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フィンランドサウナの心血管疾患予防効果(前向きコホート研究) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
サウナの心疾患予防効果.jpg
2018年のBMC Medicine誌に掲載された、
サウナの健康効果についての論文です。

入浴は世界中において、
古くから好まれている生活習慣で、
皮膚などの清潔を保つと共に、
その温熱効果により気分をリラックスし、
血流を一時的にせよ高めるという効果があります。

より長期的に入浴習慣に健康面での効果があるかどうか、
と言う点については、
現時点であまり明確なことが分かっていません。

一部には体温を上昇させることにより、
ヒートショックプロテインを増やし、
免疫を活性化させる、
というような知見もありますが、
それは仮説の域を出ないように思います。

入浴法により健康効果に違いがあるのではないか、
という見解も以前からあります。

日本で行われているような、
首まで熱い湯に浸かる全身浴は、
血圧や脈拍に与える影響が大きく、
入浴中の突然死に繋がるリスクが高い、
という側面があるからです。

フィンランドはサウナ発症の地で、
比較的低温のサウナが一般的な入浴法として普及しています。

サウナというのは湯船に浸からないために、
純粋の温熱効果のみが得られるので、
全身浴と比較してより健康に利する可能性があるのです。

実際これまでに大規模なフィンランドの観察研究において、
サウナの心血管疾患予防効果や肺炎予防効果などが認められ、
過去にブログ記事にもしています。

ただ、これは観察研究ですから、
例数は多くてもそれほど精度の高いものではありません。

今回の研究は一定の住民を登録して、
10年以上の長期の観察を行ったもので、
この分野ではこれまでにあまりなかったタイプの臨床研究です。

フィンランドにおいて、
一般住民1688人を登録し、
登録の時点でのサウナの利用頻度を聞き取りすると、
その後中間値で15年間の経過観察を行っています。

その結果、
心血管疾患の死亡リスクは、
サウナの使用頻度が高いほど低い、
という一定の相関が認められました。

週に1回のサウナ習慣と比較して、
2から3回のサウナ習慣のある住民は、
29%(95%CI: 0.52から0.98)、
4から7回のサウナ習慣のある住民は、
70%(95%CI: 0.14から0.64)、
それぞれ有意に心血管疾患による死亡リスクが低下していました。

これはサウナ習慣がかなり一般的な、
フィンランドに限ったデータで、
運動の健康効果に近いものを、
見ているという可能性もあります。

ただ、前向きコホート研究において、
入浴の健康効果がここまで明確に証明されたことはこれまでになく、
今後は他の入浴法との差についても、
科学的な検証が進むことを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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