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便座の蓋を閉めて水を流すことの感染予防効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は祝日でクリニックは休診です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
トイレの蓋と感染リスク.jpg
American Journal of Infection Control誌に、
2024年2月付で掲載された、
洋式便器の蓋を閉めて水を流すことの、
感染予防効果についての論文です。

最近不特定多数の方が利用する個室トイレには、
「便器の蓋を閉めてから水を流して下さい」
というような掲示がしばしば掲げられています。

これは特に便中の感染性の病原体が、
便器の蓋を開けたままで水を流すことにより、
便座やその周辺に飛散して、
それがトイレを介した感染リスクに繋がるという指摘があるからです。

たとえば、クロストリジウム菌という、
院内感染などを引き起こす細菌について検証した研究では、
便座の蓋を開いた場合と比較して、
蓋を閉じて水を流すことにより、
周辺への細菌を含む飛沫の拡散が、
ゼロにはならないもののかなり抑制された、
という結果が報告されています。
https://www.journalofhospitalinfection.com/article/S0195-6701%2811%2900339-2/fulltext

ただし、これは細菌の場合の話で、
よりその大きさが小さく、
新型コロナやインフルエンザ、ウイルス性腸炎などの原因となる、
ウイルス感染についても成り立つことであるかどうかについては、
まだ明確なデータがありませんでした。

そこで今回の研究ではアメリカにおいて、
実験に使用する無害なウイルスを使用して、
それを排便時と同じように便器に巻き、
便座の蓋を開けた場合と閉めた場合とで、
トイレの水を流して、
周囲へのウイルスの飛散の有無を比較検証しています。

その結果、周辺でのウイルスの飛散量には、
便座の蓋を開けておいても閉めて水を流しても、
明確な差は認められませんでした。

つまり、トイレの蓋を閉めて水を流すことは、
細菌感染の予防には繋がっても、
ウイルス感染の予防には繋がらない、
という結果です。

それでは、どのようにすればウイルス感染の予防が可能なのでしょうか?

研究では1つの試みとして、
事前に便器を塩化水素系の消毒薬で洗浄を行ったところ、
ウイルスの周囲への飛散は90%以上抑制されました。

つまり、便器からのウイルス感染の予防には、
定期的に便器を除菌することが、
蓋の開け閉めよりも重要であるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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