横山拓也「う蝕」(瀬戸山美咲演出) [演劇]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
横山拓也さんの書き下ろし戯曲を、
瀬戸山美咲さんが演出した舞台が、
今三軒茶屋のシアタートラムで上演されています。
これは架空の島が「う蝕」という原因不明の災害(?)に見舞われ、
多くの島民が犠牲になった後に、
遺体の身元を確認するために歯科医師が島を訪れる、
という設定で、
殆ど生きている者のいない孤島を舞台に展開される物語ですが、
如何にも小劇場的な仕掛けによって、
災害によって失われた命に対する生者の鎮魂と責任という、
「今」を強く感じさせるテーマを掘り下げた力作で、
鋭い刃物のような切れ味のある戯曲も素晴らしいですし、
瀬戸山さんの小劇場的なコントラストの明確な演出も良く、
男性のみのキャストの芝居も、
ベテランから若手までバランスの取れた見応えのあるものでした。
「不条理劇」という表現が紹介文に使われていますが、
前衛演劇ではあっても、不条理演劇ではないと思います。
昔の劇団300などで使われていた、
小劇場演劇の1つのパターンを使っていて、
イキウメの初期の「関数ドミノ」を初演した辺りくらいの、
技巧的な作品の肌触りに近い感じもあります。
こういう作品が個人的には大好物なので、
いいな、いいな、と心の中で反芻しながら、
後半はじっくりと観ることが出来ました。
これ、3幕劇なのですが、
2幕で一旦時制が戻るんですね。
3幕劇というより、能の構成に近くて、
前場と後場があって、
その間に間狂言が挟まれている感じなのです。
多分能は意識はされているんですね。
何故時制が戻るのかと2幕を観ている時は不思議に感じるのですが、
それが3幕で鮮やかに意味を持つことが分かるのです。
極めて巧緻な構成だと思います。
瀬戸山さんの演出が良いですよね。
最初に折り紙のような舞台が開くところ、
アングラ的でワクワクしますよね。
あんなことやらなくてもいいのですが、
敢えてやるところに小劇場の心意気みたいなものを感じます。
鈴の音のような音に意味を持たせたり、
舞台の凹凸がまた極めて巧みに活かされていました。
キャストは皆好演でしたが、
特に坂東龍汰さんの熱演が印象的で、
正名僕臓さんと相島一之さんのベテランが、
要所を綺麗に閉める、
とても良い仕事をしていたと思います。
総じて如何にも小劇場演劇らしい、
仕掛けと企みに満ちながら、
深いメッセージ性も秘めた力作で、
是非是非劇場で体感して頂きたいと思います。
ただ、仕掛けのある作品で、
最初から結構緊張と集中を強いる感じがあるので、
寝不足だと佳境に入る前に寝落ちする可能性もあります。
せっかくの力作がそれではとても残念なので、
是非万全の体調で観劇して頂きたいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
横山拓也さんの書き下ろし戯曲を、
瀬戸山美咲さんが演出した舞台が、
今三軒茶屋のシアタートラムで上演されています。
これは架空の島が「う蝕」という原因不明の災害(?)に見舞われ、
多くの島民が犠牲になった後に、
遺体の身元を確認するために歯科医師が島を訪れる、
という設定で、
殆ど生きている者のいない孤島を舞台に展開される物語ですが、
如何にも小劇場的な仕掛けによって、
災害によって失われた命に対する生者の鎮魂と責任という、
「今」を強く感じさせるテーマを掘り下げた力作で、
鋭い刃物のような切れ味のある戯曲も素晴らしいですし、
瀬戸山さんの小劇場的なコントラストの明確な演出も良く、
男性のみのキャストの芝居も、
ベテランから若手までバランスの取れた見応えのあるものでした。
「不条理劇」という表現が紹介文に使われていますが、
前衛演劇ではあっても、不条理演劇ではないと思います。
昔の劇団300などで使われていた、
小劇場演劇の1つのパターンを使っていて、
イキウメの初期の「関数ドミノ」を初演した辺りくらいの、
技巧的な作品の肌触りに近い感じもあります。
こういう作品が個人的には大好物なので、
いいな、いいな、と心の中で反芻しながら、
後半はじっくりと観ることが出来ました。
これ、3幕劇なのですが、
2幕で一旦時制が戻るんですね。
3幕劇というより、能の構成に近くて、
前場と後場があって、
その間に間狂言が挟まれている感じなのです。
多分能は意識はされているんですね。
何故時制が戻るのかと2幕を観ている時は不思議に感じるのですが、
それが3幕で鮮やかに意味を持つことが分かるのです。
極めて巧緻な構成だと思います。
瀬戸山さんの演出が良いですよね。
最初に折り紙のような舞台が開くところ、
アングラ的でワクワクしますよね。
あんなことやらなくてもいいのですが、
敢えてやるところに小劇場の心意気みたいなものを感じます。
鈴の音のような音に意味を持たせたり、
舞台の凹凸がまた極めて巧みに活かされていました。
キャストは皆好演でしたが、
特に坂東龍汰さんの熱演が印象的で、
正名僕臓さんと相島一之さんのベテランが、
要所を綺麗に閉める、
とても良い仕事をしていたと思います。
総じて如何にも小劇場演劇らしい、
仕掛けと企みに満ちながら、
深いメッセージ性も秘めた力作で、
是非是非劇場で体感して頂きたいと思います。
ただ、仕掛けのある作品で、
最初から結構緊張と集中を強いる感じがあるので、
寝不足だと佳境に入る前に寝落ちする可能性もあります。
せっかくの力作がそれではとても残念なので、
是非万全の体調で観劇して頂きたいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
2024-02-25 23:13
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