一さんや妻夫木聡さんら、
主演級のキャストがずらりと顔を揃えた映画版となって、
今公開されています。

もう上映館も少なく、
朝のバルト9の客席は僕を入れて3人でしたから、
それほどヒットはしていないようです。

原作は異界からの怪物と、
普通の市井の人達や霊能者が対決するという話で、
感じとしては「リング」のタイプに近いと思います。

ただ、外見を取り繕って中身が空虚な家族などの人間関係が、
なかなか面白い部分があり、
中島監督はむしろそうした部分に興味があったようで、
原作の人間ドラマをより膨らませて、
「告白」でも試みた多視点の原作を映像で再構成する手法で、
厚みのある家族劇に仕立てています。

ホラーなのですが、
ショッカー演出をそれほど重視していないので、
さほど怖くはありません。
クライマックスは大除霊大会みたいになって、
これは原作はただ、霊能者が1人でマンションでお祓いをするだけなので、
映画の創作なのですが、
発想は堤幸彦作品に似たテイストになり、
またガンガン音と映像でたたみかける感じは、
韓国ホラーを意識しているような演出です。

何と言っても見応えのあるのは豪華なキャスト陣で、
単なる顔見せではなく、
皆なかなかテレビなどでは見せない、
良い芝居をしています。

妻夫木聡さんは、
中身のない軽薄男というちょっと気の毒な役回りですが、
開き直っての熱演で、
この役にまず妻夫木さん以外は考えられない、
という気がします。
妻役の黒木華さんが振幅の大きな芝居で面白く、
今村昌平の映画みたいな役柄が素晴らしく嫌らしく素敵です。

小松菜奈さんの霊能力のあるキャバ嬢というのも、
彼女ならではの魅力全開ですし、
岡田准一さんの渋さも勿論良いのです。
そして、ラスボスのように登場する松たか子さんが最高で、
抜群に格好良くて惚れ惚れします。

脇にはまた柴田理恵さんや青木崇高さんなどの曲者が揃って、
見逃せない芝居をしています。

そんな訳でなかなか面白い映画ではあるのですが、
正直ホラーとしては怖くもなく衝撃的でもない、
ちょっとモヤモヤする感じになっています。
ホラーとしての決定的な場面がないですよね。
原作は顔に口だけあるような怪物が、
もう少し具体的に出て来るのですが、
映画版は「来る」とは言いながらも、
子供が白目で喋ったりする程度のことしか起こらないので、
「今更これじゃなあ」とガッカリしてしまいます。
「リング」だってあれだけ思わせぶりで押していって、
最後になって原作にもないあんな印象的なお化けが、
堂々と出て来るでしょ。
ああいうのが矢張り大事ですよね。
謎の噛み傷と言っているのに、
その噛みついた怪物が登場しないのですから、
それじゃ駄目だよね。

ただ、多分中島監督としては、
普通にホラーにはしたくなかったのかな、
というようには思うのです。
でも、人間ドラマだけで押すのであれば、
別にクライマックスをあんな風に韓国ホラーにしなくてもいいですよね。
もっと静かに不気味に終わっても良かったのじゃないかしら。
何にせよバランスが悪く、
欲求不満で終わったな、
という感じは否めません。

そんな訳でホラー好きの方には、
一見の価値はあるのですが、
頑張って観に行くほどのテンションにはならかなったのは、
少し残念ではありました。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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