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新生児への乳酸菌製剤の敗血症予防効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
LP乳酸菌の敗血症予防効果.jpg
2017年のNature誌に掲載された、
乳酸菌製剤の新生児の使用についての研究です。

昨年発表されてかなり話題になった知見です。

発展途上国においては、
新生児から乳児期の死亡の多くが、
細菌感染症などをきっかけとする敗血症と関連していると、
報告されています。

しかし、その有効な予防法は確立されていません。

新生児においてはまだ免疫系も充分に成熟しておらず、
腸内細菌叢も大人より遙かに少ない細菌で構成されています。

これはつまり、
この時期に特定の乳酸菌製剤を使用すれば、
大人より遙かに大きな影響を身体に与え、
それが腸内免疫を活性化させて、
敗血症に結び付く重症感染症を予防する可能性がある、
ということを示唆しています。

そこで今回の研究では、
インドにおいて新生児4556名を登録し、
くじ引きで2つの群に分けると、
一方はラクトバチルス・プランタラムという、
ピクルスやぬか漬けなどに含まれる乳酸菌と。
その栄養源として、腸への定着に有用とされる。
フラクトオリゴ糖との合剤を生後2から3日から7日間継続使用し、
もう一方は偽薬を使用して、
60日間の経過観察を行っています。

その結果驚いたことに、
敗血症と死亡を併せたリスクは、
乳酸菌製剤群で40%
(95%CI: 0.48から0.74)有意に低下していました。

つまり、乳酸菌が早期に新生児の腸に定着することにより、
敗血症と死亡のリスクが4割も低下するという、
ちょっとビックリするようなクリアな結果が得られたのです。

腸内細菌が健康と大きな関連を持っている、
というようには言っても、
それを明確に証明するような介入試験のデータは、
実際には殆ど得られていません。

その意味で、
ただ一週間プロバイオティクスを飲ませるだけで、
60日間の生命予後が明らかに改善するとすれば、
それはもう画期的な知見です。

ただ、これに匹敵するような追試のデータはまだないようですし、
新生児期に使用するという特殊性が、
こうした結果に結び付いているとすると、
それが果たして長期的にお子さんにとって良い結果になるのか、
というような点についてもまだ未知数ではないかと思います。
新生児期には母乳やミルクだけを飲んでいるので、
シンプルな細菌叢であるのが当然で、
そこに無理に別種の菌を定着させることが、
必ずしも良いことであるとは言い切れないからです。

今後の研究の積み重ねを注視したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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